筆者は芸大卒一家という環境で育ったせいか、子どもの頃の思い出にも数多の「アート」が刻み込まれている。残念ながら筆者自身はアートの血筋を受け継がず才能も知識も乏しいのであるが、今でもギャラリーや美術館を訪れるのは大好きだ。できればアートを所有してみたいものだが、筆者のような庶民にはそう簡単なことではない。近年は名もなきアーティストの作品ですら、インスピレーションを感じるものには強気の値段が付いている。巨匠の作品は夢のまた夢だ。富裕層でもない限り、アートの収集は難しいように思われる。

そうした中、欧米を中心に衆目を集めているのが「高額資産のフラクショナル・オーナーシップ(Fractional Ownership In Luxury Assets)」だ。これはシェアリングエコノミー(共有経済)の一種で、筆者のような庶民でもアートやクラッシックカー、競走馬といったラグジュアリーアイテムの「所有権を共有」できるというもの。あくまで「所有権を共有」するもので自宅の壁に飾ることはできないが、わずか数千円から巨匠のアートに投資できるということで利用する向きが増えているという。

今回は新型コロナ禍で頭角を現す、ラグジュアリー市場の新潮流を見てみよう。

高額資産のフラクショナル・オーナーシップの仕組み

富裕層,投資
(画像= xiyangyang / pixta, ZUU online)

シェアリングエコノミーといえば、配車サービスのUberや民泊のAirbnbなどを思い浮かべる人も多いことだろう。だが、シェアリングエコノミーの範囲はモノや場所、スキルまで幅広い。これらを他者と共有することで経済合理性を高めるというのが基本的な概念だ。

フラクショナル・オーナーシップは、物品などの所有権や使用権を他の出資者と共有するというもので、たとえばビジネスジェットや船舶など、単体での利用頻度が少ない高額商品に用いられることが多い。海外で人気を集めている「高額資産のフラクショナル・オーナーシップ」は、コンセプト的には不動産などの共有所有権(Shared Ownership)と似ているが、複数の個人が共同のビジネスに資金を提供する「共同出資(Joint Investment)」の要素や少額から投資可能な「マイクロ投資」の要素もある。プラットフォームなどを介して特定のラグジュアリーアイテムに共同で出資し、出資額や保有する株式比率により配当金を共有する仕組みだ。

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