本記事は、長期株式投資氏の著書『オートモードで月に18.5万円が入ってくる「高配当」株投資 ど素人サラリーマンが元手5万円スタートでできた!』(KADOKAWA)の中から一部を抜粋・編集しています
否応なく投資を継続できる「仕組み作り」の掟
ここでは、株式投資を長く続けていくための「仕組み作り」について説明します。
株式はそのリターンの高さから資産形成に欠かせないものですが、それと同時にリスクの高い資産でもあります。
歴史を振り返れば、これまでに多くの個人投資家が、株価が低迷したり暴落したりした時に株式市場からの退場を余儀なくされています。
これはようするに、リスクが顕在化した際に対応しきれないことであり、また、対応しきれないのは準備が不足しているからに他なりません。
したがって、事前にしっかりと準備をして、暴落時にも対応できる体制を整えておけば、株式市場から退場させられることなく、株式投資を長く続けていけるのです。
結果として株式の潜在的なリターンを享受し、資産形成を着実に進めることもできるでしょう。
配当金の「見える化」でモチベーションをメンテ
株式投資を長く続けていくためには、「少しずつでも着実に資産形成が進んでいる」という実感を持てるかどうかが重要です。
株価は日々変動します。なので、株価を基準にして資産の増減を考えていては、毎日の株価の変動で神経をすり減らしてしまいます。
そのような状態で、長期保有などできるはずもなく、毎日の株価の変動を気にすることは、長期投資家にとってマイナスでしかありません。
そもそも、毎日の株価の変動を気にすることは、長期投資という視点からは無意味でしょう。
また、定期的に受け取ることができる配当については、株価の変動ほどの変化はありません。
通常、配当額は決算時に決定されるため、額の増減は年に1回のみという場合が多く、複数回あったとしても、業績予想の変動が発生したことにより必要となる程度。
学んだことを反映した投資さえできていれば、基本的に受取配当金は毎年増え続けることになります。これは長い目で見れば、極めて蓋然性の高い未来です。
ただ、毎年の受取配当金が増え続けていたとしても、意識しなければ実感することはできません。また、意識はしていても、記録をつけておかなくては振り返って検証することができません。
なので、配当金が振り込まれた際には必ず記録をつけるようにし、また、余裕があれば1年間に受け取ることができる予想受取配当金の一覧表を作成してみましょう。
投資をする都度、記録をつけていれば、着実に受取配当金が増加していることを実感でき、記録することが楽しみになってくるでしょう。
このように、受取配当金の記録をつけることを習慣化し、資産形成が進んでいることを「見える化」することは、長期投資のモチベーションの維持に寄与してくれるはずです。
リスクを激減させる「分散投資」の基本と応用
「卵は1つのカゴに盛るな」
これは有名な相場格言です。ようするに、長く株式投資を続けていくには、投資先の分散、いわゆる「分散投資」が必要ということ。私も分散投資をオススメします。
この対極にあるのが「集中投資」です。
当たればリターンは大きくなるものの、外れた時の損失も当然ながら大きく、再起不能となるような致命的なダメージさえ負ってしまうケースも。
リスクとリターンは常に表裏一体。原則として例外はありません。
世の中には、「ある程度の資産ができるまでは、集中投資で短期的に資産を増やそう」という論調もあります。聞き心地も良く、一見すると魅力的に映るかもしれません。
たしかに、集中投資による運用が思惑通りに進めば問題ないのですが、なかなかそううまくいかないのが現実です。
そもそも、集中投資で短期的に資産を増やせる能力が、投資初心者に備わっているという前提が間違っており、この発想は資産形成というよりもギャンブル的な要素を含んでいます。
いずれにせよ集中投資は、長く時間をかけて着実に資産形成をおこなっていくことを目的としている投資初心者が検討するには値しません。
株式投資に絶対はありません。極端な発想かもしれませんが、投資先企業が破綻すれば、保有している株式の価値はゼロになります。
優良企業と考えて投資した結果が、悲劇で終わるケースも存在するのです。
ここで、私がこれまで体験した、分散投資の必要性を痛烈に感じた事例を2つ、紹介します。
1つは、かつては石油の生産をほぼ独占していた、セブンシスターズと呼ばれる7社の内の1社であるブリティッシュ・ペトロリアム(現BP)が、2010年に起こしたメキシコ湾原油流出事故で、株価が短期間に50%以上下落したもの。
当時のブリティッシュ・ペトロリアムは世界有数のグローバル優良企業で、何の不安もない投資先でした。
にもかかわらず、たった1回の事故でその地位を失ったのです。
もう1つは、東日本大震災時の東京電力です。
当時、電力株は高配当安定株の代表格で、その抜群の安定感からも、未来永劫安定した配当を出し続ける永久債券と呼ばれていました。
当時の東京電力は、そんな電力株のリーダー的存在。ベテランの投資家であれば、一度は保有したことがあると思われる日本屈指の優良企業でした。
その東京電力の株価を見てみましょう。
震災当日2011年3月11日の終値が2,121円です。
そこから3営業日連続でストップ安となり、値が付いたのは4営業日目で、741円。わずか4日で、資産の3分の2を失ったのです。
その後も株価は下落を続け、3カ月後の6月9日には、取引時間中に148円まで下がりました。3カ月で約93%の下落です。
想像を膨らませてみましょう。あなたが、大学卒業後から同じ会社に35年以上勤務して、2,000万円の退職金を受け取ったとします。
「業績や配当も安定しているし、東京電力の株でも買って、配当を老後資金の足しにするか」と考えて、2,000万円で東京電力を一点買いします。
その2,000万円が、わずか3カ月で150万円程度の価値となり、配当が0円となったわけです。
こんな惨状に耐えられるでしょうか。
多少オーバーかもしれませんが、1つの企業に集中投資し、こういった事態に見舞われたら、そこでゲームオーバーです。
けれど、投資先を2つに分散してさえいれば、失うのは50%です。
4つなら25%、8つなら12.5%と、投資先の分散を進めていけばいくほど、万が一の場合でもダメージを少なくできます。
また、投資先企業を分散させるだけではなく、業種も分散させる必要があります。
いくつかの企業へ投資していたとしても、同一の業種であれば、株価は同じ方向に動く傾向にありますので、分散の効果が限定されてしまいます。
たとえば、通信セクターのNTTを買ったら、次は同じセクターのKDDIを買うのではなく、金融セクターの三菱UFJフィナンシャル・グループを買ってみて、その次は、トイレタリーセクターの花王を買ってみる。
このように、業種も意識して分散させていくようにしましょう。
さらに、「投資時期」の分散も効果的です。短期的に株価が上がるか下がるかは、誰にも分かりません。
ある程度の余裕資金があり、一括投資ができる状況にあったとしても、買った直後に暴落が発生してしまったら、その精神的な負荷は甚大となり、投資初心者が耐えるには苦しい展開となってしまいます。
一括投資でも時間軸を分散させながら投資しても確率論的には同じかもしれませんが、精神的負荷という観点からは、少しずつ買っていく方が株式市場から退場させられることなく、投資を長く続けられる可能性が高いのではないでしょうか。
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