CFOの6つの役割

CFOは、財務部長や経理部長が果たす役割に加えて、経営視点で財務に関する活動を統括し、財務を通じて企業価値を向上させる施策を行わなければならない。

財務会計の知識が必要であることはもちろん、経営視点で戦略を考える能力と、社内外に対する高いコミュニケーション能力が求められる。このことから、一般的にイメージされる財務部長や経理部長よりも、職責の範囲は広いといえる。

具体的には、下記のような場面でCFOの力が求められる。

1.財務戦略の策定

CFOは、経営と財務の視点から、企業価値を最も効果的に高めるための戦略をCEOとともに策定し、それを着実に執行することが求められる。

2.資金調達

資金調達の際には、自社の状況を正しく把握し、いつまでにどのくらいの資金調達を行うか、資金調達を融資で進めるのか、出資を募るのかを判断して実現のための活動を統括する。投資家から出資を募る際は、自社の成長性や市場の優位性を投資家に自ら説明することも求められる。

3.M&A戦略策定

事業を連続的に成長させるには、既存の事業を買収するM&Aを選択することもある。効果的に企業価値を向上させるためには、どのタイミングでM&Aを活用するかをCEOとともに描きながら、そのための資金調達やM&Aに絡むリスクの問題解決も統括していくこととなる。

4.財務管理

集めた資金に対して、日々の予実管理やKPI管理をしながら、企業価値を最も効果的に高める戦略を打ち出し、次のステージに導かなければならない。

5.上場準備

上場を見据える時期には、証券会社や監査法人といった関係者との渉外や内部統制の整備、資本政策をCFOがリーダーとなって計画的に進めなければならない。

6.適切な情報開示

上場企業や上場を目指す企業にとって、株主や投資家に対する適切な情報開示は、法律上の要請のみならず、市場の信頼性確保には欠かせない。

補充原則においても、取締役会や監査役会は、外部会計監査人からCEOやCFOなど経営陣幹部へのアクセスを確保すべきとされており、CFOには、財務情報、非財務情報にかかる会社の情報開示をわかりやすく行うことが求められる。(補充原則3-2②)

CFOと他の役職の違い

CFOとそれ以外の役職は、会社においてどのような違いがあるのだろうか。ここでは、CFOとそれ以外の代表的な役職との違いを解説する。

CFOと代表取締役や取締役との違い

CFOと代表取締役や取締役は、会社法上の機関や役職であるかないかの点で異なる。また、代表取締役や取締役が会社の業務執行を担うのに対し、CFOは財務活動の統括を担うことから、職務の範囲も異なる。

ただし、CFOを導入している会社では、代表取締役兼CFOや取締役兼CFOのように、取締役とCFOを兼務している場合が多い。もちろん、そのどちらでもない者がCFOに就任している場合もある。所感としては、取締役兼CFOが多い。

CFOと社長や副社長との違い

社長や副社長は、会社のトップとナンバー2の意味合いで用いられる肩書きである。法律上の職制ではない点においてはCFOと共通するが、社長や副社長の業務も財務に限らないことから、職務の範囲に違いがあるといえる。

ただし、CFOを導入している会社では、社長や副社長がCFOを兼任することもある。

CFOと執行役員の違い

「執行役員」とは、執行役員制度を導入する会社が運用する役職のことで、会社法上の役員ではなく会社内部の職制である。

通常、複数名が取締役会によって選任され、個別に担当する業務が多いことから、CFOのように財務に限らない点や業務を統括する立場に限らない点に違いがある。なお、執行役員がCFOを兼務することもある。

CFOとCEOの違い

CFOは「最高財務責任者」として、会社の財務に関する活動を統括する役職であるが、CEO(Chief Executive Officer)は、「最高経営責任者」として、財務を含む会社全体の業務執行を統括する役職である。

CFOは職務範囲が限定されているとはいえ、財務は企業活動の要であり、CEOと同様に会社にとって重要な役割であることは変わりない。そのため、社長CEO、副社長CFOの体制を築いている会社や、CEOとCFOの二名を代表取締役とする会社もある。中には、CEOがCFOを兼務しているケースもある。

CFOとCOOの違い

COO(Chief Operating Officer)は、「最高執行責任者」として、営業活動に関する業務執行を統括する役職であり、CFOとは統括する対象に違いがある。

アメリカの会社では会長をCEO、社長をCOOとするスタイルがあり、日本でも同様の内部統制が見られる。そのため、「COO=ナンバー2」のイメージを持ちやすいかもしれないが、実際はCFOを副社長とする企業も多く、COOとCFOの間に職務上の優劣は特にない。