シンカー:衆議院選挙では、自民党単独で絶対安定多数の議席を獲得して連立与党が勝利し、岸田新内閣が信任された。岸田内閣の経済政策は、これまでの「新自由主義」型アベノミクスであるスガノミクスから、「分配・成長(新しい資本主義)」型アベノミクスであるキシダノミクスに変化し、不完全であったリフレ政策が家計に所得を回すようなより完成したもの(アベノミクス2.0)になるだろう。新たな「分配・成長」型のアベノミクスは、「金融政策=財政拡大との合わせ技の緩和で2%の物価目標を目指す」、「財政政策=成長による増収を家計に分配することで、財政の複数年度主義に基づき、しばらくは十分な財政赤字を維持する大きな政府」、「成長戦略=政府の成長投資と所得分配で企業と家計を支えて総需要と総供給の相乗効果の拡大」となるだろう。岸田内閣の成長戦略は、規制緩和を含むコスト削減中心の改革から、政府の投資中心の改革へ転換する。財政資金を使わない効率化のミクロ改革から、財政資金を使う投資と分配のマクロ改革に軸を移す。前者は主に総供給のみに働くが、後者は総供給と総需要の両方に働く。政府の成長投資として財政資金を投入することでグリーンやデジタル、先端科学技術などの投資フィールドをニューフロンティアとして活性化する新しい形の成長戦略に力を入れることになる。岸田内閣の家計への分配は、給付金などのミクロなものに加え、市中のマネーを拡大する力(リフレ・サイクル)と家計に所得を回す力であるネットの資金需要の財政と企業の支出での拡大を通したマクロのものが主となる。総裁選のすべての候補の主張を取り入れた衆議院選挙の公約は成長戦略として力がある。総裁選の岸田前政調会長と4人の合作の選挙公約に乗った岸田首相は違うと見るべきだ。あとはどれだけ大きな予算をつけられるかだろう。予算のつかない成長戦略は動かない。衆議院選挙の勝利で推進力を得た岸田内閣は、家計と企業への支援、医療体制の拡充、そして成長投資を含む、30兆円程度の補正予算を国会で速やかに可決させるだろう。更に、来年初の通常国会、夏の参議院選挙前にも、政府の成長投資の拡大や景気回復の促進を含む経済対策を策定するだろう。三段ロケットの経済対策で「成長・分配の好循環」に推進力を短期間で与え、公約の着実な実現で内閣の支持率を上げ、参議院選挙での勝利を目指すだろう。新たな政策は未来への投資であるため、財源は主に国債で、必ずしも増税や他の支出の削減が必要であるとは考えず、政策の実行が最優先で、その足かせとなる不毛な財源論からは距離をおくことになろう。「成長と分配の好循環」が確立するまで、2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標は先送りされるだろう。株式市場は、政府の投資中心の改革と家計に所得を回す力を生み出す財政政策の相乗効果で将来の成長と収益の期待が高まることを過小評価している。三段ロケットの経済対策で「成長と分配の好循環」に強い推進力が与えられれば、株式市場の過小評価は修正され、公約の着実な実現で内閣の支持率は上昇し、参議院選挙で連立与党は勝利することができるだろう。自民党の衆議院選挙の公約で最も力が入っていたのは、成長投資のメニューである。このメニューの周りには、官民一体となったマネーが集まっていくことで、株式市場の投資テーマになっていくだろう。一方、財政再建に拘り、経済対策が過小で公約が実現できず、株式市場の過小評価が残れば、参議院選挙で連立与党が惨敗し、岸田内閣が短命政権となるリスクになる。

衆議院選挙では、自民党単独で絶対安定多数の議席を獲得して、公明党との連立与党が勝利し、岸田新内閣が信任された。これまでの総裁選と違い、候補者が分裂せず、衆議院選挙の公約にすべての候補の主張を取り入れて自民党が一丸となったことが、無党派層に分類されるソフトな支持層を野党に流れさせず、勝利へとつながったのだろう。自民党の公約には、岸田氏の分配政策、河野氏の制度改革、高市氏の成長投資、そして野田氏の少子化対策がしっかり盛り込まれている。総裁選のすべての候補の主張を取り入れた公約は成長戦略として力がある。総裁選の岸田前政調会長と4人の合作の選挙公約に乗った岸田首相は違うと見るべきだ。甘利自民党幹事長(小選挙区敗退、比例代表で当選)が辞任することになりそうだが、経済政策に大きな変化はないとみる。甘利氏が重視する経済安全保障から岸田首相が重視する分配と成長投資の政策にやや軸が傾くかもしれない。衆議院選挙の勝利後に新たな幹事長を任命することで、岸田首相の自民党の中での政治力が強くなるだろう。自民党の税制調査会に強い影響力をもった財政緊縮派の野田毅氏が敗退した。第二党の立憲民主党は議席を減らした。一方、ベーシックインカムを主張していた日本維新の会が第三党に躍進し、分配と成長投資の政策で連立与党は強行せず、野党との接点を見つけながらの国会運営をしやすくなった。岸田首相が財源論に捉われず、分配と成長投資の政策を推進しやすくなったとみる。野党の共闘で苦戦した小選挙区も多いため、来年夏の参議院選挙に向けての自民党の危機感は維持され、大規模な経済政策による家計支援の継続が急務であると考えるだろう。

岸田内閣の経済政策は、これまでの「新自由主義」型アベノミクスであるスガノミクスから、「分配・成長(新しい資本主義)」型アベノミクスであるキシダノミクスに変化し、不完全であったリフレ政策が家計に所得を回すようなより完成したもの(アベノミクス2.0)になるだろう。これまでの「新自由主義」型アベノミクスは、「金融政策=異次元緩和のみで2%の物価目標を目指す」、「財政政策=プライマリーバランス黒字化目標重視による、財政の単年度主義に基づく小さな政府」、「成長戦略=規制緩和やコスト削減による総供給の効率化」であった。新たな「分配・成長」型のアベノミクスは、「金融政策=財政拡大との合わせ技の緩和で2%の物価目標を目指す」、「財政政策=成長による増収を家計に分配することで、財政の複数年度主義に基づき、しばらくは十分な財政赤字を維持する大きな政府」、「成長戦略=政府の成長投資と所得分配で企業と家計を支えて総需要と総供給の相乗効果の拡大」となるだろう。来年夏の参議院選挙に向けて、新しい資本主義に基づき財政支出による分配と成長投資で、国民の生活を豊かにし、経済成長のきっかけをつかむ結果を残すことを目指す。

岸田内閣の成長戦略は、規制緩和を含むコスト削減中心の改革から、政府の投資中心の改革へ転換する。財政資金を使わない効率化のミクロ改革から、財政資金を使う投資と分配のマクロ改革に軸を移す。前者は主に総供給のみに働くが、後者は総供給と総需要の両方に働く。政府の成長投資として財政資金を投入することでグリーンやデジタル、先端科学技術などの投資フィールドをニューフロンティアとして活性化する新しい形の成長戦略に力を入れることになる。企業の投資ファイナンスを支援する緩和的な金融環境を維持するため、日銀は粘り強く現行の金融緩和政策を継続するだろう。政府・日銀ともに2%の物価目標の達成は時間はかかるが可能であると考えており、政府・日銀が連携していく共同声明は維持されるだろう。

これまでは財政政策が緊縮で、日銀の異次元の金融緩和のみで2%の物価目標を目指していた。これからは、金融緩和効果を強くする財政政策との合わせ技で目標を目指すことになり、より実現の可能性が高まるだろう。日銀がマネタイズすることで金融緩和効果が高まるネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)が復活した状態が続き、市中のマネーを拡大する力(リフレ・サイクル)、家計に所得を回す力が後押しとなる。株式市場は、政府の投資中心の改革と家計に所得を回す力を生み出す財政政策の相乗効果で将来の成長と収益の期待が高まることを過小評価している。岸田内閣の家計への分配は、給付金などのミクロなものに加え、市中のマネーを拡大する力と家計に所得を回す力であるネットの資金需要を財政と企業の支出で拡大させるマクロのものが主となる。

新型コロナ対策の財政拡大で復活させたネットの資金需要を、政府負担の財政支出による所得分配と成長投資で十分な水準に維持し、リフレ・サイクルと家計に所得を回す力を強くしていく。リフレ・サイクルと家計に所得を回す力が強くなることは、疲弊した家計を立て直し、消費意欲を向上させることなどで、企業の投資に対する期待リターンを増加させる。これまでは家計に所得を回す力であるネットの資金需要が消滅していて、家計が疲弊して消費は強くならず、期待リターンは抑制されていた。グリーンやデジタル、先端科学技術などの投資フィールドをニューフロンティアとして政府の成長投資で拡大することで、企業の投資を活性化することができるだろう。財政拡大によるネットの資金需要の復活が所得分配の力と金融緩和の効果を強くし、市中のマネーの拡大として株式市場を押し上げる。そして、ニューフロンティアの拡大で企業の投資行動が強くなれば、ネットの資金需要の中身は政府から企業に移行し、「成長と分配の好循環」が生まれる。

自民党の衆議院選挙の公約で最も力が入っていたのは、成長投資のメニューである。「成長投資とは、日本に強みのある技術分野を更に強化し、新分野も含めて研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うこと」と定義している。あとはどれだけ大きな予算をつけられるかだろう。予算のつかない成長戦略は動かない。このメニューの周りには、官民一体となったマネーが集まっていくことで、株式市場の投資テーマになっていくだろう。分配は経済の効率性を低下させるので株式市場にはネガティブだというのは間違っている。日本では不足している家計への所得分配を財政支出で促進することが「成長と分配の好循環」の起点となる。岸田内閣の成長戦略は、分配政策で家計に所得を十分に回して消費を増加させることと、政府の成長投資を呼び水として投資フィールドをニューフロンティアとして活性化させることで、投資の期待リターンを上昇させ、企業が刺激されて投資を拡大するようにすることで達成する。これまでは家計への分配がなく、投資に消費が反応できなかったことで、投資の期待リターンを押し下げていた。官・民一体となった投資拡大で、資本ストックの積み上げ(資本投入量の増加)を目指す。企業の投資がイノベーションを生み、生産性が上昇し、雇用は拡大し、実質賃金も増加する。資本蓄積に全要素生産性を加えたものが労働生産性であり、労働生産性の向上は賃金上昇につながる。

まとめると、株式市場のキシダノミクスに対する過小評価の原因は三つの誤解である。一つ目の誤解は、キシダノミクスはアベノミクスのリフレ政策から距離をおくことになるということだ。アベノミクスの大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の枠組み(三本の矢)は、「新自由主義」モデルと「分配・成長」モデルを包含する上位概念であり、リフレ政策の枠組みに変化はなく、引き続き2%の物価目標を目指す。二つ目の誤解は、岸田内閣は変化より安定を重視しているということだ。これまでの「新自由主義」モデルの小さなミクロ政策の積み上げではなく、「分配・成長」モデルの政府投資を含むマクロ政策で経済を一変させようとする、より大きな改革が行われることになる。三つ目は、岸田内閣の分配政策は経済の効率化に逆行し、株式市場にネガティブだという誤解だ。不足している家計への所得分配を財政支出で促進することで、疲弊していた家計を立て直し、消費意欲を向上させることなどで、企業の投資に対する期待リターンが上昇するため、政府投資の拡大との相乗効果で、企業の投資が拡大し、将来の成長と収益の期待が高まる。

衆議院選挙の勝利で推進力を得た岸田内閣は、家計と企業への支援、医療体制の拡充、そして成長投資を含む、30兆円程度の補正予算を国会で速やかに可決させるだろう。公明党が主張する0歳〜高3生まで一律10万円相当を支援する「未来応援給付」と、マイナンバーカード普及へ1人あたり一律3万円相当の「新マイナポイント制度」の創設は実施される可能性が高い。時間の制約で30兆円程度への政策の積み上げができない場合は、来年度の本予算や来年初の追加補正予算でその不足分を補充することになるだろう。来年初の通常国会では、新型コロナウィルス問題が小さくなる中で、成長戦略に基づく政府の成長投資の拡大や、第四次産業革命や脱炭素を背景に企業の投資活動を促進させるための再度の経済対策が策定されるだろう。そして、夏の参議院選挙前にも、景気回復を促進させる経済対策が策定されるとみる。三段ロケットの経済対策で「成長と分配の好循環」に推進力を短期間で与え、公約の着実な実現で内閣の支持率を上げ、参議院選挙での勝利を目指すだろう。このロケットの段階とともに、株式市場のキシダノミクスに対する過小評価は修正され、株式市場には徐々に上昇圧力がかかっていくだろう。

新たな政策は未来への投資であるため、財源は主に国債で、必ずしも増税や他の支出の削減が必要であるとは考えず、政策の実行が最優先で、その足かせとなる不毛な財源論からは距離をおくことになろう。岸田首相は、新たな政策の財源は成長であると述べている。成長が税収を生んでも、2025年度のプライマリーバランスの黒字化を目指すのであれば、過去の債務の返済に回ることになり、成長は財源にはならない。「成長と分配の好循環」が確立するまで、プライマリーバランスの黒字化目標は先送りされるだろう。株式市場の上昇とともに、債券市場では10年金利が日銀の許容レンジである25bpに向けて上昇していく力が生まれるだろう。米金利の上昇に比べれば、微々たるもので、金利差拡大で更に円安が進む可能性がある。円安は2%の物価目標への動きに追い風であり、為替市場は財務省の管轄で、更なる円安となっても日銀が強く牽制することはないだろう。円安の家計と企業の負担は政府の経済対策による支援で支えることになるだろう。三段ロケットの経済対策で「成長と分配の好循環」に推進力が与えられれば、株式市場の過小評価は修正され、公約の着実な実現で内閣の支持率は上昇し、参議院選挙で連立与党は勝利することができるだろう。一方、財政再建に拘り、経済対策が過小で公約が実現できず、株式市場の過小評価が残れば、参議院選挙で連立与党が惨敗し、岸田内閣が短命政権となるリスクになる。

表:スガノミクスからキシダノミクスへ

スガノミクスからキシダノミクスへ
(画像=作成:岡三証券)

図:リフレ・サイクルと家計に所得を回す力を示すネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)

リフレ・サイクルと家計に所得を回す力を示すネットの資金需要(企業貯蓄率+財政収支)
(画像=出所:内閣府、日銀、岡三証券 作成:岡三証券)

表:自民党の衆議院選挙の公約

l 来年春までを見通せるよう、地域・業種を限定しない事業継続・事業再構築支援を、事業規模に応じて実施。

l 飲食、宿泊、文化芸術・エンターテインメント、地域公共交通・航空・観光等などの業種の事業継続を支援。

l 雇用調整助成金や在籍型出向により、雇用と暮らしを守る。

l 非正規雇用者・女性・子育て世帯・学生などコロナで困窮している者への経済的支援。

l 金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略を総動員し、成長の軌道に乗せます。

l DXをはじめ、時代の要請に応える規制改革を大胆に進める。

l 財政の単年度主義の弊害を是正。

l 企業に長期的視点を求めることと同様、政府も国家課題に長期的・計画的に取り組む。

l 大胆な成長投資で、確かな未来を拓く。

l 労働分配率の向上に向けて、賃上げに積極的な企業への税制支援。

l 四半期開示を見直し、長期的な研究開発や人材投資を促進。

l 待機児童の減少、病児保育の拡充、児童手当の強化。

l 育児や介護をしながら働く世帯へ経済支援。

l 看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士などの賃金の原資が公的に決まる方々の所得向上。

l 農業・農村の所得増大を目指す。

l マイナンバー利活用の推進。

l 10兆円規模の大学ファンドを2022年度までに実現。

出所:自民党 作成:岡三証券

表:自民党の衆議院選挙の公約の中の成長投資

(成長投資とは、日本に強みある技術分野を更に強化し、新分野も含めて研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うこと。)

l 小型衛星コンステレーション等の衛星・ロケット新技術の開発や、政府調達を通じたベンチャー支援等により、宇宙産業の倍増を目指します。

l 宇宙・海洋資源、G空間、バイオ、コンテンツなど、新たな産業フロンティアを官民挙げて切り拓きます。

l 日本に強みがあるロボット、マテリアル、半導体、量子(基礎理論・基盤技術)、電磁波、電子顕微鏡、核磁気共鳴装置、アニメ・ゲームなど多様な分野につき、技術成果の有効活用、人材育成、国際競争力強化に向けた戦略的支援を行います。

l 産学官におけるAIの活用による生産性の向上や高付加価値な財・サービスの創出、5Gの全国展開、6Gの研究開発と社会実装を推進します。

l 国産量子コンピュータの開発に取り組むとともに、量子暗号通信、量子計測・センシング、量子マテリアル、量子シミュレーションなどの技術領域を支援します。

l 2030年度温室効果ガス46%削減、2050年カーボンニュートラル実現に向け、企業や国民が挑戦しやすい環境をつくるため、2兆円基金、投資促進税制、規制改革など、あらゆる政策を総動員します。

l カーボンニュートラルによる環境と経済の好循環実現のため、エネルギー効率の向上、安全が確認された原子力発電所の再稼働や自動車の電動化の推進、蓄電池、水素、SMR(小型モジュール炉)の地下立地、合成燃料等のカーボンリサイクル技術など、クリーン・エネルギーへの投資を積極的に後押しします。

l 究極のクリーン・エネルギーである核融合(ウランとプルトニウムが不要で、高レベル放射性廃棄物が出ない高効率発電)開発を国を挙げて推進し、次世代の安定供給電源の柱として実用化を目指します。

l 日本に世界・アジアの国際金融ハブとしての国際金融都市を確立するべく、海外金融機関や専門人材の受け入れ環境整備を加速させ、コーポレート・ガバナンス改革、取引所の市場構造改革、金融分野のデジタル化の推進などを通じて、資本市場の魅力向上を図ります。公平・公正・透明な金融市場への適正化を図り、金融商品に対する信頼確保に努めます。

l 未来の成長を生み出す民間投資を喚起するため、現下のゼロ金利環境を最大限に活かし、財政投融資を積極的に活用します。

l オープンイノベーションへの税制優遇、研究開発への投資、政府調達など、スタートアップへの徹底的な支援を行います。

l インフラの老朽化対策、地域の移動を支える地域交通や都市を結ぶ高速交通のネットワークの維持・活性化、地域での連携・協働の支援に取り組みます。

出所:自民党 作成:岡三証券

表:公明党の衆議院選挙の公約

l 0歳〜高3生まで一律10万円相当を支援する「未来応援給付」。

l 出産育児一時金の50万円への増額。

l 高3生まで医療無償化をめざす。

l マイナンバーカード普及へ1人あたり一律3万円相当の「新マイナポイント制度」創設。

l 新・Go To キャンペーン(仮称)。

l 最低賃金の年率3%引き上げ、所得拡大促進税制等の推進。

l 高等教育の無償化の対象を拡大。

l 求職者支援制度を拡充。

l 中小・小規模事業者への支援を強化。

l 緊急告知資金等の特例貸付、住居確保給付金の再支給、自立支援金の申請期限延長や支給要件緩和。

l 生活困窮者の生活を守る給付金の支給を検討。

l 生活困窮者など住宅確保に困難を抱える方に住宅手当を創設。

出所:公明党 作成:岡三証券

田キャノンの政策ウォッチ:三段ロケットの経済対策の想定されるメニュー

衆議院選挙で自民党単独で絶対安定多数の議席を確保した岸田内閣は、2022年夏の参議院選挙でも過半数を確保するために、景気回復促進のサポートを続ける必要がある。岸田内閣は2021年秋、2022年初、2022年夏までに三段ロケットの経済対策が実施されるだろう。以下では、三段ロケットの経済対策の想定されるメニューをリストアップする。

表:三段ロケットの経済対策の想定されるメニュー

l 医療への支援
感染症対応の医療提供体制を強化し、病床が最大限活用される流れを確保。感染症患者を受け入れる医療機関の支援や病床確保の支援。

l 教育・科学技術・インフラ投資
本年度中に運用開始する大学ファンドの規模を拡大。

l 家計支援(子育て支援)
子ども庁創設。子ども・子育て支援の拡充、住居費の支援拡充。幼稚園・保育所一元化。出産費用助成の拡充。高校生医療費の無償化。大学・専門学校等においてデータサイエンス教育の拡充。非正規雇用から正規雇用への労働移動の支援。

l 成長戦略
先端半導体の設計や製造技術の開発を、研究開発基金などで積極的に支援することや、先端半導体の生産拠点の日本への立地を推進。

l 脱炭素
再生可能エネルギーの主力電源化、国民負担の抑制と地域共生を図りながら支援。急速充電設備の設置による電気自動車の普及拡大。

l デジタルトランスフォーメーション
5G整備計画を税制支援も通じて加速。データセンターの国内立地・新規拠点整備。

l サイバーセキュリティ
サイバー攻撃に対応する技術開発、人材育成。

l 企業支援
飲食・宿泊・酒類事業者などを支援。賃上げ促進のため、「事業再構築補助金」を拡充。事業継続や事業再構築を支援したり、企業の財務基盤強化のため、資本性資金の供給や優先株の引き受けを更に推進。雇用調整助成金等の特例措置の拡充。

l 給付金
特別定額給付金の第2弾、家賃や通信料などの固定費支援

l 減税、支払い猶予、税還付、減免
消費税、所得税、住民税、社会保険料、法人税、公共料金

l 雇用支援
賃金助成金、所得損失補填、失業保険の拡充

l 子育て支援
若い子育て世帯の住居費や教育費の支援強化、学校の一斉休業に伴う臨時的な休業手当、仕事を休めない親に無料保育。

l ワクチンパスポート
ワクチン接種のインセンティブの策定

出所:内閣府、各種報道 作成:岡三証券

・本レポートは、投資判断の参考となる情報提供のみを目的として作成されたものであり、個々の投資家の特定の投 資目的、または要望を考慮しているものではありません。また、本レポート中の記載内容、数値、図表等は、本レポート作成時点のものであり、事前の連絡なしに変更される場合があります。なお、本レポートに記載されたいかなる内容も、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。投資に関する最終決定は投資家ご自身の判断と責任でなされるようお願いします。

岡三証券チーフエコノミスト
会田卓司

岡三証券エコノミスト
田 未来