EU(欧州連合)離脱を巡る国民投票から4年あまり。英国は今年12月31日の移行期間終了を前に複数の国とFTA(自由貿易協定)を巡る交渉を進めているが、長年歩調を合わせてきたEU(欧州連合)との交渉は依然として難航している。「No Deal Brexit(合意なき離脱)」が現実味を帯び始める中、経済やマーケットへの影響が気になるところだ。
日本との通商交渉は大筋合意に至ったものの、「No Deal Brexit」が現実となった場合、どのような変化が起こるのだろうか?
英、離脱協定の変更は国際法違反? 制裁の可能性も
まず、気掛かりなのは、ボリス・ジョンソン英首相が「Brexit Bill(離脱協定)」の一部を変更する法案を議会に提出したことだ。「Brexit Bill」は国際法としてEUとの間で2019年に締結したもので、英国の「一方的変更」にEU側が反発している。移行期間終了まで残り約3カ月と迫る中、英国とEUの溝は深まるばかりだ。
EU側は「終結済みの協定に変更を加えることを検討する時点で、すでに国際法に違反している」とし、英国が方針を取り下げない限り、経済的あるいは貿易上の制裁を下す意向を示した。これに対し、英国側は北アイルランドを巡る条項に「極めて限定的に詳細を明確にするのみ」と主張している。だが、変更が加えられた場合、2021年以降、北アイルランドの関税や通商ルールに影響する可能性があり、EU側のみならず英国内でも国際法違反を指摘する声が上がっている。
ウルズラ・フォン・デア・ライエンEU委員長は「英国政府への信頼を弱体化させた」と批判したほか、元ベルギー首相であるシャルル・ミシェル欧州理事会議長もTwitterにて「国際法違反は許されざる行為であり、将来の友好関係の構築に波紋を投げかける」と懸念を示している。
実際にEU側が制裁を下すことになれば、経済やマーケットに深刻な影響を及ぼすことにもなりかねない。