1月29日、外食チェーン大手の串カツ田中ホールディングス(以下、串カツ田中) <3547> の株価が一時1659円まで買われる場面が見られた。1月5日の安値1362円から3週間余りで約22%の上昇である。後段で述べる通り、1月15日発表の2020年11月期決算が予想よりも赤字が縮小、さらに2021年11月期には黒字化という強気の見通しが買い材料となった。新型コロナ禍で自粛ムードが広がる中、「どんな時代においても必要とされる、会社・組織・人材になる」というグループ経営理念を掲げる同社の取り組みが着実に成果を上げはじめているようだ。

今回は、串カツ田中の最新動向をお届けしよう。

大阪の伝統的なB級グルメ「串カツ」、2019年は過去最高益

串カツ田中,株価
(画像=BASICO / pixta, ZUU online)

串カツ田中は、大阪の伝統的なB級グルメ「串カツ」を全国で276店舗展開する外食チェーン大手である(2020年11月末現在、直営・FC含む)。副社長の田中洋江氏の亡き父、田中勇吉氏が残した秘伝のレシピをベースに開発した串カツは、衣 ・ 油 ・ ソースのすべてがオリジナルブレンドで「全店、味のブレがない」(串カツ田中のWebサイトより)のが特長だ。出店は関東が中心で、2008年に第1号店を東京都世田谷区の住宅街にオープンした。活気ある店の雰囲気と単価の安さもあって「ちょい呑み」需要などをとりこんで店舗を増やし、2016年9月にはマザーズ上場、2019年6月には東証1部に市場変更、2019年11月期には売上・営業利益で過去最高を上げるなど順調に拡大していた。

そんな串カツ田中も2020年は新型コロナ危機が直撃、2020年3月〜5月は多くの店舗が休業を余儀なくされ、売上が前年同期比で46%減、営業利益は四半期ベースで上場後初となる3.9億円の赤字に落ちこんだ。串カツ田中の株価は2019年11月25日の高値2652円から、2020年4月3日の安値863円まで67%も値下がりした。

このような苦しい状況の中、串カツ田中はWithコロナを見据えた対策を矢継ぎ早に打ち出し、2020年5月26日には株価も一時1911円まで戻す場面も見られた。その後も新型コロナに翻弄されながらのレンジ相場が続いたが、黒字転換の見通しがついたことで再び上値をうかがう局面を迎えているようだ。

外食大手のすかいらーく <3197> や居酒屋チェーン大手のワタミ <7522> は、新型コロナ禍で店舗数の大幅な削減を打ち出した。一方で、串カツ田中の2020年11月末の店舗数は276店舗と2019年11月末(273店舗)からむしろ増加している。今年1月15日に串カツ田中が発表した『2020年11月期決算説明資料』には、グループ経営理念として「どんな時代においても必要とされる、会社・組織・人材になる」と示されている。その理念こそが新型コロナ禍でも客層を広げ、店舗を増やす源泉となっているのだろう。次のパートで串カツ田中の具体的な取り組みを見てみよう。

「どんな時代においても必要とされる、会社・組織・人材になる」