日本でコロナ禍の「第4波」が起きている中、今年のGWが近づいてきた。国は国民に「オンライン帰省」を呼び掛けているが、航空会社や鉄道会社や移動需要が高まると踏み、便数を昨年より増やす計画だ。オンライン帰省は、国民の大多数に無視されるのか。

国は「オンライン帰省」を国民に対して呼び掛けている

GWに感染爆発の可能性  大多数が「オンライン帰省」の呼びかけを無視? 
(画像=yu_photo/stock.adobe.com)

例年、GW(ゴールデン・ウィーク)の大型連休中は多くの人が帰省や旅行で都市部から地方へと移動する。しかし、移動そのものや帰省先での家族・友人との接触機会は、新型コロナウイルスの感染拡大の抑止に向けてはマイナスでしかない。

そのような中、国は今年のGWにおいてはどのようなことを国民に呼び掛けているのだろうか。内閣官房の「新型コロナウイルス感染症対策」ページを開くと、「今年のゴールデンウィークはステイホーム ~ゴールデンウィークは、うちで、すごそう~」というスローガンが掲げられている。

さらに、「今年のゴールデンウィークは、不要不急の外出や都道府県をまたいだ人の移動は極力避け、人との接触を8割減らしましょう」とした上で、具体的には以下の3点について国民に協力を呼び掛けている。

(1)帰省・旅行を控える!
(2)3密(密集・密接・密室)を避ける!
(3)買物の際は少人数・空いている時間に!

特に(1)の「帰省・旅行を控える!」においては、スマートフォンやタブレット端末を使って、なるべく「オンライン帰省」をしてほしいと呼び掛けている。ビデオ会議アプリ「Zoom」やチャットアプリ「LINE」の映像通話機能を使えば、オンライン帰省は可能だ。

GW前の4月の感染者数は2020年と比べて4~10倍程度

国がオンライン帰省への協力を強く求めるにはわけがある。それは昨年2020年のGW前の4月と今年2021年の4月の感染者数を比較すると、1日当たりの感染者数は今年の方がはるかに多い状況となっているからだ。

▽2020年と2021年の4月1〜9日の1日当たりの感染者数の比較

月・日2020年2021年増加幅
4月1日268人2,605人9.7倍
4月2日279人2,757人9.9倍
4月3日357人2,773人7.8倍
4月4日369人2,468人6.7倍
4月5日359人1,572人4.4倍
4月6日244人2,655人10.9倍
4月7日368人3,450人9.4倍
4月8日527人3,447人6.5倍

※出典:NHK特設サイト「新型コロナウイルス」より

日によって1日当たりの感染者数は4~10倍程度となっており、昨年よりも厳重に警戒しなければならない状況であると言える。このような感染者が多い状況でGWに人の大移動が起これば、GW後の5月後半からかつてない規模の「第5波」が起きる可能性がある。

では、今年のGWにおける人の移動はどのような状況になるのか。昨年より多くの人が帰省を自粛するのか、それともそうではないのか。この答えは実際に蓋を開けてみなければ分からないが、推測に役立つ判断材料はある。

航空会社や鉄道会社は、GWの人の移動量を独自の調査から予測し、便数計画を決めている。つまり、昨年実績よりも運行本数を減らす計画であれば人々の移動ニーズは小さくなると予測しており、逆に運行本数を増やす計画であれば移動ニーズが大きくなると予測しているということだ。

実際に、航空会社や鉄道会社の今年のGWの運行計画がどうなっているのか。

1日当たり感染者数は多いのに、飛行機・新幹線は便数を増やす計画

報道によれば、全日本空輸(ANA)は4月29日~5月5日にかけて、2020年実績の6倍となる便数を運行する計画だという。1日当たりの搭乗者数も2020年の10倍の10万人以上となる見込みだ。

一方で、新幹線はどうか。東海道新幹線を運転するJR東海によれば、GW中は1日平均約400本を運転するという。この「1日平均約400本」という数字は、2020年と比べると約100本多い数字だ。

ANAもJR東海も便数を増やした理由について明確には触れていないが、移動需要の増加を見越して便数を増やしていることだけは確かだ。そしてもし、ANAやJR東海が予測している通りに人の移動が去年に比べて活発になれば、新型コロナウイルスの感染拡大がさらに加速する可能性がある。

多くの国民は国の「オンライン帰省」のお願いを無視?

この記事では、昨年と今年のGW前の感染者数の比較や、航空会社や鉄道会社の今年のGW中の運行・運転計画から、今年のGW中の人の移動がどうなるのかを推測してきた。航空会社や鉄道会社の見通し通りになれば、多くの国民は国の「オンライン帰省」のお願いを無視することになり、その結果、感染者数がかつてないスピードで増えることになるかもしれない。

変異株の猛威もあり、いまは最悪の状況を考えるべきときだ。実際にGWに人々がどのような行動をとるのか、今から気になるところだ。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)