まずは下記の2つの質問をみていただきたい。読者のみなさんはどう答えるだろうか?

【第1問】あなたは「皆がそうしているなら安心」と周りに同調するタイプですか? それとも、他人のことは気にせず、まずは自分が納得するものを選択する「我が道を行く」タイプですか?

【第2問】あなたは何かわからないことがあると、すぐにネットで検索をして適切そうな答えを探すタイプですか? それとも多少時間はかかっても、自分なりに基本から勉強したり、原典や数値を確認したりして答えを得ようとするタイプですか?

筆者はバークレイズ・ウェルスISSヘッド時代に、プライベートバンカーたちが富裕層の「投資特性」を120%理解し、心のひだに届くような提案や助言をできるようサポートしてきた経験がある。それは行動経済学に基づく分析をベースとしたものだが、上記の2つの質問もその一種と考えていただいて良い。

極めて単純かつシンプルな2つの質問ではあるのだが、実はどちらの質問も、答えが前者に属すると思う人は「パッシブ運用」、後者を選択した人には「アクティブ運用」が向いている。誤解なきように申し添えておくが、別にどちらが正しいとか、間違っているという意味ではない。あくまで個人の「投資特性」として、特徴的な一面を垣間見せるものであるということだ。

周りに同調していては、相場に勝つことはできない?

アクティブ,パッシブ
(画像=Graphs / pixta, ZUU online)

「皆がそうしているなら安心」と周りに同調するのは、日本社会では半ば常識的といっても差し支えないかもしれない。だが、投資の世界は周りに同調すれば勝てるほど甘いものではない。

たとえば、投資の王道である「勝利の方程式」は「安く買って、高く売る」ことだが、これを現実的な理論とするにはもう一言付け加える必要がある。それは「他人より安く買って、他人より高く売る」ということだ。つまり、自分が買った水準よりも高い値段で買ってくれる人がいて初めて自分の買った値段が正当化されて利益が乗ってくる。そして誰もが売ろうとする前に、いち早く売ってしまわなければ、利益を実現することが難しくなる。

皆が売りに動いてからでは遅いのだ。自分よりも先に売る人が沢山いれば、値上がりしたと喜んだのもつかの間、あっという間に買値を下回ってしまうなんてことは、ある意味日常茶飯事である。より細かいことをいえば、株式の流動性が低く、日々の取引量も少ない銘柄なら、簡単に値段がすっ飛び上がる代わりに、同様にあっという間に急落する。だからこそ「他人より安く買って、他人より高く売る」ことが真の勝利の方程式なのである。他人と同じ発想、同じ考え方でいたら勝つことは難しい、ということだ。

日本社会は不思議と同調圧力が強く、それに慣れてしまっている人が案外多いのではないか、と筆者は感じている。ファンドマネージャーとして市場と向き合い、その後、外資系プライベートバンクのISSヘッドを経験した実感として指摘させていただくと、「皆がそうしているなら安心」と周りに同調する日本社会の傾向は、日本人の投資行動にも影響をおよぼしているように思われてならない。

「数字が大きいほうが正しい」という考える人はパッシブ運用が向いている?

【第1問】と【第2問】の回答について、さらに掘り下げてみよう。

「あなたは『皆がそうしているなら安心』と周りに同調するタイプですか?」の質問にイエスと回答した人の場合、自分が強気でマーケットを見ているときに「皆が強気」だと安心するタイプなので、少なくとも「人より早く」行動を起こせるタイプではない。換言すれば、皆と一緒になって動くことを志向するタイプであり、常に市場平均と一緒に動くほうが(投資として)安心感がある。特に人より頭抜けて儲けることはできないが、その代わり市場平均、すなわち「皆と一緒」の水準の投資収益は得られやすい、とみることができる。

「あなたは何かわからないことがあると、すぐにネットで検索をして適切そうな答えを探すタイプですか?」についてイエスと回答した場合はどうだろうか?

現代社会でネット検索ぐらい便利なものはないと筆者も思う。しかしながら、辞書や専門書などできちんと調べて勉強した結果から得られるものと、ネット検索で得られるものは、似て非なるところがある。すなわち、辞書や専門書に書いてあることは、少なくとも責任ある著者という立場の人によって、代金の見返りがあるなかで「信頼性の高い」情報として書き記されたものだ。一方、ネットでは検索上位に表示されるものが必ずしも「信頼性の高い」情報とは言い切れない。ネット検索で得られる情報はその大部分が無料であるが、なかには首をかしげたくなるような情報も散見される。

しかし、それでもネット検索で上位に表示される情報のほうがPV(ページビュー)などの数字を稼ぎやすいことは確かである。その情報が正しいかどうかはさておき、皆が数字を稼ぐためにコンテンツを制作すると、似たような情報がどんどん氾濫することになる。そして、いつの間にかそれが「正しい情報」であるかのように流布されることも珍しくはない。

「数字が大きいほうが正しい」という考え方は、マジョリティこそが正しいという考え方に通じるものがある。そのような考え方をする人は「他人より安く売り、他人よりも高く売る」という真の勝利の方程式には向いていないタイプと見ることができる。つまり、市場平均であるインデックスに沿ったパフォーマンスを稼ぐ「パッシブ運用」のほうが向いている、ということだ。

アクティブ運用で投資収益を上げる「極意」とは?