本記事は、司拓也氏の著書『人前が苦手なら、ポーカーボイスで話せばいい。 声の悩みを解決する8つの簡単メソッド』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています
緊張はあなたの「敵」ではない
さて、ここまで「緊張を悟られないような声」になるための必要性について、いろいろとご紹介してきました。
でもひとつ、大切なことを伝えさせてください。
「緊張」は悪いものではありません。
緊張が起こるメカニズムはシンプルです。
自分にとって慣れない状況だからこそ、「失敗したらどうしよう」「相手に変な風に思われたらどうしよう」と考えてしまい、頭の緊張が心に伝わり、ネガティブな気持ちになって、その緊張が身体に伝わる。そうした負のスパイラルにハマることから起こるものです。
全然刺激のない状況だと、多くの場合は緊張しません。
新しいことにチャレンジしたり、新しい人に会ったりはもちろんのこと、自分が慣れていない状況だからこそ、緊張は起こります。
何十年来の友達に会うときに、緊張しながら話す人なんて、ほとんどいないのではないでしょうか。また、運転などの自分が何十年間も続けてきた行為をするとき、緊張する人もほとんどいないでしょう。
つまり、緊張しているということは、あなた自身が新しいなにか、あるいは自分が不慣れななにかに挑戦しているということです。慣れないものに、必死で適応しようとするから緊張する。知らないことに真摯に向き合おうとするからこそあらわれる心の仕組みだと理解しましょう。
また、緊張があるからこそ、高いパフォーマンスが出せることも多々あります。
オリンピック選手を例に考えてみても、わかるはず。全世界の人が見守るなか、ひとつでもミスをしたら負けてしまう。そんな想像しただけでも間違いなく緊張する大勝負です。それにもかかわらず、ときには練習ですら出せなかったような、自己新記録をたたき出す選手もいます。
それは、緊張の特性をうまく引き出し、利用しているからこそ。自分の緊張に動揺せず、飲みこまれなければ、逆に高い成果を得ることができます。
緊張しているときは、いつもの何倍も準備に時間をかけたり、失敗しないようにと細心の注意を払います。だからこそ、慣れてしまって、何も考えずにこなしているときより、高い成果を挙げられるのです。
私の受講生の方々からも、こんな声が寄せられています。
以前はプレゼン前などになると、「失敗したらどうしよう……」「可能なら、いますぐこの場から逃げ出したい……」という気持ちがわきでてきて、「言葉が出てこない」「声が震えてしまう」という症状が頻発していました。 そのたびに、上司やクライアントからは、「もっと落ちついて」「最後まで話せるのか、プレゼン内容に集中できなかった」などと言われてきました。 ポーカーボイスを身に着け緊張との向き合い方を知ってからは、緊張に押しつぶされることはなくなりました。 失敗への恐れではなく、どうしたらうまくいくかにフォーカスすることができるようになったことは大きな収穫です。(30代・男性・会社員)
ポーカーボイスのトレーニングを受けたことで、行動の選択肢が増えたように思います。たとえば、以前なら、「やりたいけど、プレゼンや企画会議で思うように発言できないに決まっている」と思って、避けていた新規プロジェクトへの参加も、「声や話し方で馬鹿にされることはない」という自信が出たせいか、自分から参加できるようになりました。 やはりいまだに人前に出るときは緊張します。でも、それは「声を馬鹿にされる」というネガティブな緊張ではなく、「新しいことにチャレンジするワクワク感」を秘めた、ポジティブな緊張になったように思います。(20代・女性・会社員)
「緊張が人のパフォーマンスをアップする」。
その効果を検証したのが、ロチェスター大学の心理学者であるジェレミー・ジェイミソン博士の行った実験です。
この実験では、大学院進学適性試験に向けて勉強中の学生を2つのグループに分け、試験を受けさせたのです。片方のグループの学生には「不安を感じると成績が悪くなると思っているかもしれませんが、そうとは限りません。もし、テスト中に不安を感じたら、〝ストレスのおかげでうまくいきそうだ〟と思いましょう」と記載しました。
すると、このメッセージを記載された学生は、メッセージが何も書かれなかった学生よりも点数が良いという結果に。
仮に緊張やプレッシャーを感じたとしても、それをネガティブなものだと思わず、「チャレンジをしているチャンスである」とポジティブに考えることで、身体がリラックスし、モチベーションが高まります。
緊張はあなたの敵ではなく、あなたを成長させてくれる大切な味方である。そのことを、ぜひ知ってください。
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