この記事は2022年5月27日にSBI証券で公開された配当・自社株買い増加で魅力増す日本株~好配当利回りで割安感の強い銘柄をご紹介を一部編集し、転載したものです。
株式市場はやや落ち着きを取り戻しています。ただ、ウクライナ情勢の混迷に加え、世界の主要中銀による金融引き締めが景気・企業業績に悪影響を及ぼしつつあり、グローバルな株式市場では、いまだ強弱感が対立しています。そうした中、日経平均株価も基本的には方向感に乏しい動きとなっています。
しかし、こういう時こそ、配当利回りやPER等といったバリュー面の投資尺度にスポットを当て、長期的なスタンスからの投資を試みるチャンスであるかもしれません。今回の「日本株投資戦略」では、配当や自社株買いの増加で日本株の魅力が増す中、好配当利回りで、増配も期待でき、低PERで割安感の強い銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
目次
日本株は株主還元の充実で魅力が向上中?
株式市場はやや落ち着きを取り戻しています。ただ、ウクライナ情勢の混迷に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)など世界の主要中銀による金融引き締めが景気・企業業績に悪影響を及ぼしつつあり、グローバルな株式市場では、いまだ強弱感が対立しています。日経平均株価も基本的には方向感に乏しい動きとなっており、5月相場全体ではもみ合い商状となっています。
こうした中、改めて「日本株は割安なのか否か」について分析してみました。図表1は日経平均株価とその予想配当利回りを同じグラフの上にまとめたものです。日本株は、10年レンジでみると上昇基調ですが、いまはその調整局面にあるという印象です。一方、予想配当利回りもデコボコを描きつつも、基調的には上昇傾向です。
本来、株価が上昇すると配当利回りは下がりやすくなります。しかし、株価上昇にもかかわらず配当利回りも上昇しているのは、図表2にある通り、予想1株配当が上昇しているためです。最近は、3~4%の予想配当利回りの銘柄も珍しくない上、日本郵船(9101)や商船三井(9104)など9%超の予想配当利回りの銘柄も出ています。配当利回りの面から、日本株の魅力は強くなっているように感じられます。
株主還元という意味では、自社株買いも注目対象になりそうです。文字通り、企業が自社の株式を買うこのアクションは、需給を引き締めることに加え、企業のEPS(1株利益)やROE(株主資本利益率)の向上をもたらすという両面で、株価上昇につながりやすいと考えられます。
この自社株買いですが、2022年は5月25日(水)時点で720社あまりの上場企業が発表しています。既に昨年・年間の実施社数の97%に達しており、更には年間で最も数の多かった2019年(840社超)の記録を上回る勢いとなっています。
予想配当利回りの上昇や自社株買いの増加など、株主還元の強化は、日本株の魅力を高めていると考えられます。しかし、日経平均株価の予想PERは歴史的には低めの水準となっており、割安感は強いとみられます。現在の日本株は買い場と言えるかもしれません。
▽図表1 株価上昇でも、上昇する日経平均予想配当利回り
▽図表2 日経平均採用銘柄の配当は増加傾向
※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。
※2012年6月~2022年5月の月終値データをもとに作成。ただし、2022年5月は5月25日(水)までのデータ。
※図表1・2ともに横軸は「年月」で、「西暦下2桁/月」で表示。
配当・自社株買い増加で魅力増す日本株 ―― 好配当利回りで割安感の強い銘柄をご紹介
日本株の魅力は、予想配当利回りの上昇や自社株買いの増加など、株主還元の強化により高まっていると考えられます。さらに、日経平均株価の予想PERは歴史的には低めの水準となっており、割安感は強いとみられます。
ちなみに、株式市場では、予想配当利回りの高さだけではなく、増配や業績の拡大期待も求められる場面が多いようです。今回の「日本株投資戦略」では、以上の点を考慮して、次のようなスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場銘柄。
(2)時価総額500億円以上。
(3)業績予想を公表しているアナリストが2名以上。
(4)今期市場予想配当利回りが4%超。(日経平均の予想配当利回りは2022年5月25日時点で2.46%)
(5)今期・来期ともに市場予想1株配当金が増加の予想。
(6)今期・来期ともに市場予想1株純利益が増加の予想。
(7)今期市場予想PERが12倍未満。(日経平均予想PERは2022年5月25日時点で12.8倍)
(8)証券・商品先物に属す銘柄を除く。
(9)同一業種内の重複は避けるものとする。
(10)過去1か月間に、ニュースになるような不祥事等を起こした銘柄、また、会社予想と市場予想が極端に異なる銘柄は除外。
※「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサスベース。
図表3の銘柄は上記のすべてを満たしており、(4)の今期市場予想配当利回りが高い順に10銘柄並べたものです。以下に、おもな銘柄の概要についてコメントします。
みずほフィナンシャルグループ(8411)
メガバンクの1角を形成しています。会社予想では、純利益について前期(2022年3月期)の5,304億円から今期(2023年3月期期)は5,400億円としています。1株配当は前期80円から今期も同額(上期40円・期末40円)を予想しています。市場では1株配当について、今期は83円、来期は87.6円の予想です。
なお、当社を含む銀行セクターの見方については、SBI証券企業調査部の4/13付レポート(鮫島アナリスト)「銀行:強気スタンスを継続」をご参考にしてください。レポートでは、みずほフィナンシャルグループ(8411)の投資判断は「中立」で目標株価は1,700円(レポート作成時)となっています。
デンカ(4061)
当社は三井系の中堅化学メーカーです。電子材料を中心とした高付加価値のファインケミカル(特殊用途向けに多品種・少量生産される化学品)を中心に、セメントや医薬品、インフルエンザワクチン等にも展開しています。今期(2023年3月期)は営業利益430億円(前期比7.2%増)を、会社側は予想しています。会社予想の1株配当は前期145円から今期も同額を計画していますが、市場では157.5円を予想しています。
なお、当社についても、SBI証券企業調査部の調査対象銘柄となっています。当社を含む化学セクターのレポートとしては、4月11日付レポート(澤砥アナリスト)「化学:4Q・1Q決算の注目点・カタリスト」が最新となっています。
沖電気工業(6703)
当社はATM分野で国内トップ企業として知られています。交通、防災、金融など社会インフラに関するシステムの販売や構築、ソリューションの提供などが主業務となっています。今期(2023年3月期)の会社計画は営業利益90億円(前期比53.5%増)となっています。会社予想の1株配当は前期30円から今期も同額を計画していますが、市場では35円を予想しています。
なお、当社についても、SBI証券企業調査部の調査対象銘柄となっています。当社個別のレポートとしては、3/31付レポート(和泉アナリスト)「中計目標は未達の公算が高い」(目標株価1,330円・投資判断「買い」)が最新となっています。
▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。