シンカー:1月と比較して鉱工業生産指数の9月の水準は-8.2%となり、まだ水準がかなり低い。一つ目の理由は、1月と比較して在庫指数の9月の水準が-8.0%と、在庫の強い抑制が効いていることだ。裏を返せば、在庫は極めてうまくコントロールされ、水準も安定操業の下限に近くなり、、新型コロナウィルス問題の緩和で需要が回復するにともない、生産活動に勢いがついてくる可能性を示している。二つ目の理由は、手元の流動性を懸念した企業の資本財の支出が先伸ばしにさていることだ。1月と比較して資本財(除く輸送機械)の9月の生産水準は-18.5%も低い水準にある。人口動態にともなう労働需給逼迫を含む生産性と収益率の向上の必要性、AI・IoT・ロボティクス・5Gを含む第四次産業革命への適応、遅れていた中小企業のIT投資、老朽化の進んだ構造物の建て替え、都市再生、研究開発など、長期的な視野の投資拡大は止めるわけにはいかない状況だ。先延ばしされてきた資本財の支出が増加し、生産を押し上げる力になってくるとみられる。新型コロナウィルス問題の緩和で需要が回復するにともない、在庫の復元と投資の再開が生産を押し上げる局面に移行していくだろう。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

9月の鉱工業生産指数は前月比+4.0%と、4カ月連続の上昇となった。

誤差修正後の経済産業省予測指数の同+2.8%を上回った。

9月の実質輸出が同+5.5%と、同じく4カ月連続で上昇したのと整合的だ。

米国向けの自動車の輸出が強く回復し、生産の後押しになっている。

新型コロナウィルス問題前の1月と比較して実質輸出の9月の水準は-2.0%となっている。

一方、1月と比較して鉱工業生産指数の9月の水準は-8.2%となり、まだ水準がかなり低い。

一つ目の理由は、1月と比較して在庫指数の9月の水準が-8.0%と、在庫の強い抑制が効いていることだ。

裏を返せば、在庫は極めてうまくコントロールされ、水準も安定操業の下限に近くなり、新型コロナウィルス問題の緩和で需要が回復するにともない、生産活動に勢いがついてくる可能性を示している。

二つ目の理由は、手元の流動性を懸念した企業の資本財の支出が先伸ばしにさていることだ。

1月と比較して資本財(除く輸送機械)の9月の生産水準は-18.5%も低い水準にある。

人口動態にともなう労働需給逼迫を含む生産性と収益率の向上の必要性、AI・IoT・ロボティクス・5Gを含む第四次産業革命への適応、遅れていた中小企業のIT投資、老朽化の進んだ構造物の建て替え、都市再生、研究開発など、長期的な視野の投資拡大は止めるわけにはいかない状況だ。

9月の工作機械受注が5月の底から+53.6%、8月の機械受注外需は6月の底から+70.3%も増加している。

先延ばしされてきた資本財の支出が増加し、生産を押し上げる力になってくるとみられる。

新型コロナウィルス問題の緩和で需要が回復するにともない、在庫の復元と投資の再開が生産を押し上げる局面に移行していくだろう。

10・11月の経済産業省予測指数は前月比4.5%・1.2%となり、生産の回復の継続が予想されている。

経済産業省は鉱工業生産の判断を 6月の「下げ止まり、持ち直しの動き」から7月に「持ち直しの動き」、そして8月に「持ち直している」へ上方修正し、9月はその判断を維持し、持ち直しが明らかなことを確認した。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社調査部
チーフエコノミスト
会田卓司