新年は心機一転、きちんと投資を始めようと思う人が多いからか、筆者のような仕事をしている者の常として、毎年必ずと言っていいほど「今年は何に注目していますか?」と多くの人に質問される。その前後の会話によって、質問の「What」の部分は、投資テーマでもあり、業種でもあり、個別具体的な銘柄にもなるが、要するに今年儲かりそうな話は何かないかという意味だ。

ただ筆者の場合、状況を随時アップデート出来る相手宛ではないワンオフ(one off)のコメントで個別具体名に触れて「ABC社ですね」などとお答えすることは先ずない。決してそれは意地悪でもひねくれているわけでも無く、ひとつには刷り込まれた習慣がそうさせている。何故なら、投資信託のファンドマネージャーは個別銘柄ひとつを取上げて、それについて言及することは基本的に禁じられていたからだ(今でもそうだと思う)。その習慣が未だに抜け切らないという面がひとつには大きい。だがより大きな理由がある。それは具体的に答えても、多くの場合、質問された方が上手く投資で成功出来ないからだ。筆者の見通しが外れる場合が多いということではなく、上手く流れに乗ることが出来ずに、結局「なんかうまく行かずにトントンで投げました」という後日談になるのを避けたいからだ。

これにはきちんとした理由がある。あえて逆説的な言い方をすると、筆者は「ずばり(今週)ストップ高する銘柄を教えます!」といったキャッチフレーズのサイトや、それに類するような説明で銘柄推奨をしている人達を心から「凄いなぁ」と尊敬してしまう。でも、もしそれが本当ならば、なぜその人達は未だ働いて他人に情報提供をしているのだろうとも思ってしまう。

特殊な水晶玉でも持っていない限り「明日の株価」など分かるわけがない

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(画像= mits / pixta, ZUU online)

冗談はさておき、恐らく職業投資家であったとしても「明日の株価」を正確に予想出来る人は居ない。かのソフトバンク・グループの孫正義会長だって、「明日のエヌビディアの株価は上ですか下ですか?」と聞かれたら答えに窮するだろう。決算説明会などで孫氏がよく使われるのが「こんなのは誤差の範囲だ」という表現。これは非常に上手な表現方法だといつも感心してしまう。あれだけインターネットやAI(人工知能)関連業界の情報に長けていて、直接多くのCEO(最高経営責任者)と話をすることが出来て、更に優秀なブレーン達を擁し、実際に豊富な投資経験を持つ孫氏をもってしても、四半期決算の説明会で「こんなのは誤差の範囲」だと言う表現を使われる。それほど「短期的な相場見通し」を当てることは難しいということだ。

短期的な相場はファンダメンタルズよりも、需給が決める。平たく言えば「買いたい」と思う人が多ければ値上がりするし、「売りたい」と思う人が多ければ値下がりする。だが市場参加者全員の懐具合を「資金繰りに余裕がある」とか、「タイトだ」とか覗き込むことは不可能だし、今日は買いたい気分なのか、売りたい気分なのかを探ることなど出来はしない。だから特殊な水晶玉でも持っていない限り明日の上げ下げなど分かるわけがないと言える。インサイダー情報でも握っていれば話は別だが、当然合法的な投資とはならない。

ならば職業投資家は何をどう見て投資判断に繋げているのかと言えば、世の中の流れだ。筆者はそれを「ビジネス・トレンド」と呼んでいるが、分かり易く端折って説明すれば、それこそがよく投資信託が「テーマ」として取り上げるものだ。例えば「AI」や「環境」、或いは「自動運転」や「5G」などと言ったものだ。その「テーマ」に関わる業界やビジネスが拡大していくならば、その流れの真ん中に居る中心企業はほぼ間違いなく儲かる筈だ。儲かって企業収益が上がるという事は、当然株価上昇に繋がる。チェックすべきポイント、或いはファンドマネージャーがチェックしているのは、その流れが右肩上がりで上昇しているのか、或いは単なる夢語りで存在しなかったり、或いはもう廃れていたりしまっていないかどうかだ。

「右肩上がりのビジネス・トレンド」を見つけるのは容易…問題は株価だ!

そこで、下の図を見て欲しい。これがそのビジネス・トレンド、平たく言えば「テーマ」と株価の関係を示すイメージ図だ。真中のピンクのラインが「ビジネス・トレンド」を現し、これが右肩上がりであることが大前提となる。前例のように「AI」や「環境」、或いは「自動運転」や「5G」など、これから大きく成長すると考えられる流れが当て嵌まるだろう。