読者の皆さんは「やみつきになる味」「本能が欲する味」といえば、どんな食べ物を思い浮かべるだろうか? 筆者は迷わず「カナーフェ(kanafeh)」を一番に挙げる。カナーフェとは中近東の代表的なお菓子で、チーズベースに細いパスタを使ったものやセモリナ粉を使ったものなど様々な種類がある。筆者がロンドン在住だった10代の頃、ドバイ出身のクラスメイトの男の子の家でご馳走になった思い出の味で、文字通り「本能が欲する味」という表現がぴったりのお菓子だ。実は筆者自身もカナーフェ作りに何度も挑戦しているのだが「思い出の味」とは何かが決定的に違う。いつか中近東を訪れて本場のカナーフェを食べてみたいものである。
さて、中近東の話題といえば11月25日、米国の富裕層調査会社Wealth-Xが「UAE海外直接投資」について報じている。「アラブ首長国連邦(UAE)で外国人投資家に事業の100%所有権が認められるようになった」というものだが、一部の専門家からはドバイやアブダビで空前の海外直接投資ブームが巻き起こるとの期待が寄せられている。果たして、カナーフェのごとく世界各国の富裕層にとって「やみつきになる投資先」「本能が欲する投資対象」となるのだろうか? 今回は「UAE海外直接投資(UAE Foreign Direct Investment)」についてリポートする。
UAE海外直接投資、イスラム法改正…変貌するアラブ首長国連邦
これまでUAE市場は一部の例外を除き、外国資本が現地法人を設立する際は、UAE国籍者の出資比率が51%以上と定められていた。しかし今回の改正により、2020年12月1日以降は外国人投資家が100%出資し、100%所有権が認められるようになった。今後は海外企業や外国人投資家のUAE市場参入が容易になるほか、海外の熟練労働者を雇用しやすくなるなど、UAE圏における投資・ビジネス環境が著しく向上することが期待されている。(※エネルギーや炭化水素、電気通信、輸送など、「戦略的と見なされる一部の産業」には適用されない)
UAEが改革を試みているのは、投資環境だけではない。イスラム法の改正を通して未婚カップルの同居や飲酒の緩和など「個人の自由」の拡大に向けた動きも加速している。AP通信は、UAEのこうした動きについて「西洋化された環境」への方向転換を図ることで、海外からの観光客や富裕層、企業を呼び込む戦略だと報じている。また、9月には米ホワイトハウスでイスラエル、バーレーンとの国交正常化の合意文書に署名、英BBCは「3カ国間のビジネスや貿易に強力な追い風となる」と報じている。イスラエルはUAEとの貿易が最終的に年間40億ドル(約4166億3854万円)に達し、1.5万人の雇用を創出する可能性に期待を寄せている。