「とびきりの大金持ちについて言わせてもらうと」「やっこさんたちは僕らとはそもそもモノが違う」「とにかく彼らは別世界の人間なのだ」20世紀の米国文学を代表する小説家の一人、F・スコット・フィッツジェラルドの短編『ザ・リッチ・ボーイ(金持ち階級の青年)』にそのような記述がある。裕福な家庭で何不自由なく生きてきた主人公が、失恋を機に人生の葛藤を経験するというストーリーだ。この短編小説で彼らお金持ちは「別世界の人間」と評されている。

興味深いのは、この記述にアーネスト・ヘミングウェイが反論していることだ。1936年、ヘミングウェイは雑誌「エスクァイア」で短編小説『キリマンジャロの雪』を発表、その中で主人公のハリー・ストリートに「フィッツジェラルドときたら哀れなことにお金持ちにロマンティックな畏敬の念を抱いていて、昔、物語の始まりに『連中は君や僕と人種が違う』と書いたほどだ」と言わせている。ヘミングウェイに言わせれば、お金持ちと一般人の違いは「単にお金を沢山持っているか否かしかない」ということのようだ。米教育情報サイトのCourse Heroによると、これを読んだフィッツジェラルドはヘミングウェイに手紙を書き、自分の名前を外すように頼んだという。その後、本として出版された『キリマンジャロの雪』では「作家のジュリアン」という架空の登場人物に差し替えられている。

20世紀の米国文学を代表する2人の文豪のエピソードは興味が尽きない。だが、近年はヘミングウェイの持論を科学的に覆す「お金持ちの心理学(Psychology Of The Superrich)」の研究も発表されている。お金持ちの心理とはどのようなものなのか。詳しく見てみよう。

130人のお金持ちと、2万人を超える一般人のデータを分析した結果…

お金持ち,特徴
(画像= Fast&Slow / pixta, ZUU online)

心理学分野でパーソナリティを分析する際に用いられる分類法に「ビッグファイブ理論」がある。ビッグファイブ理論は、米国の心理学者でオレゴン大学の名誉教授でもあるルイス・ゴールドバーグが提唱する学説で、今年5月27日付の当コラム『富と成功を手に入れるコンシエンシャス・マインド』でも紹介している。概説すると「人間のもつ様々な性格は5つの要素(外向性・情緒安定性・開放性・誠実性・協調性)の組み合わせで構成される」というものだ。

今回紹介する「お金持ちの心理学」の研究も、上記のビッグファイブ理論に基づいている。