この記事は2022年6月28日(火)配信されたメールマガジンの記事「岡三会田・田 アンダースロー(日本経済の新しい見方)『中央銀行に資本バッファは必要かーNO!』」を一部編集し、転載したものです。


FRB
(画像=PIXTA)

目次

  1. 要旨
  2. 中央銀行に資本バッファは必要かーNO!

要旨

  • 日銀は、イールドカーブ・コントロールにおける長期金利の誘導目標の上限を守るため、巨額の国債買入れを実施してきた。資産として長期国債が増加するとともに、負債として日銀当座預金残高が増加することになる。

  • マーケットでは、当座預金残高が増加することが将来の緩和政策からの出口を困難にするため、日銀の国債買入れには限界があるという見方が根強い。低利で買入れた国債からの収入が、利上げ局面での当座預金残高の付利の負担を下回り、損失が日銀の資本バッファを食いつぶしてしまうという懸念だ。食いつぶせば、政府による日銀への資本投入が必要になるとされる。

  • 急激な利上げを行っているFEDにも同じような疑問が投げかけられている。パウエルFRB議長は議会証言で、中央銀行の資本の必要性を明確に否定し、金融政策の判断に影響を及ぼすものではないことを断言している。日銀も同じように考えているのであれば、日銀の国債買入れの限界は想定されないということになる。

中央銀行に資本バッファは必要かーNO!

2022年6月23日(木)
パウエル議長下院議会証言

ジェームス・ヒル共和党下院議員(以下ヒル議員):ニューヨーク連銀が2021年の年次報告書の一部で、FRBのバランスシートの見通しを公表し、金利上昇によって2024年にかけてFRBが大きな損失を負う可能性について指摘した。FRBは中央銀行としてのミッション遂行にあたり、プラスの資本バッファは必要か?

パウエル議長いや、必要ない。

ヒル議員:それは何故か。

パウエル議長:Fedの負債は貨幣であり、貨幣に対して利子を払う必要はない。一方で、国債を大量に保有しているため多額の収入を得ており、その収入は財務省に納めることが法律で定められている。そのため、資本として抱えてはおらず、金融政策上も必要とされていない。僅かな資本は保有しているが、あくまでシンボリックなものである。我々は民間企業ではない。

ヒル議員:それでは、金利が上昇することで損失が膨らみ、財務省への納付金もなくなる可能性があると思うが、それでも問題はないのか?

パウエル議長:納付金がなくなる可能性はあるが、我々の政策には全く影響がなく、金融政策の判断においても影響することはない。

会田 卓司
岡三証券 チーフエコノミスト
田 未来
岡三証券 エコノミスト
松本 賢
岡三証券 エコノミスト

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