この記事は2022年6月10日にSBI証券で公開された《外国人観光客受け入れ再開!》株価大幅下落で狙い目のインバウンド関連株は?を一部編集し、転載したものです。
東京株式市場が上昇基調に転じています。日経平均株価は2022年6月8日(水)、約3カ月ぶりに28,000円台を回復しました。中国のロックダウン解除、円安の加速等を背景に、企業業績への不安が和らいでいることが一因とみられます。新型コロナウイルスの新規感染者が減少傾向にあり、経済再開への期待も高まっています。
ただ、インフレ・金利上昇懸念が解消したわけではなく、2022年6月9日(木)の米国株安を経て2022年6月10日(金)の東京株式市場は大きく売りが先行する展開になりました。
そうした中、日本政府は2022年6月10日(金)から、観光を目的とした外国人の受け入れを再開しました。岸田首相が2022年2月12日(土)に入国制限の緩和方針を示して以来、「水際対策」としての規制が徐々に緩和されてきましたが、ついに外国人観光客の受け入れ再開となりました。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、「インバウンド関連株」のうち、新型コロナウイルスの影響で大きく株価が下落した銘柄をピックアップし、投資チャンスを探ってみたいと思います。
目次
《外国人観光客受け入れ再開!》株価大幅下落で狙い目のインバウンド関連株は?
日本政府は2022年6月10日(金)から、観光を目的とした外国人の受け入れを再開しました。
日本政府観光局等のデータによると、訪日外国人数は2011年622万人から2019年に3,188万人まで拡大していました。また、2019年のインバウンド消費額(訪日外国人旅行消費額)は4兆8,135億円にも達しました。
しかし、新型コロナウイルスの世界的流行が原因で、訪日外国人数は2020年412万人、2021年25万人と急減し、インバウンド消費額も2021年に1,208億円と、2019年比97%減と「消滅」に近い状態になりました。これにより、運輸、旅行等に携わる多くのインバウンド関連企業が甚大な影響を被りました。
こうした中での、訪日外国人観光客の受け入れ再開です。新型コロナウイルスの感染拡大が収まりつつあることも一因ですが、「ウィズ・コロナ」が世界的な傾向であり、今後、外国人観光客の受け入れは徐々に拡大されていきそうです。
2022年6月1日(水)以降の入国可能者数は当面、1日当たり2万人で、年間730万人のペースです。これでも、ピークの年間訪日外国人数の22%のペースに過ぎず、今後、さらなる規制緩和が望まれるところです。
今回の「日本株投資戦略」では、今後業績の回復が期待されるインバウンド関連株を抽出すべく、以下のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)SBI証券Webサイトの株価検索ウィンドウで「インバウンド」と入力した時に、出力される銘柄。
(2)東証上場企業。
(3)時価総額300億円超。
(4)1営業日当たりの平均出来高(2022年5月12日~2022年6月8日)が10万株超。
(5)2019年12月30日~2022年6月8日に、株価が20%超下落。
図表の銘柄は、上記(1)~(5)の条件をすべて満たし、(5)の下落率が大きい順に並べられたものです。
抽出銘柄のご紹介
こちらでは、図表でご紹介した「インバウンド関連銘柄」の一部について、内容や投資ポイント等をご紹介します。
西日本旅客鉄道(9021)~株価下落が厳しかった鉄道大手
■関西圏を中心に展開
当社は、北陸地方、京阪神エリア、和歌山県および奈良県、中国地方などを営業エリアとしています。
旅客鉄道を運営する「運輸業」(前期売上構成比52.8%)の他、物販・飲食などの「流通業」(同12.1%)、不動産賃貸等の「不動産業」(同14.7%)を手掛けています。
主力の「運輸業」は、新型コロナウイルスの感染拡大による観光需要の減少や、テレワークの普及による通勤客の減少が直撃し、売上高は2019年3月期9,639億円から2021年3月期には4,697億円とほぼ半減となりました。また、同期間の営業損益は1,969億円の黒字から2,455億円の赤字へ転落しました。
2022年4月28日(木)に発表された2022年3月期は、売上高が1兆311億円(前期比12.1%増)と最悪期は脱したものの、営業損益は1,190億円の赤字が残り、回復は「道半ば」となっています。株価は2019年11月高値の9,978円から2022年6月8日(水)5,047円まで49%下げた水準となっています。
■旅行需要回復は追い風、固定費削減が課題
「運輸業」については、新幹線需要、在来線定期外需要、定期需要がどう戻るのか、旅客需要の回復度合いがポイントになるとみられます。外国人観光客の受け入れ再開は追い風ですが、テレワークなど働き方の多様化により、旅客需要が「コロナ前」の水準を回復できないリスクはありそうです。
当社は運輸収入がコロナ前のおおむね9割にとどまっても利益を確保すべく、事業構造改革に取り組むとしています。その上で、抜本的な運賃改定も必要になってくる可能性もありそうです。
なお、当社については、SBI証券企業調査部もレポートを作成しています。詳細は以下のレポートをご参考ください。
2022年5月17日付 「旅客需要の回復および固定費削減の進捗に注目」
山崎アナリスト 投資判断「中立」
目標株価4,700円→5,500円
▽週足チャート(過去3年)
*データは2022月6日10日(週足) 13:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
ソースネクスト (4344)~ポケトークの増収効果で下期から黒字も
ソースネクスト(4344)~ポケトークの増収効果で下期から黒字も
■「ポケトーク」のラインナップ拡充に注力
当社は、パソコン用ソフト、スマホ用アプリ、IoT製品の開発・販売を手掛けています。
期待されているのは、AI通訳機「ポケトーク」の存在です。当社は、同製品のラインナップ拡充に注力しています。昨年末には、翻訳結果をPC画面に字幕表示できる、ソフト版「ポケトーク字幕」を投入しました。
さらに、非対面機能を投入し、拡大するリモート会議需要の取り込みを狙っています。2022年4月には、若年層需要開拓を狙い、スマホアプリ版のポケトークも投入しています。ソフトバンク(9434)等とも連携し、これらの製品の販促を推進する方針です。
■海外需要が急伸。下期から黒字化へ
2022年3月は、売上高103.07億円(前年比19.8%減)、営業損失22.59億円(前年は5.4億円の利益)でした。事前の会社予想に対し、製品群見直しに伴う評価損計上等で、利益が下回る結果となりました。
2023年3月期の会社予想は、売上高127.95億円(前年比24.1%増)、営業損失8.5億円となっています。グローバル展開を狙うポケトークの販促強化などもあり、上期は営業損失12.25億円を見込んでいますが、下期は増収効果で3.75億円の営業利益に回復する計画になっています。
なお、主力のポケトークは、国内市場で低迷が続いていますが、当社では海外展開を推進しています。これにより、欧米などの海外需要が急伸しています。今期会社予想では、ポケトークの3割強を海外で販売する計画です。
同社では、この海外販売の寄与や、国内需要の回復により、今期4Qのポケトーク販売台数は8万台程度(コロナ前の四半期販売台数の約8割)に回復する予想としています。
この足元の販売状況を考慮して、SBI証券・企業調査部では業績予想を修正しています。予想の前提となるポケトークの販売台数は2023年3月期がコロナ前の2020年3月期に対し41%(従来は64%)、2024年3月期が同93%(従来は約87%)、2025年3月期が同121%の水準になるとしました。
※詳細は以下のレポートをご参考ください。
2022年5月26日付 「ポケトークなどの増収効果で、今期下期より黒字に転換へ」
森行アナリスト 投資判断「中立」→「買い」
目標株価250円→330円
▽週足チャート(過去3年)
*データは2022月6月10日(週足) 14:30 時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽連結業績(百万円)
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。