超富裕層の目利きは厳しい。彼らを相手にプライベートバンカー(以下、バンカー)が「一流」「100万ドルプレイヤー」と呼ばれる領域に到達するのは容易なことではない。だが、実際にそうした人達が日本を含む世界には存在する以上、単なる夢語りとは言えない。夢と現実、どうすればそのギャップを埋めることが出来るのかについて少し論じてみたい。

まず、超富裕層の目利きが何故厳しいかを知ることから始めよう。決してお客様は「敵」では無いが、考え方は正に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」だ。

実は「富裕層」と「超富裕層」との大きな違いは、その資産規模だけではない。ある意味では「富裕層」と「マスリテール層」や「プチ富裕層」は一緒で、その違いは伝票に書くゼロの数だけとも言える。だが「富裕層」と「超富裕層」では決定的に違うものがある。それはバンカーのカウンターパーティー(普段面談していろいろとお手伝いさせて頂く方)だ。実は「超富裕層」の場合、簡単にご本人にはお目に掛れないし、お目に掛る必要もない。日常的にお会いし、いろいろとご提案したり、痒いところをお聞きしたりするのは、業界用語で「ゲートキーパー」とも呼ばれる所謂「番頭さん」である。「ゲートキーパー」とは門番のことで、胡散臭い話を持ってくる金融業者などは、この門番のところで一蹴される。

超富裕層の「番頭さん」こそが最大の難関だ!

プライベートバンカー,営業
(画像=でじたるらぶ / pixta, ZUU online)

考えてみれば当たり前のことなのだが、恥を忍んで告白すれば、筆者もバークレイズのISSヘッド時代に初めて「番頭さん」と面談し、その存在を知った。彼ら「番頭さん」は資産管理会社の代表などの肩書を使う場合もあるが、違う契約形態の時もある。超富裕層にも色々な出自があるが、代々続く資産家の場合、ご本人がおギャーと言って産まれた瞬間から既に「お金持ち」であり、誰かがきちんと管理したり、面倒を見てあげたりしなければならない。「そんなのは親の役目だろう」と思われたのならば、それは庶民の発想だ。その親の代も、株価の上がったり下がったりなどで、いちいちジタバタ証券会社に電話したりするような育ち方はされていない。超富裕層は「そんなこと」以外に沢山の用事をお持ちなのだ。