Paintography. Tropical plants and a portrait of a young man
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こんにちは、ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社の山口です。

「一代で5億円以上の資産を築いた富裕層たち(前編)」に引き続き、今回も一代で5億円以上の資産を築いた2人の富裕層を紹介します。1人は弁護士として大きな成功を収めたD氏、もう1人は日本株の超長期保有で財を成した技術者のO氏です。2人に共通するのは、厳しい局面に遭遇しても、自身の運用スタンスを簡単には変えず、長期的な視点を重視しながら資産を効率的に働かせてさらに資産を増やしている点でしょう。

時流に乗る鋭いビジネス感覚で莫大な資産を築いた弁護士

まずご紹介するのは、地方都市の一等地に本社を構える弁護士法人の代表であるD先生です。最近でこそテレビCMや広告で弁護士事務所の名前を見る機会も増えましたが、D先生の事務所ではビジネスとして大きく打って出るというスタンスではなく、地域密着型、2拠点にて堅実に業務を拡大されてきました。

開業してからすでに20年以上経っていますが、訪れるクライアントを安心して迎えることができるよう、事務所は、決して華美ではなく、あくまでも落ち着いた品のよさを感じさせる造りに徹しているとのことです。お会いして話をうかがうと、代表のD先生は、以前より過払い金請求の返還対応など、その時々にクライアントが求めるニーズに一早く対応する体制を整えてきました。時流に乗る鋭いビジネス感覚で他の大手事務所に先駆けるスピード感を発揮し、事業は順調に拡大、一代で巨額の資産を築かれたことが分かりました。

その資産は、運用管理においては「法人本体」と「先生の個人資産」そして、「資産管理会社」に分けて管理されていました。金融機関との取引においてもそれぞれの口座を持ち、資産を国内外の不動産や金融機関の富裕層担当部門であるプライベートバンキング、さらにご自身で管理する運用資産と色分けして運用を行っていました。

D先生は敏腕事業家らしく、資産運用においても合理的かつアグレッシブなスタイルで、ここがタイミングと見れば現在の保有資産を担保に多額の借り入れ(有価証券担保ローン)を活用して資産にレバレッジをかけ、不動産投資や外貨建ての債券投資を行い、利ザヤを確実に取っていきました。堅実性を重視した取引で、たとえば1.5%で借入を行い、5%ほどで運用できれば、資産規模が大きいのでかなりの収益になります。

実は超富裕層になればなるほど、具体的には運用資産が数十億円を超えるような方ほど、借り入れを積極活用していることは注目に値します。その投資判断を行うD先生の分析や銘柄選別はシビアの一言。ご存じの通り、債券取引は株式市場のような取引所取引ではありません。金融機関同士の相対取引となり、現在の価格や取引情報について一般投資家が得られる情報は少なく、金融機関の担当者からの情報や提案に頼ることになります。その意味で、どのような担当者と付き合うかが富裕層の資産運用においては重要なポイントです。D先生においては、まずご自身で得られる範囲で徹底的に情報収集を行い、自分なりに打ち合わせに必要な情報や知識を準備したうえで、担当者と投資候補となる債券の状況や利回り水準に納得がいくまで打ち合わせを行っていました。

D先生の運用総額は、法人、個人、資産管理会社を合わせると実に30億円を超えていました。そこに一部レバレッジをかけるのですから普段なかなかお目にかかれない資産規模です。カリスマ経営者の側面を持つD先生は、ネット証券などを活用して、勉強と称してそれこそ株式の信用取引からFXまであらゆる取引を自分で試していたからこそ、巨額の資産運用を計画的に行えたのだと思います。そんなD先生の運用管理には独特な考えがありました。それは、運用資産(もしくは商品)ごとに、それぞれが得意な金融機関(または担当者)を使い分けるというものでした。

超富裕層のもとには一般的に複数の金融機関が出入りしており、ひっきりなしに担当者から情報提供や投資提案があります。各社とも預かり資産を他社に持っていかれないよう必死なのですが、ロットが大きく、高収益が狙える提案となると、各社とも提案内容はある程度似通ってきます。そこでお客様は相見積もりのような形で各社の提案内容を比較検討することも少なくありません。

D先生は、まとまった資金については、超富裕層では定番の外貨建て劣後債券や投資信託、株価参照型の仕組債などで運用していました。ただ、資産全体のポートフォリオを意識するというよりは、商品ごとに個別の目標リターンを決めて、各々の投資妙味を重視していました。当然のことながら、提案内容や条件について非常に慎重に検討しています。そこでユニークだったのが、D先生が金融機関ごとに最も得意な商品分野を把握し、A証券は仕組債、B金融機関は外国債券、C証券は投資信託、というように使い分けていた点にあります。D先生いわく、「機関投資家も多く取引するような劣後債などは、金融機関が在庫を持たずに相対で市場から直接調達するから、やはり欧米のメジャープレーヤーが圧倒的に強いよね。仕組債も同じような傾向はあるけれど日系大手も強い。加えて仕組債は担当者のセンスもかなり重要かな。あと投資信託は国内大手がフォローのバックアップ体制という点でしっかりしていると思う。まあ大手証券会社は人も多いし、手広くなんでもやっているからね」

これも超富裕層ならではの視点と言うべきでしょうか。一般的に資産管理に定番のポートフォリオの考え方を横に置いておいて、餅は餅屋に聞けと言わんばかりに金融機関との付き合い方をまず重視するスタンスです。担当者のセンスや力量もかなり重要ですが、金融機関ごとに強い分野には確かに差があり、筆者の経験からも同感です。そこをうまく理解して利用すると、その都度、各社からの提案を見比べる手間が省け、各社の担当者との信頼度も高まってよい関係になるとD先生は考えていました。

具体的には、欧米の主要金融機関が発行する外貨建て社債や劣後債などのハイブリッド証券、事業債などは、基本的には外資系金融機関が強いです。これらの債券は金融機関の相対取引で仕入れますので、やはりグローバルメジャープレーヤーである外資系金融機関の独壇場です。筆者も実際に、お客様の要望や債券のイメージを債券部に伝えると債券ディーラーが素早く対応する点には、国内系にない強みを感じていました。

国内大手証券会社でも同様の対応は可能なケースもありますが、通常担当者から提案される場合はその証券会社の在庫玉であることが多いです。これは、証券会社がいったんマーケットから仕入れた債券を在庫ストックとして保有し、各営業店のお客様に提案リストとして案内しやすいようにしているためです。

また、大手証券会社では「店内打ち返し玉」というものがあります。これは、新規に債券が発行される際に販売を引き受けた証券会社の中で、お客様に販売したものが、その後、お客様の売りで販売証券会社が買い取り、ストックとなったものを指します。打ち返し玉はマーケットでの調達コストがないので、実勢の水準からみて魅力的な場合があります。一般的に在庫リストの債券は仕入れ条件がよいものもあり、国内大手証券会社の提案が魅力的なことも多々ありました。

仕組債については、発行体となって債券を組成するアレンジャーに条件を問い合わせる際、基本的にはどの金融機関から聞いても、同じ条件、同じタイミングであれば理屈上では差はないはずですが、実際には販売側の証券会社とアレンジャーとの関係で多少なり条件に差が出ることはあります。そもそも仕組債のプライスを出すアレンジャー側としても、刻々と変化する市況と自社のリスク管理の都合などで販売会社に提示するプライスは常に変動していますので、多数のアレンジャーと太いパイプを持つ国内外大手証券会社ではコンペ形式でベストプライスを入手することができます。もちろん外資系金融機関も強いですが、D先生は外資系とは違って、仕組債に積極的な国内PB系証券会社を取引に選定していました。

投資信託については、商品ラインナップ数でみれば断然国内系大手証券会社が多く、外資系は取扱数こそ少ないですが独自の外国籍投信を扱っていたりします。ただ、国内系大手証券会社の取扱数が多いといっても、今やインターネット証券でも各社の投資信託を取り扱っているため、単純に取扱数でみた大手証券会社の優位性はありません。そのためD先生はフォロー体制を重視されていました。商品で差別化しにくいのであれば担当者のフォローの質やその他のサービスが重要になります。担当者との相性もあるでしょう。

このように、D先生は各社の特徴や強みを把握して複数の金融機関とうまく付き合っていました。資産運用ではポートフォリオをしっかり組んで、アロケーションや商品選択ももちろん重要ですが、パートナーとなる金融機関や担当者を選ぶところにもこだわるのが超富裕層たるD先生の極意です。