シンカー:需要の回復とともに、サービス業を中心に新型コロナウィルス問題への対処などで制限される供給対比での需要の強さが生まれ、物価動向はデフレよりもインフレへの方向性も持つ可能性がある。内閣府は2020年4-6月期の潜在成長率が+0.7%と、1-3月期の+0.9%から、2008年4-6月期以来初めて低下したと推計している。全要素生産性と資本投入量に変化はないが、新型コロナウィルス問題を懸念し労働者が労働市場から退出したため、労働投入量が-0.1%と2013年1-3月期以来初めて低下したのが理由だ。潜在成長率の低下は供給能力の低下を示すため、需要の回復とともに、需給が引き締まり物価に上昇圧力をかける。更に、労働市場が逼迫することは、賃金上昇によりサービス業を中心に物価に上昇圧力をかけることになる。そして、労働需給の逼迫と新型コロナウィルス問題への対処、そして第四次産業革命下のIT技術の導入を含め、企業は投資を拡大するだろう。投資の拡大は当然ながら玉石混交(「当たり」もあれば、「外れ」もある)で、短期的には需要を押し上げる効果(「外れ」も需要であるため)の方が大きく、生産性上昇の効果は長期的なものであり、短期的には物価上昇の効果の方が大きいと思われる。そして、その時までには、物価はテクニカルに下落しているがトレンドとしては上昇し、コロナショックによるデフレ現象が一時的であったことが分かるだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

9月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.3%と、8月の-0.4%から変化はなく、2か月連続の下落になった。

9月のコアコア消費者物価指数(除く生鮮食品とエネルギー)も同0.0%と、8月の-0.1%から持ち直した。

確かに、新型コロナウィルス問題による経済活動の停滞で、需要が大きく減少し、物価には強い下落圧力がかかっているように見える。

しかし、エネルギーが前年同月比でまだ下落(-3.5%)していることと、Go to トラベルによるキャンペーンが価格の引き下げが主な理由で、その他の財・サービスには価格引き下げの大きな動きはみられず、物価の基調は下落しているとは言えない。

9月の季節調整済前月比はコアとコアコアともに+0.1%となった。

今後は、菅政権が推し進める携帯通信料の引き下げなどのテクニカルな下落要因がまだ追加される可能性がある。

足もとの物価がテクニカルに弱ければ弱いほど、需要下支え効果と前年同月比の裏が出て、先行きの物価上昇率は高くなりやすい。

需要の回復とともに、サービス業を中心に新型コロナウィルス問題への対処などで制限される供給対比での需要の強さが生まれ、物価動向はデフレよりもインフレへの方向性も持つ可能性がある。

内閣府は2020年4-6月期の潜在成長率が+0.7%と、1-3月期の+0.9%から、2008年4-6月期以来初めて低下したと推計している。

全要素生産性と資本投入量に変化はないが、新型コロナウィルス問題を懸念し労働者が労働市場から退出したため、労働投入量が-0.1%と2013年1-3月期以来初めて低下したのが理由だ。

潜在成長率の低下は供給能力の低下を示すため、需要の回復とともに、需給が引き締まり物価に上昇圧力をかける。

更に、労働市場が逼迫することは、賃金上昇によりサービス業を中心に物価に上昇圧力をかけることになる。

そして、労働需給の逼迫と新型コロナウィルス問題への対処、そして第四次産業革命下のIT技術の導入を含め、企業は投資を拡大するだろう。

投資の拡大は当然ながら玉石混交(「当たり」もあれば、「外れ」もある)で、短期的には需要を押し上げる効果(「外れ」も需要であるため)の方が大きく、生産性上昇の効果は長期的なものであり、短期的には物価上昇の効果の方が大きいと思われる。

来年後半には日本のコアコア消費者物価指数の前年同月比はこれまでのトレンドラインに回帰し、来年末には1%程度まで上昇幅が拡大している可能性があろう。

そして、その時までには、物価はテクニカルに下落しているがトレンドとしては上昇し、コロナショックによるデフレ現象が一時的であったことが分かるだろう。

図)コアコアCPIとトレンド

コアコアCPIとトレンド
(画像=総務省、SG)

図)潜在成長率

潜在成長率
(画像=内閣府、SG)

図)潜在成長率の内訳

潜在成長率の内訳
(画像=内閣府、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社調査部
チーフエコノミスト
会田卓司