資産管理のアドバイザーとして、確かな広がりを見せているのがIFA(金融商品仲介業者)だ。IFAとはIndependent Financial Advisorの略で、特定の証券会社などに縛られることがない独立したファイナンシャルアドバイザーを指す。
日本証券業協会が発表している「金融商品仲介業者の登録外務員数」を見ると、2011年6月末は2,275人だったが、2022年6月末時点では5,558人まで増えている。「IFAという言葉を聞く機会が飛躍的に増えた」と感じている人も多いのではないだろうか。
そこでZUU onlineでは、IFAに関する連載を立ち上げ、各企業がどのような特徴や信念を持って資産管理をアドバイスしているのか探っていく。「すべてのビジネスの起点はお客様 一生涯のお付き合いをしたい ―― 株式会社W&P代表 三枝浩紀氏(前編)」に引き続き、株式会社W&P代表の三枝浩紀氏に話を聞いた。
銀信証を横断した運用を提案できることが強み
―― IFAも業者によってさまざまな特徴があると思います。御社の場合は「ここが強い」「この部分に特徴がある」といったことはありますか?
これは少し難しい質問です。と言うのも、我々は「すべてのビジネスの起点はお客様」と考えています。お客様によってニーズが違えば、ご提案すべきソリューションも違うので、他社との差別化を打ち出すのが難しい部分があります。所属しているIFAによっても、得意ジャンルが異なるのが事実です。
ただ、所属IFAの多くが「銀行系の対面型証券会社」出身なので、銀信証の組織を横断した提案の経験から、これらを踏まえた運用は強い傾向があると言えます。銀信証とは銀行、信託、証券の略ですね。有価証券だけの運用にとどまらず、ファイナンスや相続等の信託に関する分野を絡めた深い知識を持つプレイヤーは多いと思いますね。
―― IFAによっては「収益の半分が不動産」「販売する商品のほとんどが外債」といったように、特定のプロダクトやサービスに偏っているところもあると思います。
その点で言うと、私たちは何か1つの特定のプロダクトやサービスに偏っていることはなく、バランスがよいP/Lを築けていると思います。なお、私たちは宅地建物取引業者ではなく、不動産に関するご提案をすることもありますが、P/Lにおける不動産収益の比率はそこまで高くはありません。
今年は「今後どうなってしまうのか」というご不安の声が多かった
―― 外資系プライベートバンクなどでよく目にする「ハウスビュー」というものは存在するのでしょうか。外資系プライベートバンカーは、原則としてハウスビューから外れる提案をしてはいけないと聞きます。
そのようなハウスビューはありません。会社として所属IFAの専門知識を高める努力は日々行なっていますが、基本的には各IFAが自分で情報収集して、自分の考えを持ったうえで、お客様にご提案しています。
繰り返しますが、「すべてのビジネスの起点はお客様」ですので、お客様のご要望が第一です。したがって、あくまで可能性の話ですが、A様には米ドルのロングをご提案して、B様にはショートをご提案することもあるかもしれません。その結論に至る過程において、何かしらのコンプライアンス上の問題があると思われる場合は我々経営陣から指導しますが、マーケットの見通し自体は各人で色々な考えがあってよいと考えています。
―― 2022年はウクライナ戦争があり、世界的にインフレが止まらず、円安、株安、債券安とマーケットが大きく動揺しました。お客様からの相談の声としては、今年はどのようなものが多かったのでしょうか。
近年は米国株が強かったなか、2022年に関しては様々な意味で変動が大きかったため、「今後どうなってしまうのか」というご不安の声が多かったように感じます。
急激な円安が起こる前からドル建て資産をお持ちのお客様は、株安や債券安が起こっても円安でカバーでき、円建てで見たときの資産額はそこまで傷んでいない方もいらっしゃいますが、やはりボラティリティの高さには一定の警戒感を感じていると思います。