「シンプルさは究極の洗練である(Simplicity is the ultimate sophistication)」

上記はルネサンス期を代表する芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だ。

読者のみなさんは、仕事でもプライベートでも複雑に考えすぎて結論を出せなくなった経験はないだろうか。筆者はそのような状況によく陥るのであるが、そんな時に想起するのがダ・ヴィンチの言葉である。まず、「それって本当に必要なものなの?」と自分に問いかけてみる。余分な考えをどんどん削ぎ落とすと、頭の中が次第に整理され、「本当に大切なもの」が浮かび上がってくる。そのようにして導き出された結論は驚くほどシンプルであることが多い。ダ・ヴィンチの言葉にある「究極の洗練」とまでは行かないものの、思考をシンプルにすることの大切さは実感している(それでも、あれこれ余計なことを考えてしまうのだが……)。

ダ・ヴィンチの言葉は投資にも通じるように思う。いまやスマートフォン1つあれば多様な投資情報を入手することが可能な時代である。新型コロナ禍ということもあり、筆者の周りでも子どもの教育費や自分たちの老後資金など将来に不安を感じている人が増えている。友人からは「この投資はどう?」と相談を受けることもあるが、中には見るからに怪しげな投資サイトも少なくない。情報はたくさんあるが、どれを捨て、どれを拾うかが重要だ。

そうした中で注目されるのは、ウォーレン・バフェット氏の言動である。「オマハの賢人」と称されるバフェット氏は、自身が筆頭株主で会長兼CEO(最高経営責任者)を務める投資持株会社バークシャー・ハサウェイの株主総会などで、長期的な運用法としてインデックスファンドを勧める発言を繰り返している。

インデックスファンドといえば、シンプルでわかりやすいのが特徴の1つでもある。今回は「バフェット流シンプルなお金の増やし方(Buffett’s Simple Money plan)」と題して、偉大なる投資家の発言を検証してみよう。

投資で「90%以上の人」より成果を得る方法とは?

ウォーレンバフェット,投資信託
(画像=マツ / pixta, ZUU online)

米経済誌フォーブスのWebサイトで公表されている「リアルタイム純資産」によると、バフェット氏の純資産は1049億ドル(約11兆9514億円)で世界で8番目の大富豪となっている(2021年10月28日時点)。

バフェト氏が会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイは、もともとは綿紡績事業を営む企業であった。1965年にバフェット氏が経営権を取得し、1967年までに投資業を拡大した。そして1970年からバフェット氏は年次報告書の執筆に携わるようになる。特に年次報告書の冒頭部分はバフェット氏による「株主への手紙」として多くの市場関係者の注目を集めるところとなっている。株主総会での株主とのやりとりや「株主への手紙」は主要メディアでも取り上げられることが多い。

たとえば、2021年5月1日にオンラインで開催された、バークシャー・ハサウェイの年次株主総会でバフェット氏は「S&P500のインデックスファンド」を勧めている。バフェット氏は平均的な人が個別株を選択することの難しさを指摘、むしろS&P500のインデックスファンドを買うことで「十分な利益を得ることになるだろう」と発言している。

ちなみに、バフェット氏の「インデックスファンド推し」はいまに始まったことではない。

2004年の年次株主総会でもバフェット氏は「バークシャーを購入するか、インデックスファンドに投資するか、ブローカーを雇うか」と投資家から質問されたことがある。バフェット氏の回答は以下の通りだ。

「バークシャー株はお勧めしない。さまざまな選択肢があると思うが、今後10年にわたり低コストのインデックスファンドにそこそこの額を投資し続けた場合、同時期に投資を始めた90%以上の人より成果を得ることができるだろう。ただし、一度に全額を投資しないこと」

インデックスファンドとは、日経平均やダウ平均株価、S&P500といった市場全体の動きを表す代表的な指標(インデックス)と連動するように運用されるファンド(投資信託)である。「インデックス型投資信託」や「パッシブファンド」と呼ばれることもある。

インデックスファンドは、幅広い銘柄に分散投資が可能なうえ、シンプルな商品設計で一般的に運用コスト(信託報酬など)が低く設定されているのが特徴で長期投資にも適している、とされている。

バフェット氏がインデックスファンドを勧める理由