SDGsの取り組みを知ろう 政府、企業、自治体は何をしている?
(画像=PIXTA)

経済に関する雑誌やメディアでは「SDGs」という言葉を頻繁に目にする。SDGsは国連サミットにて加盟国の全会一致で採択された国際目標(達成期限は2030年)だ。今回は、SDGsの概念についてあらためて紹介したうえで、政府、企業、自治体などが具体的にどのような取り組みをしているのか、解説する。

目次

  1. 1. SDGsとは
  2. 2. SDGsに対する日本政府の取り組み
  3. 3. SDGsに対する企業の取り組み例
  4. 4. 企業がSDGsに取り組むメリット
  5. 5. SDGsに対する自治体の取り組み例
  6. 6. 個人がSDGsに取り組む方法
  7. まとめ:SEGsの実現は、個人1人ひとりの意識向上が鍵

1. SDGsとは

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標だ。2030年を達成期限とするこの目標は、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている。

貧困・飢餓の問題解決、資源の不足・枯渇の回避、女性の地位向上、平和の達成などの目標からSDGsは生まれた。これら達成目標のテーマは、17のゴールと169のターゲットで構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。

【参考】国際連合広報センター>2030アジェンダ(PDF)

1.1. SDGsの17のゴールとは

17のゴールは、社会、経済、環境の3側面から、世界が直面する課題を網羅的に示している。具体的には以下のとおりだ。

▽SDGsにおける17のゴール
ゴール1:貧困をなくそう
ゴール2:飢餓をゼロに
ゴール3:すべての人に健康と福祉を
ゴール4:質の高い教育をみんなに
ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう
ゴール6:安全な水とトイレを世界中に
ゴール7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
ゴール8:働きがいも経済成長も
ゴール9:産業と技術革新の基盤をつくろう
ゴール10:人や国の不平等をなくそう
ゴール11:住み続けられるまちづくりを
ゴール12:つくる責任つかう責任
ゴール13:気候変動に具体的な対策を
ゴール14:海の豊かさを守ろう
ゴール15:陸の豊かさも守ろう
ゴール16:平和と公正をすべての人に
ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう

1.2. SDGsで定義された169のターゲットとは

169のターゲットは、上記の17のゴールをさらに細分化する形で設定しており、それらに対応する指標が示されている。17のゴールを169のターゲットで定量的な目標数字や具体的なアクションに落とし込んでいるというわけだ。この169のターゲットについて、日本における具体的な目標数字やアクションについては、外務省のホームページで、17のゴールそれぞれに公開されているので、確認したい。

▽SDGsにおけるターゲット、グローバル指標の例

2. SDGsに対する日本政府の取り組み

SDGsは、国連サミットにて加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されているものであり、先進国・発展途上国を問わず、すべての国が取り組むべき普遍的(ユニバーサル)な目標となっている。日本政府も積極的に取り組んでおり、ここからは、SDGsに対する日本政府の取り組みを紹介していこう。

2.1. SDGsに対する日本政府の取り組み1:SDGs推進本部の設置(2016年5月~)

2015年にSDGsが採択されたあと、日本政府としてのSDGsに関する大方針を議論する場として、2016年5月に「SDGs推進本部」が設置された。総理大臣を本部長、官房長官と外務大臣は副本部長、全閣僚が構成員になっている。

SDGs推進本部は、年2回のペースで本会合を開催し、国内実施と国際協力の両面で取り組む体制を整えている。この本部を司令塔として後述する項目などに取り組んでいるというわけだ。

【参考】首相官邸>会議等一覧>持続可能な開発目標(SDGs)推進本部

2.2. SDGsに対する日本政府の取り組み2:SDGs実施指針の作成(2016年12月~)

このSDGs推進本部のもとで、行政、民間セクター、NGO・NPO、有識者、国際機関、各種団体などを含む幅広いステークホルダーによって構成された「SDGs推進円卓会議」の会合が行われた。それを経て、2016年12月、今後の日本の取り組みの指針となる「SDGs実施指針」を決定した。

「SDGs実施指針」は、SDGsの17のゴールを日本の現状と照らし合わせて、8つの優先課題と具体的施策を公表、2019年までを目処に最初のフォローアップを実施するというものだ。SDGs採択から4年、実施指針決定から3年が経過した2019年12月には、最新の動向を踏まえた取り組みの方向性を示すために、実施指針を改定。8つの優先課題などをあらためて再構築した。それは以下のとおり。

▽8つの優先課題
1.あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現
2.健康・長寿の達成
3.成長市場の創出、地域活性化、科学技術イノベーション
4.持続可能で強靱な国土と質の高いインフラの整備
5.省・再生可能エネルギー、防災・気候変動対策、循環型社会
6.生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
7.平和と安全・安心社会の実現
8.SDGs 実施推進の体制と手段

【参考】首相官邸>SDGsアクションプラン2020(PDF)

2.3. SDGsに対する日本政府の取り組み3:ジャパンSDGsアワードの創設(2017年6月~)

日本政府はSDGsの達成に向けて、オールジャパンの取り組みを推進するために、2017年6月の第3回SDGs推進本部において、優れた取り組みを行う企業・団体などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を創設した。

受賞者は、SDGs推進円卓会議の構成員から成る選考委員会の意見を踏まえて決定される。最も優れた1案件をSDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞、その他の4案件程度を官房長官・外務大臣によるSDGs推進副本部長賞とする。その他、特別賞を付与する場合がある。表彰は年1回を基準として行われ、期間を限定して公募される。

【参考】首相官邸>会議等一覧>令和3年度「ジャパンSDGsアワード」の公募

「第5回ジャパンSDGsアワード」のSDGs推進本部長賞は、株式会社ユーグレナが受賞している。同社はバングラデシュの子どもたちの栄養問題解決を目指して創立された会社。同国の小規模農家と契約して行う緑豆の栽培や、ロヒンギャ難民への食料支援が評価されての受賞となった。

【参考】株式会社ユーレグナ
【参考】首相官邸>議事次第>第5回ジャパンSDGsアワード受賞団体(PDF)

2.4. SDGsに対する日本政府の取り組み4:SDGsアクションプランの策定(2020年12月~)

2021年12月には、SDGs推進本部から「SDGsアクションプラン2022」が発表された。新型コロナウイルス感染症の影響への対応、急速なデジタル化の普及などを踏まえて、2022年以降の行動指針をまとめたものだ。

2022年の重点事項として以下の5つが掲げられている。

▽SDGsアクションプラン2022の重点事項

  1. People 人間 : 感染症対策と未来の基盤づくり
  2. Prosperity 繁栄 : 成長と分配の好循環
  3. Planet 地球 : 地球の未来への貢献
  4. Peace 平和 : 普遍的価値の遵守
  5. Partnership パートナーシップ : 絆の力を呼び起こす

▽SDGsアクションプラン2022の具体的なアクション例

「People 人間 : 感染症対策と未来の基盤づくり」の具体的なアクション
6月までの可能な限り早いタイミングで新たな「グローバルヘルス戦略」を策定し、取り組みを加速する
「女性版骨太の方針」等に基づき、女性デジタル人材の育成や「生理の貧困」への支援、女性の登用目標達成、女性に対する暴力の根絶など、女性活躍・男女共同参画の取組を強力に推進する
こども中心の行政を確立するための新たな行政組織を2023年中に設置することも通じ、子どもの貧困対策など、子どもや子育て世代の視点に立った政策を総合的かつ包括的に推進する
「Prosperity 繁栄 : 成長と分配の好循環」の具体的なアクション
「デジタル田園都市国家構想」の実現を通じ、地域の個性を活かしながら、地方を活性化し、持続可能な経済社会の実現に取り組む
これまで進めてきた「SDGs未来都市」に加え、新たに複数の地方公共団体が連携して実施する脱炭素化やデジタル化に関する取組に対しても支援を行うことで、地方におけるSDGs達成に向けた取組を加速する

そして、SDGsアクションプラン2022の概要には「2022 年はSDGsの達成に向けて国内実施・国際協力をより一層加速する」と示した。

【参考】首相官邸>議事次第>SDGsアクションプラン2022(概要)(PDF)

3. SDGsに対する企業の取り組み例

次に、SDGsに対する企業の取り組みにはどのようなものがあるのだろうか。たくさんの企業がさまざまな対策を実行しているが、今回は日本航空(JAL)を例に挙げて紹介していこう。同社の「SDGs達成に向けた取り組み」というウェブページを見ると、前述の17の目標に対してどのように取り組んでいるか、掲載されている。

たとえば、「目標1:貧困をなくそう」に対しては、ユニセフへの寄付であったり、機内食をいかに安心・安全・持続可能な工程で作られているかであったりなどが紹介されている。

また、飛行機を飛ばすには石油から作られる大量のジェット燃料が必要で、たくさんの二酸化炭素を排出している。そこで同社では、ごみや廃油、藻類などから作られるバイオジェット燃料(代替航空燃料:SAF)の開発促進と活用を進めている。

【参考】JAPAN AIRLINES>サステナビリティ>SDGs達成に向けた取り組み

日本航空以外の企業も積極的に取り組んでいる。それぞれの活動内容については外務省 JAPAN SDGs Action PlatformのページやKeidanren SDGsのページに掲載されている。

【参考】外務省 JAPAN SDGs Action Platform>取り組み事例(2022年3月末まで)
【参考】Keidanren SDGs

4. 企業がSDGsに取り組むメリット

それでは、企業がSDGsに取り組むメリットにはどのようなことがあるのか解説しよう。たとえば、以下のようなことが挙げられる。

4.1. 企業がSDGsに取り組むメリット1:直接金融において資金調達がしやすくなる

企業がSDGsに取り組むことで、いわゆる「グリーンマネー」が集まり、資金調達がしやすくなるだろう。この場合の資金調達とは、直接金融、間接金融の両方を指している。

まずは直接金融だ。SDGsとESGは言葉こそ違うが概念は似ているので「SDGsに積極的な企業」は「ESGに積極的な企業」と言い換えていいだろう。だとすれば、ESG投資家から、ESG投資マネーが投じられる可能性が高いということになる。

▽ESG投資とは
“ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。”

引用:経済産業省「ESG投資」(下線・太字は編集部)

特に上場会社の場合は、株価および時価総額を押し上げる一因になり、株主から経営を預かっている経営陣としては望ましい展開だろう。株価を高く保っておくことは、スムーズな公募増資の発行など資金調達の選択肢を広げることに繋がる。

影響は株式だけではない。近年は「グリーンボンド」と呼ばれるESGに関する債券の発行が増えている。

▽国内企業などによるグリーンボンドの発行実績

ESG投資ブームを背景に、投資家の購入意欲が旺盛なため、グリーンボンドの利回りが同じ発行体の普通債より低くなる「グリーニアム」という現象まで起こっている。

普通債よりも低い利回りを許容されているのだから、ESGに積極的に取り組むことは、低コストで資金調達できるチャンスといえる。非上場会社は上場会社ほど直接金融で資金調達を行うことはないが、第三者割当増資を実施する際や、IPOを目指す成長企業などがリスクマネーを集める時は、ポジティブに影響しやすい。

4.2. 企業がSDGsに取り組むメリット2:間接金融において資金調達がしやすくなる

間接金融はどうだろうか。実は、近年はSDGsやESGに着目した融資を行う金融機関が増えている。

たとえば、三井住友銀行では「SDGsグリーン/ソーシャル/サステナビリティローン」という融資を行っている。資金使途を環境や社会課題の解決に資する事業に特定したローンだ。

【参考】三井住友銀行>資金の調達>SDGsグリーン/ソーシャル/サステナビリティローン

千葉銀行では、事業上必要な運転資金及び設備資金に使用できる「ちばぎんSDGsフレンズローン」が用意されている。本ローンを活用すると、千葉銀行と一緒になってSDGsチェックシートを作成し、事業活動とSDGsの紐付けができるようになるという。

【参考】千葉銀行>ご資金の調達>ちばぎんSDGsフレンズローン

SDGsやESGに積極的であれば無条件に融資がおりるわけではないが、SDGsやESGに積極的な企業は、以前より資金調達の幅が広がっているといえるだろう。

4.3. 企業がSDGsに取り組むメリット3:採用しやすく、定着率も上がりやすくなる

SDGsに積極的な企業は、対外的なイメージも良くなり、採用がしやすくなるだろう。一般論として、SDGsに積極的な企業は、そうでない企業に比べて、ダイバーシティの推進、ワーク・ライフ・バランスの確保、女性活躍の推進などが進みやすい。そのため、離職率が低下し、長く活躍してもらえる可能性も高まるだろう。

4.4. 企業がSDGsに取り組むメリット4:受注維持および増加に繋がりやすくなる

SDGsを求めているのは、投資家や金融機関だけではない。近年のSDGsに対する意識の高まりから、取引先を選定するうえで「SDGsにしっかりと取り組んでいるか」「この会社と取引を始めることで、自社のSDGsへの姿勢に傷がつかないか」などの視点を取り入れる企業が多くなっている。そのため、SDGsにしっかり取り組むことで、受注維持および増加に繋がりやすくなることが予想される。

また、SDGsは最終消費者にも浸透しつつある。「この会社はSDGsに積極的ではない」「この商品はSDGsの理念に反している」と思われると、購入を控えられてしまうだろう。

5. SDGsに対する自治体の取り組み例

次に、SDGsに対する自治体の取り組みにはどのようなものがあるのだろうか。SDGsに対する自治体の取り組みを紹介する際には、「SDGs未来都市・自治体SDGs」を説明する必要がある。

2018年から日本政府は、SDGsを原動力とした地方創生を推進するため、優れたSDGsの取り組みを提案する都市·地域を「SDGs未来都市」として選定。自治体SDGs推進関係省庁タスクフォースを活用して選定された都市を支援している。具体的には、各省庁支援施策活用の助言や、国内外への成果の発信などだ。

また、特に優れた先導的な取り組みを「自治体SDGsモデル事業」として選定し、資金的な支援を行っている。

▽「SDGs未来都市」における取り組みイメージ

今回は、その「SDGs未来都市」の1つに選ばれた神奈川県鎌倉市の事例を紹介していこう。鎌倉市は「SDGs未来都市かまくらの創造」と銘打ち、経済、環境、社会の3視点において取組課題を提示し、それに対する取り組みを提案している。鎌倉といえば日本を代表する古都であり、歴史・文化とともに豊かな自然環境が特徴の地域だ。

そのような歴史、文化、自然を継承しつつ、東京に近い地理的要因も活かして、新しいライフ・ワークスタイルを提案するという。また、2021年3月に策定した「鎌倉市 SDGs未来都市計画(2021~2023)」によると、前述の169のターゲットから優先的なターゲットを抽出して、具体的なKPIを設定している。

▽鎌倉市SDGs未来都市計画のKPI例

鎌倉市は、2030年までに「『誰もが生涯にわたって、安心して、自分らしく暮らすことでできる社会』を実現するとともに、第3次鎌倉市総合計画で掲げる本市の将来都市像「古都としての風格を保ちながら、生きる喜びと新しい魅力を想像するまち」になることを目指している。この目標を達成するために、「SDGs未来都市・自治体SDGs」の支援を活用しているというわけだ。

6. 個人がSDGsに取り組む方法

それでは、個人がSDGsに取り組む方法にはどのようなことが挙げられるのだろうか。基本的には、17の目標の達成に資すると思われる行動であれば、それがどんなに些細なことであっても、SDGsの実現に貢献しているといえるだろう。

ほんの一例であるが具体的なアクションとして、ESG投資をする、マイボトルやエコバッグを持ち歩く、環境に配慮した商品を優先的に買う、慈善団体に寄付をする、といったことが挙げられる。

まとめ:SEGsの実現は、個人1人ひとりの意識向上が鍵

ここまで、SDGsの概念についてあらためて紹介したうえで、政府、企業、自治体などが具体的にどのような取り組みをしているか解説してきた。

SDGsは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択され、2030年の達成を目指している。つまり、期限まではあと8年となってしまった。政府、企業、自治体はもとより、個人1人ひとりの意識向上が達成の鍵となるだろう。

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