2021年12月、令和4年度(2022年度)の税制改正大綱が発表された。基本的には、この内容が2022年度に実現することになる。富裕層や高所得者にとっては、自分にどのような影響がある改正なのか気になるところだろう。
「第1回:「3%ルール」判定が厳格化! 上場企業オーナー“鉄板”節税策にメス」では、上場企業オーナーの“鉄板”節税策(所得税対策)が封じられたことを解説し、「第2回:2022年、富裕層の資産が丸裸にされる! 「財産債務調書制度」の提出対象者が拡大」では、「財産債務調書制度」の適用者拡大に関する話題を紹介した。いずれも富裕層・高所得者にとって好ましくない改正内容と言える。第3回では、「少額減価償却資産」「中小企業向けの賃上げ税制」「法人間配当の源泉徴収」「法人版事業承継税制」「相続税と贈与税の一体化」「住宅ローン控除」などの改正について、佐野比呂之税理士事務所代表 佐野税理士に解説してもらう。
節税策の封じ込め強化 貸付け目的で購入した少額減価償却資産が一括損金で計上できなくなる
プライベートバンクや税理士業界において、毎年の税制大綱で話題になるのが「節税策の封じ込めの有無」だ。第1回で紹介した「3%ルール」回避の封じ込めもその1つと言える。今回の大綱において、佐野氏が「3%ルール」回避の他に注目したのが以下部分だ。
これは、貸付け目的で購入した少額減価償却資産が一括損金で計上できなくなるという改正だ。本来、減価償却資産は定められたルールに則って償却していく必要があるが、少額(10万円未満)のものなどに関しては、取得した年に購入金額の全額を損金処理して良いことになっている(一括償却せずに通常通りの償却で経理処理しても問題ない)。中小企業においては取得価額30万円未満まで少額減価償却資産として認められており(300万円が限度)、黒字になることが分かると、決算締めギリギリで“買い物”をする経営者は少なくない。