シンカー:鉱工業生産指数、予測指数、先行き指数、在庫率指数、実質輸出、日銀消費活動指数、景気ウォッチャーDI、政策金融公庫中小企業貸出態度DIで、生産動向を総合的に示す指数を構築する。生産動向指数はようやく0に近づき、生産活動のしっかりとした回復が始まりつつあることを示している。生産動向が強い時には、指数は1を上回ることを考えれば、まだ本格的な回復局面には至っていない。各要因をみると、実質輸出と在庫状況の改善が回復をけん引している。予測指数と先行き指数の加重平均は0近傍であり、企業の見通しはまだ慎重なようだ。景気ウォッチャーDIは、感染状況の変動により、不安定化している。そして、回復が遅れているのが、政策金融公庫中小企業貸出態度DIと日銀消費活動指数で、緊急事態宣言下で飲食・宿泊を含むサービス消費が、巣ごもり需要に支えられる財と比較し、かなり弱いことが足を引っ張っていると言える。生産活動の回復が強くなるには、サービス消費の回復が必要である。生産動向は、国内のサービス消費に左右される度合いが増してきている。国内のサービス消費の需要が拡大するにつれて、必要となる財の需要が拡大してきた。デジタル革新により、サービス消費の拡大に、デジタル関連製品を中心に、より多くの財が必要になってきているとみられるからだ。財による生産の回復で油断をしていると、サービス消費の低迷で、回復が喪失するリスクがある。生産の本格的な回復のためには、家計を強く支援する経済対策でサービス消費を支える必要である。

会田卓司,アンダースロー
(画像=PIXTA)

日本の生産動向は輸出の需要に左右されているという印象が強い。しかし、国内のサービス消費に左右される度合いが増してきているようだ。国内のサービス消費の需要が拡大するにつれて、必要となる財の需要が拡大してきた。デジタル革新により、サービス消費の拡大に、デジタル関連製品を中心に、より多くの財が必要になってきているとみられる。鉱工業生産指数の動きは、経済産業省予測指数、在庫率指数、そして実質輸出で説明し、予測をするのが通例であった。

近年は、日銀消費活動指数(プラス)、景気ウォッチャー調査、政策金融公庫政策金融公庫中小企業貸出態度DIなど、内需関連の指標を予測モデルに加える必要が出てきている。実質輸出はかなり回復し、水準は過去最高となっている。しかし、生産活動の強さが戻るには、内需のしっかりとした回復が必要である。米国を中心に外需の動きばかりにとらわれて、内需の分析をワクチン接種率だけで済ませていると、日本経済の動きを見失うリスクがある。緊急事態宣言が期間延長・地域拡大される可能性が、経済活動の弱体化が懸念される。企業のリストラが再発し、3%程度で耐えている失業率が上昇してしまうリスクがある。生産の強い拡大には内需のしっかりとした回復が必要だ。経済対策の補正予算で企業・家計への支援を拡大することが急務になっているようだ。

鉱工業生産指数=-1.1 +0.5 予測指数 + 0.1 先行き指数(逆数、1リード)-0.03 在庫率指数(1ラグ)+0.002実質輸出+0.3日銀消費活動指数(1ラグ)+0.1景気ウォッチャーDI+0.1政策金融公庫中小企業貸出態度DI+1.7アップダミー(1標準誤差以上)-1.9ダウンダミー(-1標準誤差以下); R2=0.99

このモデルの形をベースにして、生産動向を総合的に示す指数を構築する。鉱工業生産指数、予測指数、先行き指数(逆数、1リード)、在庫率指数(1ラグ)、実質輸出、日銀消費活動指数(1ラグ)、景気ウォッチャーDI、政策金融公庫中小企業貸出態度DIを、Zスコア((当月データ-36か月移動平均)/36か月標準偏差)をとり、生産は1、予測指数は0.75、先行き指数は0.25、日銀消費活動指数は2、その他は1のウェイトの加重平均をとる。生産動向指数はようやく0に近づき、生産活動のしっかりとした回復が始まりつつあることを示している。生産動向が強い時には、指数は1を上回ることを考えれば、まだ本格的な回復局面には至っていない。各要因をみると、実質輸出と在庫状況の改善が回復をけん引している。予測指数と先行き指数の合計は0近傍であり、企業の見通しはまだ慎重なようだ。景気ウォッチャーDIは、感染状況の変動により、不安定化している。

回復が遅れているのが、政策金融公庫中小企業貸出態度DIと日銀消費活動指数で、緊急事態宣言下で飲食・宿泊を含むサービス消費が、巣ごもり需要に支えられる財と比較し、かなり弱いことが足を引っ張っていると言える。生産活動の回復が強くなるには、サービス消費の回復が必要である。財による生産の回復で油断をしていると、サービス消費の低迷で、回復が喪失するリスクがある。生産の本格的な回復のためには、家計を強く支援する経済対策でサービス消費を支える必要である。

図1:生産動向指数

生産動向指数
(画像=内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券 作成:岡三証券)

図2:生産動向指数の各構成要素のZスコア

生産動向指数の各構成要素のZスコア
(画像=内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券 作成:岡三証券)

図3:生産動向指数の各構成要素のZスコア

生産動向指数の各構成要素のZスコア
(画像=内閣府、日銀、岡三証券、Refinitiv 、岡三証券 作成:岡三証券)

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岡三証券チーフエコノミスト
会田卓司

岡三証券エコノミスト
田 未来