シンカー:岸田前自民党政調会長が自民党総裁選挙に勝利し、10月4日の臨時国会を経て、首相に就任することになる。自民党内の主導権がこれまでの主流派の民間負担でのミクロ政策からリフレ派の政府負担でのマクロ政策に再び移り、財政政策はこれまでの緊縮路線から拡大路線に向かっていくことになるだろう。後者は強い総需要が投資を誘発することで生産性の向上を含む強い総供給を作ると考え、前者はコスト削減などの効率化による強い総供給がトリクルダウンで強い総需要を作ると考える。前者のアプローチはうまくいかなかった。規制緩和を含むコスト削減中心の改革から、政府の投資中心の改革へ転換し、民間の投資の呼び水として総需要を拡大しながら成長戦略を推進することになるだろう。新たな政策は未来への投資であるため、財源は主に国債で、必ずしも増税や他の支出の削減が必要であるとは考えず、政策の実行が最優先で、その足かせとなる不毛な財源論からは距離をおくことになろう。市中のマネーを拡大するネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、マイナスが強い)はこれまで消滅していて、GDP比5%(25兆円)程度の恒常的不足、財政拡大余地になっていたから当然だ。財政は、これまでの一企業のような単純な会計としてではなく、マクロ経済の資金過不足を前提に運営されるようになるだろう。新型コロナウィルス対応のための財政支出で、ネットの資金需要は−5%程度の望ましい水準になったが、今後はデフレ構造不況脱却のための財政支出に徐々にシフトすることで水準を維持することになろう。

「改革派=財政緊縮」というのは古いレッテルで、「改革派=政策の実行」が新たなモデルだろう。改革には資金が必要だからだ。これまでは緊縮路線で資金が使えず、改革が困難であった。改革や多くの政策アジェンダを実行するためには資金が必要で、どれだけ改革と政策を実行したかで内閣への国民の支持が決まる。緊縮財政ではもはや政権運営を安定させることは困難だ。連立政権のパートナーの公明党も財政拡大につながる政策の主張をしている。当然ながら、政府と企業が一体となった成長投資と所得分配を側面支援する金融緩和の継続は必要で、2%の物価上昇を目指す日銀の金融政策に影響はないだろう。経済政策がアベノミクスとは違うものになるというのは間違いで、現行の金融緩和の枠組みは維持され、財政政策が緊縮から一線を引いて所得の分配を目指した拡大に転換し、成長戦略もコスト削減ではなく政府の投資を重視することで、事実上、アベノミクスの不完全であったリフレ政策が家計に所得を回すようなより完成したものになるだろう。岸田内閣は、リフレ派の細田派(事実上の安倍派)と麻生派が支える構図で、リフレ派のマクロ政策での経済規模の拡大の基盤の上で、改革を推進し、日本の国力の増強を目指すことになるだろう。麻生財務大臣は、2%の物価目標の達成には金融政策だけでは限界であり、金融と財政の「両方で手を組んでやっていかねばならない」と発言している。岸田氏は、成長と分配が先で、財政再建は後であると明言している。

市場や民間任せではなく、政府が関与することで成長と所得の拡大、そして分配の好循環を後押しする。これまでの緊縮的な小さな政府から拡張的な大きな政府へ方針転換する。緊縮路線は新型コロナウィルスとの戦いで所得環境の悪化に苦しむ国民からの支持を失ったとみられ、緊縮路線では政権が長く持たないリスクが生まれるから当然だろう。国民への支援を「ばらまき」と批判する意見も、新型コロナウィルスとの戦いで安全圏にいるか規制に守られている強者の論理だと受け入れられなくなっているだろう。現在、投資に向けられる資本は潤沢にあり、投資活動が弱いのは生産性の劣る既得権益をもった企業が資金を囲い込むからではない。足らないのは総需要である。総需要が足りず、投資の期待リターンが低いため、企業は投資に躊躇してしまうことになる。投資が拡大しなければ、生産性は向上しない。緩和的な経済政策が非効率な「ゾンビ」を生んで生産性を下げるという議論も、典型的な強者の論理である。すべてが急変している今日、総需要が停滞している環境で「ゾンビ」になる危機感を持たない企業は少なく、緩和的な経済政策が転換すれば、「ゾンビ」への不安が投資を抑制し、生産性は更に下がるだろう。岸田氏が主張する令和の所得倍増計画では、財政を拡大し、家計に所得を回すことがまず必要になる。消費が増加することで、投資の期待リターンが上昇し、企業は刺激されて投資を拡大するようになる。企業の投資がイノベーションを生み、生産性が上昇し、雇用は拡大し、実質賃金も増加する。令和の所得倍増計画では、総需要と総供給が相乗効果でともに増加する好循環が生まれ達成される。

政権の責任は国民の生活を支えることが主であり、財政再建は従で、国民が豊かになることにより財政再建も実現する。岸田氏は、安易な正義感で財政再建を目指して緊縮路線をとったり、日銀の金融緩和の枠組みを引き締めと誤解されるようなものに変更する圧力をかけた場合、自民党内の求心力が低下し、期待された所得分配も成し遂げられず、急激な円高や株式市場が混乱するとともに国民の支持も失い、政権が短命となるリスクがあることは理解しているだろう。消費税率も今後10年程度は引き上げないとしている。成長と分配の好循環を強くすることを財政再建につなげるには10年程度の時間はかかるだろうから、それまでに消費税などの増税という安易な方法に走るのであれば、家計支援のコミットメントに対して無責任になってしまうから当然だ。第四次産業革命や脱炭素などで、時代は大きく変わっている。すべてが急変している今日、財政収支の均衡や低い物価上昇率に拘る考え方や使い古された手法はもはや通用しないのかもしれない。新しい機会と問題に取り組むための、新しい考え方が必要なのだろう。古臭い拘りから脱し、高めの物価上昇率と財政赤字を容認しながらの経済政策で成長率を促進し、民間と公共を合わせた投資水準を引き上げられた国が勝ち組になるのだろう。

まずは大規模な経済対策を策定し、デフレ構造不況脱却までの財政拡大のコミットメントを強くし、マーケットが転換を確信した時、株式市場の水準は切り上がるだろう。鵺的な「改革期待」で株式市場の水準が切り上がっても、改革を現実的なものにする財政拡大がなければ、好調な株式市場は持続せず、失望となるリスクがある。そして、総需要の拡大と成長戦略で企業活動が刺激されることで設備投資サイクルが上振れ、企業の長期的な成長期待と収益期待がついに上昇したことが意識され、国民への所得分配につながる財政拡大への態度がブレなければ、デフレ構造不況からの脱却の機運で、景気拡大と株価上昇は加速していく可能性がある。プライマリーバランスの黒字化目標の棚上げ、先進国の財政運営として異常な60年国債償還ルールの撤廃、そして過去の借金の返済に回ってしまっている消費税の四分の一程度の部分の財源化で、財政拡大の可能性を広げる動きがあるかもしれない。一方、インフレ経済下の効率化の処方箋である規制緩和やコスト削減を中心とする構造改革の進展のみが期待されても、総需要の拡大と成長戦略が作用する設備投資サイクルが上振れるまでに、財政政策が拡大路線からコロナ増税などで緊縮路線に再び回帰してしまえば、デフレ経済下で最も重要な家計支援による総需要拡大の力がなく構造改革は果実を実らせることはできず、期待で上昇した株式市場には大きな失望が生まれるだろう。

家計と企業への支援を大きくして、国民に寄り添う形を鮮明にすることが、政治の安定だけではなく、リフレ・サイクルの強さを維持し、日本の株式市場が上振れるための条件であると考える。自民党内の主導権がこれまでの主流派のミクロ政策からリフレ派のマクロ政策に再び移り、財政政策はこれまでの緊縮路線から拡大路線に向かっていくことで、堅調なリフレ・サイクルが、日銀の緩和的な金融政策とともに、デフレ完全脱却まで継続する可能性が高いと考える。総裁選で善戦した候補が重く用いられることで、自民党が再び一枚岩になれるのかが、衆議院選挙の行方に影響を与える。岸田氏(1回目の得票率は34%)は善戦した高市氏(25%)との連合で河野氏(33%)に圧勝(決選投票60%)したことで、高市氏のサナエノミクスのリフレ政策を取り入れることになるだろう。一回目の投票で岸田氏が1位になったことは、自民党内での求心力を高めるだろう。候補者同士が激しく対立するこれまでの総裁選とは違い、対立候補を排除するなどして自民党内を分断することはせず、一丸となることは可能だろう。総裁選を経て自民党の支持率は上昇しており、衆議院選挙では連立与党が過半数を維持し、政権が継続する可能性が高い。緊急事態宣言が解除されることも追い風だ。財政拡大のリフレ政策の基盤の上で、岸田氏の所得分配、高市氏の財政成長投資、河野氏の制度改革、そして野田氏の弱い立場の人々への目線が合わされば、日本経済はデフレ構造不況脱却に向けて強い推進力を得ることができるだろう。

会田卓司,アンダースロー
(画像=PIXTA)

財政緊縮から拡大への転換

岸田前自民党政調会長が自民党総裁選挙に勝利し、臨時国会を経て、首相に就任することになる。自民党内の主導権がこれまでの主流派の民間負担でのミクロ政策からリフレ派の政府負担でのマクロ政策に再び移り、財政政策はこれまでの緊縮路線から拡大路線に向かっていくことになるだろう。規制緩和を含むコスト削減中心の改革から、政府の投資中心の改革へ転換し、民間の投資の呼び水として総需要を拡大しながら成長戦略を推進することになるだろう。新たな政策は未来への投資であるため、財源は主に国債で、必ずしも増税や他の支出の削減が必要であるとは考えず、政策の実行が最優先で、その足かせとなる不毛な財源論からは距離をおくことになろう。市中のマネーを拡大するネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支、マイナスが強い)はこれまで消滅していて、GDP比5%(25兆円)程度の恒常的不足、財政拡大余地になっていたから当然だ。財政は、これまでの一企業のような単純な会計としてではなく、マクロ経済の資金過不足を前提に運営されるようになるだろう。新型コロナウィルス対応のための財政支出で、ネットの資金需要は−5%程度の望ましい水準になったが、今後はデフレ構造不況脱却のための財政支出に徐々にシフトすることで水準を維持することになろう。

経済政策がアベノミクスと違うものになるというのは間違い

「改革派=財政緊縮」というのは古いレッテルで、「改革派=政策の実行」が新たなモデルだろう。改革には資金が必要だからだ。これまでは緊縮路線で資金が使えず、改革が困難であった。改革や多くの政策アジェンダを実行するためには資金が必要で、どれだけ改革と政策を実行したかで内閣への国民の支持が決まる。緊縮財政ではもはや政権運営を安定させることは困難だ。連立政権のパートナーの公明党も財政拡大につながる政策の主張をしている。当然ながら、政府と企業が一体となった成長投資と所得分配を側面支援する金融緩和の継続は必要で、2%の物価上昇を目指す日銀の金融政策に影響はないだろう。経済政策がアベノミクスとは違うものになるというのは間違いで、現行の金融緩和の枠組みは維持され、財政政策が緊縮から一線を引いて所得の分配を目指した拡大に転換し、成長戦略もコスト削減ではなく政府の投資を重視することで、事実上、アベノミクスの不完全であったリフレ政策が家計に所得を回すようなより完成したものになるだろう。岸田内閣は、リフレ派の細田派(事実上の安倍派)と麻生派が支える構図で、リフレ派のマクロ政策での経済規模の拡大の基盤の上で、改革を推進し、日本の国力の増強を目指すことになるだろう。麻生財務大臣は、2%の物価目標の達成には金融政策だけでは限界であり、金融と財政の「両方で手を組んでやっていかねばならない」と発言している。岸田氏は、成長と分配が先で、財政再建は後であると明言している。

強い総需要が生産性の向上を含む強い総供給を作る

自民党内の現在の主流派とリフレ派の違いは、ミクロとマクロの政策の手法のみのようにみえる。しかし、根本的な違いは国家観に根差す。リフレ派はデフレ脱却を目指すマクロ政策を重要視するが、目的は日本の国力の増強だと考えられる。強いマクロ経済の力なくして、安全保障の強い力は構築できないという考え方だ。一方、主流派がミクロ政策を重視するのは、産業を変革する主導権を政治が握る中で、産業の強い力によって日本を優位な地位に押し上げるという考え方だろう。もちろん、強いマクロ経済も産業も必要だが、問題はどちらにより重点を置くかである。前者は財政拡大などのマクロ政策による経済規模の拡大がより重視され、後者は経済の生産性の向上を目指すミクロ政策がより重視され財政再建の思想と親和性がある。前者は強い総需要が投資を誘発することで生産性の向上を含む強い総供給を作ると考え、後者はコスト削減などの効率化による強い総供給がトリクルダウンで強い総需要を作ると考える。後者のアプローチはうまくいかなかった。そして、米中対立の中で、日本の中国に対する態度は、安全保障を重視する前者が厳しく、産業の協調を重視する後者は柔らかになりやすい。

所得分配政策には財政拡大が必要

岸田氏は、「中間層の拡大に向け、分配機能を強化し、所得を引き上げる」として、格差是正を目指す令和版所得倍増計画を主張している。市場や民間任せではなく、政府が関与することで成長と所得の拡大、そして分配の好循環を後押しする。これまでの緊縮的な小さな政府から拡張的な大きな政府へ方針転換する。細田派・麻生派が中心となるリフレ政策でデフレ脱却を目指す議員連盟(ポストコロナの経済政策を考える議員連盟)に岸田氏も参加し、岸田派と両派が中心となる格差是正を目指す議員連盟(新たな資本主義を創る議員連盟)がある。経済対策の規模を数十兆円に拡大して量を確保し、増税は否定している。消費税率も今後10年程度は引き上げないとしている。成長と分配の好循環を強くすることを財政再建につなげるには10年程度の時間はかかるだろうから、それまでに消費税などの増税という安易な方法に走るのであれば、家計支援のコミットメントに対して無責任になってしまうから当然だ。そして、財政出動と金融緩和をしっかり続けると明言した。これまで消極的であった国債の大幅な増発も躊躇せず、強い財政出動が必要であると主張している。まずは低所得者や子育て世帯への給付金はすぐに実行するだろう。看護師、介護士、保育士などの国が影響を与えられる給与が引き上げられる。などの5年間で15兆円程度の防災と減災のための国土強靭化投資を計画する。科学技術の投資拡大のための10兆円程度の基金を設立する。予算の単年度主義の弊害を是正し、複数年度の視点を反映させることを検討することで、長期間で税収中立となる減税や支出で家計支援や企業刺激ができる余地が拡大する。財政拡大を含むアベノミクスの三本の矢の枠組みでデフレを脱却し、総所得を引き上げながら、所得分配を進める。経済成長なくして財政再建なしと、経済成長の果実を実らせることがまず重要だとしている。細田派と麻生派(岸田派と出身母体は一緒)に近づくことで、財政緊縮路線から財政拡大路線へ転換し、これまでの財政緊縮路線のイメージを払拭しようとしている。

他候補の政策も取り入れて自民党は一枚岩に

総裁選で善戦した候補が重く用いられることで、自民党が再び一枚岩になれるのかが、衆議院選挙の行方に影響を与える。岸田氏(1回目の得票率は34%)は善戦した高市氏(25%)との連合で河野氏(33%)に圧勝(決選投票60%)したことで、高市氏のサナエノミクスのリフレ政策を取り入れることになるだろう。一回目の投票で岸田氏が1位になったことは、自民党内での求心力を高めるだろう。候補者同士が激しく対立するこれまでの総裁選とは違い、対立候補を排除するなどして自民党内を分断することはせず、一丸となることは可能だろう。河野氏と高市氏が主張した政策も岸田内閣に取り入れられことは十分考えられる。河野氏は、所得の低い人に直接給付する「マイナスの所得税」というベーシックインカム的な政策にも理解を示している。労働分配率を引き上げた企業に対して法人税の優遇税率を適用し、人件費を増やした企業の法人税を減免する考えもあるようだ。高市氏は、アベノミクスの第三の矢の「民間活力を引き出す成長戦略」を、規制緩和を含む改革中心から、政府の投資中心へ転換し、総需要を拡大しながら成長戦略を推進することを主張している。2%の物価上昇目標を達成するまでは、プライマリーバランスの黒字化方針を時限的に凍結することも提案している。野田氏は、弱い立場の人々への最も温かい目線の政策を主張している。こども国債を財源とする子育てと教育支援の拡大や、すべての働く人に一律の給付金を行うことも提案している。岸田氏、河野氏、高市氏は成長志向であり、野田氏は成長の恩恵を幅広い層に広げることを主張している。

すべてが急変している今日、財政緊縮の古い考え方は通用しない

財政拡大で家計に所得を回し、強い総需要が強い総供給を作ることを目指すマクロ政策が中心になるとみられる。コスト削減などで強い総供給が強い総需要を作るというミクロ政策中心のこれまでの考え方とは逆になるとみられる。財政拡大のリフレ政策の基盤の上で、岸田氏の所得分配、高市氏の財政成長投資、河野氏の制度改革、そして野田氏の弱い立場の人々への目線が合わされば、日本経済はデフレ構造不況脱却に向けて強い推進力を得ることができるだろう。第四次産業革命や脱炭素などで、時代は大きく変わっている。すべてが急変している今日、財政収支の均衡や低い物価上昇率に拘る考え方や使い古された手法はもはや通用しないのかもしれない。新しい機会と問題に取り組むための、新しい考え方が必要なのだろう。古臭い拘りから脱し、高めの物価上昇率と財政赤字を容認しながらの経済政策で成長率を促進し、民間と公共を合わせた投資水準を引き上げられた国が勝ち組になるのだろう。政府投資をファイナンスするため、環境国債、教育国債、こども国債などの新たな形が生まれるかもしれない。

三段ロケットの経済対策

まずは大規模な経済対策が策定され、家計と企業への支援、そして医療体制の拡充が図られるだろう。財政支出で30兆円程度の補正予算が早急に組まれるだろう。野党が30兆円程度を主張する中、衆議院選挙で額が焦点になることを避けるため、それを大幅に下回る額にはできないだろう。マーケットの期待を下回れば、株式市場が不安定化し、国民の支持率にも悪影響となってしまう。時間の制約で30兆円程度の積み上げができない場合は、来年度の本予算や来年初の追加補正予算でその不足分を補充することになるだろう。新型コロナウィルス問題の終息までの時間がかかるとともに、負担がかかる企業と家計への支援も大きくなるという安心感が重要だ。新首相の誕生により11月に先送りされるとみられる衆議院選挙の前に、政府がこれまでの家計と企業への支援は十分だという突き放した姿勢から、大規模な経済対策で寄り添う姿勢への転換を示すことで、新たな内閣は国民の支持をつなぎとめるだろう。共産党を含む政権構想には難色が示され、野党が強固な連携をとることは難しく、総裁選を経て自民党の支持率は上昇しており、衆議院選挙で連立与党が過半数を維持できる可能性は高く、連立与党の政権は維持されるだろう。緊急事態宣言が解除されることも追い風だ。来年初の通常国会では、新型コロナウィルス問題が小さくなる中で、政府の成長戦略に基づいて、第四次産業革命や脱炭素を背景に、企業の投資活動を促進させるための再度の経済対策が策定されるだろう。そして、夏の参議院選挙前にも、景気回復を促進させる経済対策が策定されるとみる。三段ロケットの経済対策になると考える。

財政拡大でリフレ・サイクルを強くすることが必要

これまでの緊縮路線は新型コロナウィルスとの戦いで所得環境の悪化に苦しむ国民からの支持を失ったとみられ、緊縮路線では政権が長く持たないリスクが生まれる。政府が懐事情の厳しさを強調すればするほど、それ以上に厳しい懐事情の国民に寄り添っていないと感じるからだ。国民への支援を「ばらまき」と批判する意見も、新型コロナウィルスとの戦いで安全圏にいるか規制に守られている強者の論理だと受け入れられなくなっているだろう。政権の責任は国民の生活を支えることが主であり、財政再建は従で、国民が豊かになることにより財政再建も実現する。菅内閣に強い影響を与えた緊縮路線の政治プロセスと勢力は力を失うだろう。安定政権になるのかは、新型コロナウィルスの感染抑制の成否だけではなく、国民への所得分配につながる財政拡大へのブレない態度で、国民に寄り添う姿勢を見せ続けることができるのかにかかっている。岸田氏は、安易な正義感で財政再建を目指して緊縮路線をとったり、日銀の金融緩和の枠組みを引き締めと誤解されるようなものに変更する圧力をかけた場合、自民党内の求心力が低下し、期待された所得分配も成し遂げられず、急激な円高や株式市場が混乱するとともに国民の支持も失い、政権が短命となるリスクがあることは理解しているだろう。企業の貯蓄率と財政収支の合計であるネットの資金需要(GDP比、マイナスが強い)が市中のマネーが膨張する力、そして家計に所得が回る力であるリフレ・サイクルを示す。日本では、これまで消費税率引き上げを含む財政緊縮路線でネットの資金需要が消滅していて、市中のマネーが膨張できず、家計にも所得が回らなかった。新型コロナウィルス問題による財政拡大によりネットの資金需要が復活した。その強いネットの資金需要を財政拡大の継続で維持できれば、市中のマネーが膨張する力と家計に所得が回る力が日本経済のデフレ構造不況脱却への力となるだろう。

強い総供給を作る昭和の所得倍増計画

岸田氏は、令和版の所得倍増計画を提言している。昭和の所得倍増計画は、第二次世界大戦後に豊かな生活を目指す旺盛な需要を満たすため、企業の投資と雇用の拡大により供給能力を高めることで達成された。よって、限られた資本を民間と奪い合い、金利の上昇や、国際経常収支の赤字につながる財政の支出には厳しい目が向けられた。為替が固定相場制であり、国際経常収支の赤字は、為替レートを維持するため、民間の投資を抑制しなければならなくなる。昭和の所得倍増計画は、大きい総需要に総供給を追いつかせることで、所得倍増が達成されたことになる。企業の経済団体は、政府に健全な財政運営を強く求めてきた。未だに財政黒字に拘る古い考え方が残っているのは、この時の経験がイデオロギー化してしまったからだろう。

強い総需要を作る令和の所得倍増計画

昭和の所得倍増計画と令和の所得倍増計画は、経済環境が逆さまになっている。現在、投資に向けられる資本は潤沢にあり、投資活動が弱いのは生産性の劣る既得権益をもった企業が資金を囲い込むからではない。足らないのは総需要である。総需要が足りず、投資の期待リターンが低いため、企業は投資に躊躇してしまうことになる。投資が拡大しなければ、生産性は向上しない。緩和的な経済政策が非効率な「ゾンビ」を生んで生産性を下げるという議論も、典型的な強者の論理である。すべてが急変している今日、総需要が停滞している環境で「ゾンビ」になる危機感を持たない企業は少なく、緩和的な経済政策が転換すれば、「ゾンビ」への不安が投資を抑制し、生産性は更に下がるだろう。岸田氏が主張する令和の所得倍増計画では、財政を拡大し、家計に所得を回すことがまず必要になる。消費が増加することで、投資の期待リターンが上昇し、企業は刺激されて投資を拡大するようになる。企業の投資がイノベーションを生み、生産性が上昇し、雇用は拡大し、実質賃金も増加する。令和の所得倍増計画では、総需要と総供給が相乗効果でともに増加する好循環が生まれ達成される。企業の投資不足による過剰貯蓄が総需要を破壊する力となり、日本経済はデフレをともなう縮小均衡に苦しんできた。企業の投資が拡大すれば、デフレ脱却だけではなく、財政再建にもつながる。更に、実質所得が大きく増加すれば、家計は楽観的になり、少子化も緩和できるかもしれない。日本は疲弊した家計を、財政拡大で支援することがデフレ脱却のために急務になっている。小泉改革以降の新自由主義的政策から所得分配の政策へ転換する岸田氏の考え方は正しい。ただ、政府の負担を懸念して、財政拡大なしで増税のみの強引な所得分配は、経済とマーケットに縮小圧力をかけるリスクがあるので注意だ。

格差是正に経済成長は必要

岸田氏の所得分配を考慮しながらの経済成長を重視する考え方は正しいだろう。経済成長のない状態は、自分が所得を増やし豊かになることが、他の人の所得を奪い貧しくすることを意味する。パイの奪い合いというギスギスした状態が社会不安のリスクとなる。弱い立場の人々はパイの奪い合いでも不利な立場にあるため、更にパイが奪われ、格差が広がってしまうだろう。成長の果実が豊かな人に偏って所得格差が広がってしまっていることは、成長を否定すべきという議論にはつながらないはずだ。成長を否定するのではなく、財政拡大によって、成長の果実が弱い立場の人々にもいきわたる政策が必要だろう。

インフレ経済下の処方箋はサプライサイド

インフレ経済下の通常の経済分析では、最終需要である家計の貯蓄率からの因果関係が重要視される。貯蓄・投資バランスの残差として、企業貯蓄率が決定され、注目されない。一方、デフレ経済下では、金利がほぼゼロ%となり、企業が過剰貯蓄を抱えている状態で、企業活動の強弱が景気サイクルを決めていると考えられ、企業貯蓄率はその代理変数となる。企業の過剰貯蓄をオフセットすべき政府の支出が弱く、企業の貯蓄率と財政収支の合計であるネットの資金需要(GDP比、マイナスが強い)が消滅している状態が長く続き、家計への資金の流れが弱くなってしまったため、家計は弱体化し、企業と政府の動きに対する反応関数となり、自律的な動きがなくなってしまった。企業貯蓄率から家計貯蓄率への因果関係が強いことの前提が、デフレ経済下の分析には必要となる。インフレとデフレの因果関係の方向感が一方的に強くなり、インフレやデフレの問題が深刻になると、その負荷は最後のところに大きくかかることになる。インフレ経済下では企業、そしてデフレ経済下では家計に極端な負荷がかかる。この負荷が大きくかかった部分が改善しないかぎり、因果関係をひっくり返し、インフレやデフレの問題を解消することはできない。1980年代にインフレで苦しんだ米国や英国が、レーガノミクスやサッチャリズムというサプライサイドの政策で企業を支えたことは理にかなっていた。

デフレ経済下の処方箋は真逆でディマンドサイド

インフレ経済下の処方箋を単純に真似して、デフレ経済下の日本で規制緩和などの構造改革で企業ばかり刺激しようとしても、家計が疲弊して総需要が極めて弱いので、企業の投資の期待リターンは一向に上がらず、企業の投資活動は強くならず、経済政策の果実は実らない。日本は疲弊した家計を、財政拡大で支援することがデフレ脱却のために急務になっている。まずはディマンドサイドを強くする必要がある。足らないのは総需要である。総需要が足りず、投資の期待リターンが低いため、企業は投資に躊躇してしまうことになる。アベノミクスを強化する形で財政を拡大し、家計に所得を回すことがまず必要になる。消費が増加することで、投資の期待リターンが上昇し、企業は刺激されて投資を拡大するようになる。企業の投資がイノベーションを生み、生産性が上昇し、雇用は拡大し、実質賃金も増加する。総需要と総供給が相乗効果でともに増加する好循環が生まれる。インフレ経済下の処方箋が効いた経験を持つ海外投資家の評価を期待して、規制緩和を含む構造改革のみを推進しても、財政拡大による家計支援で総需要を拡大しなければ、デフレ構造不況は脱却できず、結局のところ海外投資家の失望を生み、日本の株式市場の上昇は持続的にはならないだろう。

デフレ構造不況脱却には設備投資サイクルの上振れが必要

日本経済がデフレ構造不況を脱却するには、設備投資サイクルの上振れが必要である。設備投資サイクルの低く固い天井は、日本企業の長期的な成長期待と収益期待が低いままであったことを表しているからだ。バブル崩壊後になかなか打ち破ることのできなかった実質設備投資のGDP比の17%弱の天井を打ち破ることが、デフレ構造不況からの脱却の転換点となる。設備投資サイクルが天井の突破に向けて動き出すことで、企業の長期的な成長期待と収益期待がついに上昇したことが意識されるからだ。労働需給逼迫などによる生産性と収益率の向上の必要性、第四次産業革命を背景としたAI・IoT・ロボティクスを含む技術革新、遅れていた中小企業のIT投資、老朽化の進んだ構造物の建て替え、都市再生、研究開発、そして新型コロナウィルス感染拡大後の新常態への適応などの投資テーマがある。コロナショック下でのIT技術の活用の経験がイノベーションを促進するかもしれない。企業の設備投資がけん引役となることで、企業の新たな商品・サービスの投入が消費を刺激する好循環が、景気を緩慢なU字型から強いV字型に進展させることができるだろう。

プライマリーバランスの黒字化目標は棚上げに

財政政策はこれまでの緊縮路線から拡大路線に向かっていくことが、総需要拡大と財政資金の投資による支援を含め、設備投資サイクルの上振れという転換点への動きを後押しするだろう。今後は、規制緩和を含むコスト削減中心の改革から、政府の投資中心の改革へ転換し、総需要を拡大しながら成長戦略を推進することになるだろう。財政拡大をともなう所得分配で、家計に所得を回し、総需要を拡大し、政府も成長戦略に基づき財政資金を投入することで、企業の投資のファイナンスを支援するとともに、グリーンやデジタルなどの投資フィールドを活性化し、企業の投資の期待リターンを上昇させ、企業の投資を拡大するアプローチは重要だ。規制緩和を含む構造改革を推進しようとしても、これまでは家計が疲弊していて総需要が足りず、投資の期待リターンが低いため、企業は投資に躊躇してしまうことになっていた。第四次産業革命や脱炭素、そしてサプライチェーンの強化という強い中長期的な投資テーマが存在し、成長戦略に基づく財政資金の投資の方向性は定めやすいだろう。成長戦略に基づいた政府の投資拡大には、プライマリーバランスの黒字化目標は障害となる。財政緊縮から財政拡大への一連の転換の中で、2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標が棚上げされれば、財政政策の束縛がなくなり、株式市場にとってはポジティブ・サプライズになるかもしれない。そして、昨年に財務省で検討されたとの報道のあった先進国の財政運営としては異常な60年償還ルールの撤廃が実現すれば、政府の債務をどうやって現金償還していくのかという不安がもたらす財政規律に対する強迫観念が緩和されるかもしれない。その場合、減債として債務の返済に回っている消費税の4分の1程度が新たな財源となる。

バブル崩壊後の30年間で初めての転換点に

まずは大規模な経済対策を策定し、デフレ構造不況脱却までの財政拡大のコミットメントを強くし、マーケットが転換を確信した時、株式市場の水準は切り上がるだろう。鵺的な「改革期待」で株式市場の水準が切り上がっても、改革を現実的なものにする財政拡大がなければ、好調な株式市場は持続せず、失望となるリスクがある。そして、総需要の拡大と成長戦略で企業活動が刺激されることで設備投資サイクルが上振れ、企業の長期的な成長期待と収益期待がついに上昇したことが意識され、国民への所得分配につながる財政拡大への態度がブレなければ、デフレ構造不況からの脱却の機運で、景気拡大と株価上昇は加速していく可能性がある。バブル崩壊後の30年間で初めての転換点となる。プライマリーバランスの黒字化目標の棚上げ、先進国の財政運営として異常な60年国債償還ルールの撤廃、そして過去の借金の返済に回ってしまっている消費税の四分の一程度の部分の財源化で、財政拡大の可能性を広げる動きがあるかもしれない。一方、インフレ経済下の効率化の処方箋である規制緩和やコスト削減を中心とする構造改革の進展のみが期待されても、総需要の拡大と成長戦略が作用する設備投資サイクルが上振れるまでに、財政政策が拡大路線からコロナ増税などで緊縮路線に再び回帰してしまえば、デフレ経済下で最も重要な家計支援による総需要拡大の力がなく構造改革は果実を実らせることはできず、期待で上昇した株式市場には大きな失望が生まれるだろう。家計と企業への支援を大きくして、国民に寄り添う形を鮮明にすることが、政治の安定だけではなく、リフレ・サイクルの強さを維持し、日本の株式市場が上振れるための条件であると考える。自民党内の主導権がこれまでの主流派のミクロ政策からリフレ派のマクロ政策に再び移り、財政政策はこれまでの緊縮路線から拡大路線に向かっていくことで、堅調なリフレ・サイクルが、日銀の緩和的な金融政策とともに、デフレ完全脱却まで継続する可能性が高いと考える。

図1:リフレ・サイクルを示すネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)

リフレ・サイクルを示すネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
(画像=内閣府、日銀、岡三証券 作成:岡三証券)

図2:設備投資サイクルを示す実質設備投資GDP比

設備投資サイクルを示す実質設備投資GDP比
(画像=内閣府、日銀、岡三証券 作成:岡三証券)

図3:インフレ経済下の因果関係の方向

インフレ経済下の因果関係の方向
(画像=岡三証券)

図4:デフレ経済下の因果関係の方向

デフレ経済下の因果関係の方向
(画像=岡三証券)

田キャノンの政策ウォッチ:岸田氏の主張と経済対策のメニュー

l 小泉改革以降の新自由主義的政策を転換。

l デフレ脱却が最大のマクロ政策の目標。

l 予算の単年度主義の弊害是正、複数年度の視点反映検討。

l 所得税負担率が1億円以上の高所得者層になると低下するのは是正すべき。金融所得税制を考え直す必要がある。中間層の復活へ。

l 令和版所得倍増計画の推進。看護師らの所得引き上げを実現する。

l 2%の物価目標は世界標準であり、変えるとおかしななメッセージになる。

l 数十兆円の規模の経済対策を速やかに実施する。

l 分配を重視した日本型資本主義を構築。

l 大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略のアベノミクスの継承。

l 公衆衛生上の危機発生時に強い指揮権限を有する「健康危機管理庁」創設の提唱。

l 国が主導して野戦病院などを開設、大規模宿泊施設を借り上げ。

l 財政出動や金融緩和をしっかり進める、続ける。

l 経済あっての財政。経済正常化はかり財政健全化も考える。

l 成長なくして分配なし、分配なくして消費需要も盛り上がらず、経済成長も実現できない。

l 消費減税は決して否定しない。消費税は当面触らない。

l 原発はクリーンエネルギーの選択肢。原発の新増設の前に、既存の原発の再稼働を進めることが大切。

l 年明けに通常に近い経済活動を取り戻すことを目標にする。

l 来年春までを見通せる家賃支援給付金、持続化給付金の再支給。地域や業種を限定しない。

l (一律給付金については)コロナで悲鳴をあげている方がいる一方、巣ごもり需要の影響を受けている方もいる。

l 予約不要の無料PCR検査所を拡大。

l 半導体などの重要物資に関する経済安全保障推進法を作成、経済安全保障担当の専任大臣を設置。

l 経済対策のパッケージを示し、補正予算など財源はその後検討する。

l 正規・非正規にかかわらず、企業で働くすべての人が社会保険に入れるようにする。

l 子育て支援のための住居・教育費支援。

公明党の主張

l 2021年衆院選に向けた重点政策。

l 0歳〜高校3年生までの全ての子供たちに一律10万円給付。財源は2兆円程度、2021年度補正予算に費用を計上し、2022年早期の給付を目指す。国の2020年度決算で生じた剰余金の活用を想定するが、足りない場合は国債発行を検討。

l 結婚時の住宅資金の経済的支援。

l 出産育児一時金(現行42万円)の50万円への増額

l 0〜2歳児の産後ケアや家事・育児サービスを拡充。

l 0〜2歳児の保育料無償化の対象を全世帯に拡大。

l 高校3年生まで医療費無償化を目指す。

l 私立高校授業料実質無償化の対象拡大。

l 高校生等少額給付金の増額、対象拡大。

l 大学など高等教育無償化の対象拡大。

l マイナンバーカードの取得で数万円分のポイントを付与する、新たなマイナポイント事業の創設。

l 全小学校区でのデジタル活用支援員によるスマホ教室の開催。

l 先端半導体の生産拠点の整備、データセンターの最適配置。

l 2兆円のグリーンイノベーション基金を活用した革新的な技術や製品の開発支援。

l 中小企業の設備投資を支援するグリーン・デジタルトランスフォーメーション補助金(仮称)の創設。

l 事業再構築補助金の大幅な拡充。

l クリーンエネルギー自動車の購入補助、充電スタンドや水素ステーションの計画的な整備。

l グリーン住宅ポイント制度の拡充、家庭用太陽パネルや蓄電池の導入支援。

l 環境に配慮した行動にポイント付与する制度の創設。

l 求職者支援制度を拡充。

l 賃上げや賃金格差の是正など家計の所得向上の推進。

l 新・Go To キャンペーン(仮称)の実施。

l タクシー・公共交通機関の利用補助や割引で、地域住民の移動不便を解消。

l 奨学金返還支援制度の全国展開。

経済対策の想定されるメニュー

l 医療への支援:感染症対応の医療提供体制を強化し、病床が最大限活用される流れを確保。感染者急増時には、専門病床を一時的に増やす緊急時対応の構築。感染症患者を受け入れる医療機関への経営上の支援や病床確保の支援。

l 教育・科学技術・インフラ投資:本年度中に運用開始する大学ファンドの規模を拡大。

l 家計支援(子育て支援):子ども庁創設。子ども・子育て支援の拡充、住居費の支援拡充。幼稚園・保育所一元化を目玉政策に。出産費用助成の拡充。高校生の医療費の無償化。大学・専門学校等においてデータサイエンス教育の拡充。非正規雇用から正規雇用への労働移動の支援。

l 成長戦略:先端半導体の設計や製造技術の開発を、研究開発基金などで積極的に支援することや、先端半導体の生産拠点の日本への立地を推進して、確実な供給体制の構築。

l 脱炭素:再生可能エネルギーの主力電源化を徹底、国民負担の抑制と地域共生を図りながら支援。急速充電設備の設置による電気自動車の普及拡大。

l デジタルトランスフォーメーション:5G整備計画を税制支援も通じて加速。データセンターの国内立地・新規拠点整備。

l サイバーセキュリティ:サイバー攻撃に対応する技術開発、人材育成、産学官連携拠点の形成。

l 企業支援:緊急事態宣言の休業対象である酒類事業者などを支援。賃上げ促進のため、「事業再構築補助金」を拡充。事業継続や事業再構築を支援したり、企業の財務基盤強化のため、資本性資金の供給や優先株の引き受けを更に推進。雇用調整助成金等の特例措置の継続や拡充。飲食・宿泊業などへの支援金の拡充。

経済対策のより能動的なメニュー

l 給付金 特別定額給付金の第2弾、家賃や通信料などの固定費支援

l 減税、支払い猶予、税還付、減免 消費税、所得税、住民税、社会保険料、法人税、公共料金

l 雇用支援 賃金助成金、所得損失補填、失業保険の拡充

l 子育て支援 若い子育て世帯の住居費や教育費の支援強化、学校の一斉休業に伴う臨時的な休業手当、仕事を休めない親に無料保育

l ワクチンパスポート ワクチン接種のインセンティブの策定

・本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特定の投 資目的、または要望を考慮しているものではありません。また、本レポート中の記載内容、数値、図表等は、本レポート作成時点のものであり、事前の連絡なしに変更される場合があります。なお、本レポートに記載されたいかなる内容も、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。

岡三証券チーフエコノミスト
会田卓司

岡三証券エコノミスト
田 未来