「新型コロナで不安」という人は、コロナ禍以前から不安だった人。これまでは逃げていただけだ――。「性格リフォームの匠」である心理カウンセラー・心屋仁之助氏はそう話す。いったい、どういうことなのか?(取材・構成:林加愛)
※本稿は『THE21』2020年7月号から一部抜粋・編集したものです
その不安は本当に新型コロナのせいなのか?
――コロナ禍は人々からこれまでの暮らしを奪った。感染に対する恐れに加え、「自粛」から始まった経済の冷え込みはいよいよ厳しい。収入が得られず、先が見えない……そんな不安にさいなまれる人に、心屋仁之助氏は意外な言葉を投げかける。
「今、不安になっている皆さん。その不安は新型コロナウイルスの流行から始まったものではありません。もともと『不安持ち』だったのです。
これまでも漠然と不安を感じていたものの、仕事をはじめ様々な義務を自分に課して気を紛らわせてきた。ところが、今はその『力技』が使えず、頑張ろうにも頑張れない。だから不安が顕在化しているのです。
感染拡大を避けるために求められている『自粛』も、『不安持ち』にとっては今に始まったことではありません。
というのも、こうした人たちは『人に悪く思われない』ために頑張ってきたから。ずっと自粛して生きてきたようなものです。怒られないよう、叩かれないよう、迷惑をかけないよう、気をつけてばかりの、息の詰まるような毎日を生きてきたのです」
――そこにやって来たのが新型コロナウイルス。「迷惑をかけてはいけない」という圧力が最大限に強まり、ストレスがさらに大きくなっている。
「これまで頑張って不安から逃げてきた人も、もう限界でしょう。ならば、ここで考えてみましょう。自分はそもそも何と戦ってきたのか、と。外に行けないなら、内面と向き合えばいい。今こそ、その最大の好機です」
「勤め人」思考が不安を増幅する
――とはいえ、「自粛」によって経済的に苦しくなっている人は、「不安持ち」か否かを問わず、現実に存在するのではないか。
「確かに、今後は多くの人が収入減に陥るでしょう。しかし、同程度のダメージでも、不安になるのは『不安持ち』だけ。頑張りをお金に変えられないことが、強いストレスになっているのです。
これまで会社組織の中で上に従順に従ってきた人には、このタイプが多くいます。会社からお金をもらうことが唯一の稼ぐ方法だと捉えているので、『倒産したらどうしよう』『クビになったらどうしよう』と気が気でなくなる。
会社を飛び出してフリーランスになった人や、会社に所属しつつも自分のやりたいように仕事をしているタイプの人は、稼ぐ方法が一つではないことを知っています。財布がいよいよピンチになれば、野に出て狩りをするように、新たな稼ぎ方を作り出すでしょう」
――心屋氏自身は、まさに後者のタイプ。コロナ禍の影響は確かにあるが、不安は感じていないという。
「直接人と会う仕事ができないので、やはり収入は減りました。しかし、稼ごうと思えばまた稼げます。音楽活動もしているので、しばらくは曲を作って過ごす予定。他にも色々、今したいこと、いずれしたいことがあります。
こうして収入を得る方法を幅広く持っているということは、『社会からお金をもらっている』ということです。社会は会社と違い、消えてなくなりはしないので安心です」
――大きく視野を広げて社会を見れば、お金の見え方も変わってくる。
「多くの人が収入を減らしています。不思議だと思いませんか?新型コロナウイルスが、そのお金を食べてしまったわけではありませんよね。社会に出ているお金の総量が減ったわけではないのです。
ならば、そのお金はどこに行ったのか。タンスの中か、銀行口座の中か、誰かが大儲けしているのか……。どこかに貯め込まれたお金は、いずれ吐き出されるでしょう。今失ったお金を再び得られる可能性は、いくらでもあります」