株式会社Medifellowは、海外在住の日本人や外国人に向けてオンラインでの医療相談や医療ツーリズム事業を行うスタートアップ。今回は現役の医師であり、代表取締役CEOを務める丹羽崇氏に事業内容や「サステナブル」の考え方、医療業界が抱える課題や課題解決に向けた取り組み、日本におけるオンライン診療の未来など、興味深いお話を伺った。

海外在住者向けにオンライン上での医療相談や医療ツーリズムができる事業を展開

オンライン診療の発展に向けて挑戦を続ける現役医師の奮闘
(画像=株式会社Medifellow代表取締役CE 丹羽崇氏)

——御社の事業内容についてお聞かせください。

丹羽 弊社の主な事業内容は3つです。1. オンライン対面や文書でのセカンドオピニオン、オンライン診療・医療相談、メンタルヘルスケアなどの医療相談事業、2. セカンドオピニオンや紹介状作成を通した医療ツーリズムサポート事業、3. 医療機器やヘルスケアビジネスの調整役として医療コンサルティング事業を手がけています。

ターゲットは、海外在住の日本人と、日本で医師に診てもらうために来日する「医療ツーリズム」を希望する海外在住の外国人です。

——御社のアピールポイントは何でしょうか。

丹羽 一口に「セカンドオピニオン」と言っても、実際に行うにはその病気に関して高度な専門性を有していないと対応ができません。さらにオンラインでやるとなると高い専門性を持つ医師を多数取り揃えることが必要ですが、なかなか難しいのが現実です。しかし、弊社では、全診療科を対象としてオンラインにおけるセカンドオピニオンを提供することが可能です。

——仕事をする上で、どのような場面でやりがいを感じますか?

丹羽 サービスの利用後に「ありがとうございました」「助かりました」と声をかけていただいたり、私たちのアドバイスによって治療方針がより良い方向へ向くのを見たりすると、事業を行っていて良かったと思います。

弊社のサービスを利用される方は皆さん海外で生活されています。海外在住の日本人であれば、慣れない異国で病院を受診することに対する不安、外国人であれば自身の体調について詳しい医者が自国に少ないため相談する場が少ないという悩みを抱えています。

そのような方々の悩みや不安を解決できた上に、感謝のお声をいただけるのは、とても嬉しいですね。

——外国人の方だと文化や育ってきた環境の違いから考え方の「ギャップ」もあるのではないかと存じます。ギャップを埋めるために心がけていることはありますか。

丹羽 ご指摘のとおり、外国人は文化も考え方も日本人である私たちとは違います。このため、外国人向けにセカンドオピニオンを提供する時は、文章でやり取りします。セカンドオピニオンを望む方は、自身の疾病に関して専門性の高いアドバイスを求めています。しかし、オンライン上で話をするには同時通訳が必要となり、それだと細かい言葉のニュアンスを伝えるのは難しいんです。

——同時通訳で細かいニュアンスを伝えるのは確かに難しいかもしれないですね。

丹羽 私たちも外国人の方へ情報を正確に伝えるためには、文章がベストだと判断しました。希望者には弊社から専用フォームのURLを送り、事前に記入いただいた内容を見てセカンドオピニオンを提供しています。利用者も何に困っているのか、聞きたいことは何かを文章に書き出すことで整理できますし、我々も利用者の相談内容に関する必要な情報をまとめて伝えることができます。書面だけでも、十分にセカンドオピニオンとして機能していると考えています。

異国でも自国の医師の診療を受けたい…海外在住の日本人の医療事情を知り、創業を決意

——なぜ起業しようと決意したのか、御社の創業の経緯についてお聞かせください。

丹羽 私は現役の医師なのですが、普段、患者さんと接する中で、「こういう患者さんに対して提供できる医療サービスってないな」「こういう病気を診てくれる先生ってどこにいるかな」と悩むことが日常的にあります。患者さんの病気を治すために薬の研究や臨床試験、治験を行い、私たちは日々医療を前進させているわけです。

私は病院に勤務しつつ研究をしている医者なので、学会に出席することもあります。以前学会のために海外へ行った時、海外在住の日本人の医者の少なさを痛感しました。海外在住の日本人は研究目的のライセンスを持っていても、現地で診療するライセンスを持っていないためです。

海外では日本人の医師は患者さんを診療できないので、海外在住の日本人は日本人の医者に診てもらうことができません。「海外の日本人が置き去りにされている」と感じました。異国でも自国の医者に診てもらうのが、言葉の面でも安心感がありますよね。

実際に悩んでいる人に出会い、どのようにして問題を解決しようかを考えた時、「オンラインで日本の医師が海外の患者さんに対して診療する形であれば、問題を解決できて幸せになる人が多いのではないか」と考えたのが創業のきっかけです。

そこからオンライン診療をビジネスとして成立させる手段や、法律的な部分や患者さんにどういった医療サービスを届けることができるのか、どこまでなら医学的に許されるのか、5年ほどかけてさまざまな部分で検証を進めて起業しました。

想いだけでは「サステナブル」な事業にならない…ビジネスとして収益化して「持続可能」に

——「サステナブル」に対してどのような考え方を持っていらっしゃいますか。

丹羽 私は「サステナブル」について、事業にしても社会にしても需要があるから「持続可能である」と考えています。その需要の有無を正確に見極めることが大事で、見極めの際に自身の思い込みをどれだけ剥がせるかが大事だと考えています。

人は「想い」と共に生きているので、自身の想いだけで事業を立ち上げる人は多いと思います。しかし、想いを先行させるだけで事業はできないと考えています。「このサービスは絶対に当たる」と言い切るには、科学的な根拠が必要となります。自身の思い込みを外して、客観的な根拠をどこまで導き出せるかによって、そのサービスを持続可能なものにできるかが決まるのではないでしょうか。医学も同じだと思います。

——医療業界における課題とは何だと考えていますか。

丹羽 例えば、今は「医療AI」の開発が進んでいますよね。AIによるオンライン診断アプリの運用やオープンプラットフォームでサービスを提供する企業が出てきていますが、個人的にはどの企業も収益化までは至っていないように見えます。

アプリやツールを作るのは良いのですが、そのような新しいデバイスやプロダクト、システムも誰がどこで使うのかが見えないまま、開発者の「ただ作りたい」という自己満足のために作っているだけというケースが多い気がします。作ったのはいいものの、どこで使うかも分からず、収益化もできていません。

——確かに収益化をしていかないと、それこそ「持続可能」ではないですよね。

丹羽 そうです。持論ではありますが「サステナブル」であるためには、お金が上手に回らないといけません。つまり、ビジネスとしてきちんと収益可することが重要だと考えています。医療業界はビジネス的な視点を持つ人材が少なく、何か事業を立ち上げるにしても出口戦略が曖昧なまま、想いだけで進めてしまうケースが多数です。その曖昧さを明確なものへ調整することが弊社のコンサルティング事業につながることはあります。

国外から国内へ、培ってきた経験を日本におけるオンライン診療の発展に活かせる企業に

——創業前と創業後で気づいたことはありますか。

丹羽 創業前から仮説としてはあったのですが、オンライン診療は日本国内では広まりづらいと考えていました。日本では、医療のメインターゲットが高齢者です。高齢の方にITを使いこなしてもらうハードルは高く、日本ではIT技術の導入も遅れていることから、オンライン診療をビジネスモデルとして成立させるのは難しいと感じていました。

日本ではオンライン診療は限定的な広がりでしかないと考えた結果、海外に目を向けてオンライン診療の事業を始めました。ドクターショッピングができるくらい日本の医療資源は豊富なので、国内であれば近くの病院やクリニックですぐに診てもらうことができます。しかし、海外はそういうわけにいきません。日本人の医者から日本語で説明してもらおうと思っても、日本人の医者がまずいませんから。

——国内向けに何かサービスを提供する予定はないのでしょうか。

丹羽 今後は、セカンドオピニオンに関しては国内でも展開していこうと考えています。事業を始めてから、日本国内でも本当はセカンドオピニオンを受けたいけれども、なかなか行けなくて困っている人たちがいると見えてきたためです。現在、弊社とセカンドオピニオン事業で提携していただける病院探しを進めています。

——御社の事業をどのように発展させていきたいか、今後についてお聞かせください。

丹羽 オンライン診療は日本で広げにくいと言いましたが、今後となると話は別です。将来的に、オンライン診療は日本でも浸透していくと思います。しかし、オンライン診療において、血圧や脈拍の計測やさまざまな検査のニーズに応えるためには、センサー技術の進歩が絶対条件です。残念ながら、今はまだ技術的な面で追いついていません。

また、センサー技術を使ったデバイスを開発しても、世の中に浸透させる必要があります。弊社はオンライン医療相談をビジネスベースで動かしている企業なので、新しく生み出された技術を最初に使うプラットフォームになると考えています。

私たちがオンライン診療の中核として多くの技術の発展を支え、開発されたデバイスをビジネス目線で取り入れて新しい事業を進めていくことで、より便利なオンライン診療の世界が実現できると思っています。

ヘルスケア領域は「ブルーオーシャン」、新たな可能性が詰まった市場で挑戦し続ける

——これから、サステナブルに関する取り組みに挑戦したい経営者の方たちに向けてメッセージをお願いします。

丹羽 ヘルスケアの領域はまだまだ未開拓で、これから発展する可能性が高い市場です。いろいろな可能性が詰まっています。私も、やりたいことがたくさんあって困っているほどです。私だけでは手が足りないので、ヘルスケア領域でビジネスに挑戦を考えている方は、ぜひお声がけください。意見交換をしましょう。

——今後の医療が楽しみというか、すごく便利な世の中になっていくのではないかと、お話を聞いて思いました。

丹羽 そうですね。私自身、新しい研究を加速させるような仕組みを作っていきたいですし、開発者のためにAIのプラットフォームを整備したいです。優秀な医者は多くいるのですが、自分たちのやりたいことを良いビジネスにしたいと思っても、どうしたらいいか分からない人たちがたくさんいます。そういう人たちを日本から発掘して、一緒に何かできたら良いですね。

<会社情報>
株式会社Medifellow
107-0052東京都港区赤坂2-10-2 吉川ビル2階
https://medifellow.jp/

(提供:THE OWNER