プライベートバンク(以下、PB)は資産運用に特化した金融機関だ。保有資産が数億円以上の富裕層であれば、一度は利用を検討したことがあるかもしれない。しかし、一言でPBといっても、各社で対象顧客、機能、強みが大きく異なるので、自分にあったPBを慎重に選ぶ必要がある。
前編では外資系PBについて説明した。後編では日系PBについて紹介していく。今回も日系、米国系、スイス系のPBにて、プライベートバンカーとして多くの富裕層の資産運用をサポートしてきたウェルスパートナー代表の世古口氏に話を聞いた(聞き手:菅野陽平)。
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目次
日系プライベートバンクの特徴
日系PBも外資系PBと同じく、『対象顧客属性』と『機能』で選ぶことが重要だ。日系PBが外資系PBと大きく異なるのは、「対象顧客属性の1つである保有金融資産や最低預かり残高などの“最低基準”が明確に設定されていないPBが多い点」(世古口氏)だろう。しかし日系はPBごとに「主業に寄与する顧客を獲得したい」という狙いが存在する。
主業とは、たとえば、銀行であれば事業融資、証券会社であれば上場会社の主幹事、信託銀行であれば不動産取引や遺言信託などである。つまり、「◯億円を預けないと口座を維持できない」というわけではなく、「預かり残高はいくらでもよいが、その他の主業や法人取引などの総合的な収益性で顧客を選ぶことが多い」ということだ。
日系金融機関にとってPBは数多く存在する事業部門の1つに過ぎないのだろう。彼らは一様に、「会社全体としての顧客価値」が重要だと考えている節がある。この点は、PBが祖業であり、事業と組織の中核であるスイス系PB(UBSやクレディ・スイスなど)との大きな違いである。
日系PBが機能面で外資系PBより優れているのは、不動産や事業の融資、自社株担保ローン、上場幹事業務、信託などのサービスを取り揃えていることだろう。その代わり、外資系PBのような外国証券にレバレッジをかけた資産運用などはできない日系PBが多い。
それゆえ、日系PBを選ぶ時は「顧客が求める機能を持つPB」かつ「PBが求める属性の顧客」という「WIN-WINの関係」が成り立つかどうかが判断のポイントになる。
では、ここからは、日系PBのそれぞれの特徴を紹介していこう。