筆者が暮らすオランダでは仮想通貨(暗号資産)の規制を巡る議論が起きている。6月11日にはオランダ経済政策分析局のディレクター、ピーター・ハーセコップ氏がビットコイン取引やマイニング等の活動を全て禁止すべきだと主張。ハーセコップ氏は仮想通貨は「通貨としての役割を果たしていない」との見解を示したほか、犯罪に悪用される危険性などを理由に「全面禁止すべきだ」と主張している。これに対してフークストラ財務大臣はハーセコップ氏の懸念に一定の理解を示しつつも「全面禁止はあまり好ましくない」と反論、マネーロンダリング(資金洗浄)等の犯罪にはルールや規制を設けて対応したほうが「全面禁止よりも効果的」との考えを示している。このような議論が起きている背景には、それだけ仮想通貨が社会に浸透し、無視できない存在になり始めている、ということなのかもしれない。
最近では仮想通貨ブームに乗るように「仮想通貨対応デビットカード(Crypto Debit Card)」が登場している。決済手段としての仮想通貨の需要が拡大すれば、後段で述べる仮想通貨特有の流動性リスクや価格変動リスクを軽減することも期待されよう。今回は仮想通貨のさらなる発展の切り札となる可能性を秘めた「仮想通貨対応デビットカード」についてリポートしたい。
仮想通貨が抱える「3大リスク」とは?
主な仮想通貨は今年4月をピークに調整局面にある。Coin Market Cap(コイン・マーケット・キャップ)によると、ビットコインは4月半ばに一時6万4000ドル(約709万円)を超えて最高値を更新したが、6月26日現在は3万ドル(約332万円)台とわずか2カ月ほどでピークの半値以下に落ち込んでいる。このほか、イーサリアムやバイナンスコイン、カルダノも軒並み下落傾向にある。
ビットコインに限らず仮想通貨は流動性が低く、価格の変動幅も大きいという特徴がある。そうした特徴に加え、今回は5月に米EV(電気自動車)大手のテスラがビットコイン決済の一時停止を発表したことや、中国が「暗号資産マイニングおよび取引の規制強化」を公表したことも売りに拍車をかけたようだ。流動性リスク、価格変動リスク、サイバーリスクは仮想通貨の「3大リスク」と言っても差し支えないだろう。この「3大リスク」を軽減することが、仮想通貨が今後さらなる発展を遂げるための課題と考えられる。
流動性リスクについては、仮想通貨を決済手段として広範囲に普及させる動きも高まっているが、対応しているオンラインや実店舗がまだまだ少ない。ロンドンを拠点とする国際的なeスポーツ企業のGfinityは「2021年5月の時点で世界中に1万種類以上の仮想通貨が流通しているにもかかわらず、決済として利用されているのはほんの一握り」と伝えている。そうした中で誕生したのが、通常のデビットカードのように気軽に利用できる「仮想通貨対応デビットカード」だ。