日経平均、2万5000円台回復

コロナワクチン,常態株
(画像=Feylite/Shutterstock.com)

新型コロナウイルスワクチンの実用化期待が高まった10日、日経平均株価は、バブル崩壊後の下落局面に当たる1991年11月以来29年ぶりに2万5000円の大台を回復した。この日は厳しい事業環境を強いられてきた航空や鉄道をはじめ、「常態ビジネス」を展開する企業の株価が一斉に急騰。株式市場に銘柄格差解消の動きが強まった。

米ファイザー<PFE>が現地9日に、ドイツのビオンテックと開発を進める新型コロナワクチン候補について、最終段階の治験参加者の9割以上に効果があったと発表した。同日の米市場ではNYダウが一時1600ドル超の上げ幅となり、取引時間中の過去最高値を更新。為替もリスクオンの円売りが進んで、ドル・円は1ドル=103円台前半から一気に105円台半ばまで値上がりする場面があった。

強気ムードを引き継いだ東京市場では、日経平均が寄り付きから2万5000円台に乗せた。取引時間中には一時2万5279円(前日比440円高)と、91年6月以来の高値水準を付けた。TOPIX(東証株価指数)も1700ポイントを9カ月ぶりに上回った。

一方、物色動向には大きな変化が見られた。コロナ後の「新常態」に対応したIT企業から、それ以前の「常態」に基盤を置く非IT銘柄への資金シフトだ。米市場ではアマゾン・ドット・コム<AMZN>など「GAFA」をはじめとするIT株に売りが広がり、ナスダック総合指数が値下がりした。日本でも、リモートや巣ごもり関連の個別株の下げが目立った。

日本航空(=JAL、9201)やANAホールディングス(9202)が一時前日比2割高に買われ、JR東日本(9020)などJR各社や私鉄の一角も1割超上昇、旅行のエイチ・アイ・エス(=HIS、9603)がストップ高した一方で、ソフトバンクグループ(9984)やエムスリー(2413)は売り込まれ、業種別指数は「情報通信」が値下がり率トップとなった。

ただ、ワクチンの成否には、接種によって作られる抗体の持続性や副作用についての安全性、さらには突然変異への対応といったハードルが幾つも残る。日本政府もファイザーと供給契約を結んでいるが、いつ行きわたるかはまだ不透明だ。米大統領選後に日経平均は大幅に上昇していたこともあり、高値警戒感も小さくない。実際、この日は前日のNYダウ同様に、後場に上げ幅を縮小した。

西村証券の門司総一郎チーフストラテジストは、来年の東京五輪を予定通りに開催できるかをポイントに挙げる。米GAFA株を中心にIT企業に偏ってきた市場の資金が、出遅れの非ITセクターに戻ってくるためには五輪の経済効果が重要だ。また、米政局をめぐっても、「バイデン前副大統領が『分断』の解消に本気で取り組むのであれば、おのずとGAFA偏重の状態は正常化するだろう」と話す。

ワクチンの登場が現実味を帯びたことで、株式市場は一つの分水嶺を迎えたかもしれない。上市スケジュールの歩みが順調に進めば、投資家に避けられてきた交通や旅行、小売といった常態株は意外高を続ける可能性がある。(11月11日株式新聞掲載記事)

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