読者のなかには、冬のボーナスが支給されて懐が暖かい人もいることだろう。「そろそろ資産運用を考えてみようかな?」「このまま普通預金に置いといても大して変わらないし」と考え、インターネットで検索して当コラムに辿り着いた人もいるかもしれない。いまや資産運用に限らず、何かを調べようと思ったらネットで検索するのが当たり前の時代といっても差し支えないだろう。

ちなみに、ネットで投資信託について色々調べてみると「アクティブ運用よりもパッシブ運用のほうが良い」といった情報をたくさん目にするかもしれない。確かにパッシブ運用のほうがアクティブ運用よりも総じて信託報酬は安い。加えて、長期で比較するとパッシブ運用は狙い通りにインデックス前後の騰落率に収まっているのに対し、アクティブ運用のなかには目を覆いたくなるような結果に沈んでしまったものも散見される。

実際、筆者がみる限りでは、ネットで投資信託の情報を発信する側も、受ける側も「コスト意識が高い人」が多いように見受けられる。「低コスト至上主義」とでもいおうか。投資初心者のなかには、ネット証券が提供する「購入時手数料無料」などに魅力を感じる人も多いことだろう。

なぜ、富裕層はプライベートバンクやIFAを好むのか?

アクティブ運用,投資信託
(画像=foly / pixta, ZUU online)

だが、ファンドマネージャーとして長年市場と向き合い、その後プライベートバンクで富裕層ビジネスの最前線に立った筆者の経験から言わせていただくと、最低でも5億円以上の金融資産を有する富裕層の多くは、ネット証券にあえてこだわるほど手数料に敏感になっているわけではない。彼ら富裕層はプライベートバンクはもちろんのこと、近年は独立系ファイナンシャルアドバイザーとも呼ばれるIFA(インベストメント・ファイナンシャル・アドバイザー)も積極的に活用している。プライベートバンクやIFAの手数料はネット証券よりも高く設定されているのだが、それでも富裕層が好んで活用するのはなぜか?

プライベートバンクもIFAも対面型としてセールスパーソンが存在する以上、最低限その人件費等をまかなえるだけの手数料収入がなければビジネスとして成立しない。裏を返せば、それなりの手数料を払ってでも、アドバイスをもらう価値があると富裕層は考えているということだ。

プライベートバンカーやIFAの大きな特徴の1つとして、基本的に一般のリテール営業のように担当者が転勤や異動をしないことが挙げられる。IFAはその傾向が特に強く、じっくりと腰を据えて富裕層に寄り添ったサービスを提供する。つまり、プライベートバンカーにしても、IFAにしても、富裕層はその担当者に対して「手数料を支払う価値」を感じている、ということになる。

富裕層ビジネスの最前線に立っていた筆者の経験から言わせていただいただくと、優秀なプライベートバンカーやIFAと取引している富裕層はアクティブ運用を好む傾向にある。ただし、そこには「一定の条件」がある。

一定の条件とは、そのプライベートバンカーやIFAが「アクティブ運用の旬を見極めるスキル」を有していることだ。その条件を満たしていれば、仮に1億円相当の約定時に100万円の手数料を払ったとしても決して高くはない。「アクティブ運用の旬を見極めるスキル」を有するプライベートバンカーやIFAは、富裕層にとって高い手数料を払うこともいとわない、極めて魅力的な存在といえる。

個別銘柄をきちんと選定した投資判断の妙味

参考までにアクティブ運用の実例を紹介しよう。筆者が主催する「ファンドガレージ」では「My Favorite Company List」というコンテンツを提供している。これは推奨銘柄のリストという位置づけではなく、ファンドマネージャーはどのように銘柄を選び、その銘柄を日々どのようにフォローしているのかをリアルに実感してもらうために提供しているものだ。2019年2月15日に日米株式5銘柄ずつ合計10銘柄でスタートし、等金額投資を前提として毎日データを更新しているが、実は直近ではスタート時の約2.3倍から2.4倍にまで時価総額が膨らんだ。一方、この間の日経平均やダウ平均株価は約1.4倍にとどまっている。

「My Favorite Company List」のスタートから間もなく3年を迎えるが、これこそ個別銘柄をきちんと選定した投資判断の妙味であり、インデックスをなぞらえた「コストが安いだけ」の運用では得ることができない投資成果であると筆者は考えている。

「My Favorite Company List」は、わずか10銘柄への集中投資であり、これだけのリターンが上がったということは、当然のこととして「恐ろしくリスクが高いポートフォリオ」という烙印を押されるかもしれない。

しかし、筆者は「My Favorite Company List」で低リスクのポートフォリオを会員に紹介しようと考えたわけではない。これは「テーマ株ファンド」の考え方とある意味似ているが、「右肩上がりのビジネス・トレンド」を見つけ、そのなかから筆者が「株主になりたい会社」をリストアップしたものなのだ。逆に言えば、インデックスにリスク特性を揃えるために「投資したいとも思わない銘柄」までリストアップする必要はない。

何事も成果を出すには手間とコストがかかる