シンカー: 新型コロナウィルス問題により、グローバルに家計の消費は減少した。ウィルス問題の緩和で消費は持ち直し、いずれは元の水準に戻るとみられる。しかし、減少した消費と、増加する消費は同じもの、そして同じ企業が利益を得るものではない可能性が高い。当然ながら、新型ウィルスへの警戒が残る新常態に対応できた企業とそうではない企業では差が出るとみられる。更に、第四次産業革命の真っただ中であり、AI、IoT、ビッグデータ、ロボティクスを含む新技術をどれだけ活用し、新常態における消費を刺激できるかが、企業の優劣を決める可能性が高い。問題は、新たな技術が急激に浸透する局面では、先行する企業が力を持つ、勝者総取りの形になりやすいことだ。確かに、新型コロナウィルス問題による経営圧迫で、手元のキャッシュに対する警戒感が強く、一部の企業は設備投資を先送りするだろう。しかし、第四次産業革命を背景に設備投資を拡大し、次の一手を打ち始めている企業も多い。数年後の企業の収益や株価の動向を予想する上で、現段階でマネジメントが第四次産業革命を背景としたしっかりとした戦略で投資を拡大させているかどうかが重要な要素になっているように思われる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

グローバル・レポートの要約

●中国経済(10/12):デレバレッジの新しい章が始まった

中国の政策当局は、8月遅くに不動産セクターのデレバレッジに向けた第一弾を投下したが、9月には事故に近い状況となった。こうした混乱によって、デレバレッジを進める時期(それは、数年前のシャドーバンキング一掃より難しくなる可能性がある)が今後に控えていることもあり、見通しが暗くなり始めるかもしれない。というのも、住宅セクターは依然として経済成長の主なけん引役で、金融セクターも新型コロナショックにより以前に比べて不良債権負担が重くなっているからだ。

市場は、経済成長に対する強い抑制圧力、デフォルトまたはデフォルトに近い状況の大量発生、不動産セクターの再編、債務リストラの波や銀行への資本再注入の加速に備えるべきだ(これらはすべて、中国経済の持続性を高めるために必要なことだが)。しかし少なくとも短期的には、中国の政策当局がシステム全体を左右するリスクを抑えようとする、またそれが可能だと弊社は考えている。住宅セクターは最も重要な存在であり、金融レバレッジを処理した幅広い経験が彼ら(政策当局)にはあるからだ。

●英国経済(10/13):新型コロナ第2波で景気回復にブレーキ

イングランド銀行(BoE)チーフエコノミストのアンディ・ハルダン氏は、英国経済についての過度の悲観論が自己実現することを避けようとしており、これは非常に称賛できる。しかし弊社は、直近の経済指標はそれほど心強い内容ではないと言わざるを得ない。英国のGDPは、第2四半期(Q2)に前期比で20%減少した後、Q3は15%前後回復する軌道に入った様だが、詳細をみると、Q3が終わりに近づくにつれ勢いが失われている。またBoEのアンドリュー・ベイリー総裁は最近、Q3のGDPの水準は、コロナ危機前(2019年Q4)を7?10%下回ったとみられると述べた。弊社が現時点で可能な限り推測したところ、それ(コロナ危機前を下回る幅)はおそらく10%近くになり、MPC(金融政策委員会)に対し、11月の次回政策決定会合で追加緩和を求める圧力が続くと見込まれる。

●オーストラリア経済(10/8):「11月追加緩和」という弊社見込みは変わらない

豪州準備銀行(RBA)は10月6日の月次金融政策決定会合で、(弊社の見込み通りに)政策金利(キャッシュ・レート)と3年物国債利回りの目標を0.25%で据え置いた。声明文での追加緩和示唆は、我々が見込んでいたほど明確ではなかった。しかし弊社は、「RBAは11月に、新しい経済予測の発表と同時に、政策金利と3年物国債利回りの両方で目標を0.10%に引下げる」という想定基本シナリオを維持する。

●債券市場(10/12):宙に浮く財政出動

米国の景気対策法案に関するニュースと大統領選の行方をめぐるセンチメントが債券市場を動かし、ユーロ金利がそれに追随している。選挙が目前に迫った今、包括的な景気刺激策の議会通過の可能性を予言することは、政治的なルーレットゲームに等しい。ただ、米国の追加景気対策は時間の問題である。債券利回りが向かう先は横ばいか上昇だ。ユーロ圏の金利とイールドカーブは、長期的には米国サイドの上昇に追随せざるを得ないだろう。米長期国債は海外投資家にとって次第に魅力を増しつつある。

●グローバル・ストラテジー(10/12):フィフティ・シェイズ・オブ・QE

米国長期債利回りが最近急上昇して、一部コメンテーターは慌てふためいている。長期間に及んだ債券の強気市場は終わりが近いという声が(再び)上がっている。だが米国イールドカーブ長期部分の動きに全力で注目すべきなのは、債券投資家だけではない。過去数年間の米国株式市場の上昇はほぼ全てFAAMG銘柄に集中しており、また債券市場の後押しに強く依存している。

・筆者は最近のユーロ圏インフレ関連指標をみて、熱心な債券強気勢の群れに、しばらくはまだ留まるべきという確信が過去にないほど高まった。ユーロ圏コアCPI上昇率が急落してゼロ(またはゼロ未満)に達することは織り込み済みだった。景気サイクルの終わりに1%というインフレ率を何とか達成できていても、リセッションが迫ったときには何を予測するだろうか。最近までインフレ率1%を受け入れていた市場は、それ(1%)から下落して差が広がるのを見た。 筆者は、一体なぜ、今後は米国と違う事態になると考えられる(人がいる)のかと困惑する。人々は、インフレ率が中銀目標並みにすぐ戻るという中央銀行の強気の予測を本当に信じているのか。待ってほしいと筆者は言いたい。

・結局のところ中央銀行は、QEが実際にも機能しているという自身の「プロパガンダ」信じ込むという(一種の)既得権を、持っていない訳では無いのだ。これに関する直近の調査結果は(予想されないことでは無かったが)心をかき乱される内容だった。NBER(全米経済研究所) の新しい報告書(タイトル:FIFTY SHADES OF QE: CONFLICTS OF INTEREST IN ECONOMIC RESEARCH)は次のように述べていた。即ち「中央銀行は自身の政策を時折(自らの手で)評価する。固有の利益相反を評価するために、量的緩和(QE)のマクロ経済的な効果について、中央銀行エコノミストと学界のエコノミスト双方の調査・研究を比較した。その結果、生産やインフレに及ぼすQEの効果が、中央銀行の報告では比較的高く示されていた。セントラルバンカーも、QEが生産に及ぼす効果は大きいと述べたり、より明るい要約文中の文言を使う可能性が高い。生産に及ぼすQEの効果をより高く報告するセントラルバンカーは、比較的望ましいキャリアを歩んでいる」(H/T @ROBINWIGG OF THE FT~下線と太字表記は今回の弊社レポートの筆者=ALBERT EDWARDSが加えた)

・筆者自身のイングランド銀行エコノミストとしての3年間の「キャリア」は、1986年に契約終了とともに突然終わった。明らかに、筆者は合っていなかっただけだ。読者諸氏はそれを信じられるだろうか。そのことは筆者も述べてきたはずだが、言うべきだったことを言っていなかったのかも知れない。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司