本記事は、ひろゆき氏の著書『1%の努力』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。
権威に弱い自分
「環境」をどのように捉えればいいかについて話をしていこう。
あなたは、「権威」に弱いだろうか。
かくいう僕も、医者や学者の言うことは聞くから、権威に弱いと言えるかもしれないので、程度の問題だ。
その程度を確かめる1つの判断軸がある。
「自分は先輩に歯向かえるか?」
どうだろうか。
骨の髄まで体育会系が染み付いている人は、先輩に歯向かおうという意識が端からない。
疑うことすら悪いことだと思っている人もいる。
それだけ権威に弱いのであれば、従順に生きたほうが幸せだ。いまさら無理に戦う必要はない。そういうことを僕は勧めない。
社会の中で、1年でも早く入社しているほうが偉いという価値観は、官僚の世界が有名だ。
事務次官のポスト1つを巡って、出世レースが繰り広げられる。何年に入省して、東大の何学部で、というのが重要な要素だ。
官僚じゃなくても、普通の一般企業でも、そつのない人が年齢順に出世していく。
これは、昔からの社会システムの影響がある。
昔の日本は、長男が全部の財産を引き継いで、次男や三男は勝手に生きていくようなことが当然とされていた。今もその名残はある。
いわゆる家父長制であるが、その社会システムを持っている国は、「権威主義」が強い。
偉い人が決まったら、それに従うのが当たり前になり、偉い人が決めることを無意識に受け入れてしまうのだ。
頭のいい三男が文句を言っても、長男が決めたことは絶対だ。
そういう家族制度の国は、外の社会でもそれに
だから、実際に兄弟がいるかどうか以前に、社会システムとしてどういう家族形態を取っている国なのかで、考え方にまで影響が及ぶ。
家父長制では親から、「家督はお前に継がせない」と言われると、すべてがなくなってしまう。
だから、どんな理不尽なことも受け入れてしまう。
ちなみに僕は留学時代、「先輩が言うことは絶対だ」なんて考え方はまったく感じなかった。
個人が主張し、おかしいと思ったことはおかしいと言う。アメリカはそういう環境だった。先輩、後輩のような関係は、ない国にはない。
大陸と島の違いもある。
島国の場合は手に入る食料と分ける人数がおおむね決まっている。
一方、大陸の場合は、隣の国が襲ってきて全部取られることもあれば、広大な土地で少人数で大量生産できたりもする。
その違いがあると、島国の人たちは、一生懸命に取り分を増やしたり食料生産を多くしたりするより、自分が偉くなって「配分を決める人になる」という戦略を考える。
誰からも文句を言われず配分を決められる人になることがゴールになる。
昔話のように聞こえるかもしれないが、つい20数年前、バブルが崩壊するまでは、当時の大蔵省が決めたことに、みんなで従っていたのだ。
権威に弱い国民性を、いまだに引きずっている部分がある。
アメリカや中国では、小さなベンチャー企業がいきなり大企業と取引を始める例がよくある。
それは、どちらの国も契約社会が成立しているからだ。
日本でも契約はあると反論するかもしれないが、本当の契約社会というのは、お互いの利害が一致していないのが当たり前という前提で契約をする。
だから、お互いが自分の取り分を増やしたい思いがあるままなので、利害は一致していない。
「一部だけが一致しているから、ここの部分だけやりましょう」という状態で契約し、その後、もし揉めたときは裁判で解決する。
日本の場合、契約書が後回しだったり、契約書の文言を読まないでハンコを押したりするが、それはお互いの利害が一致したという前提で仕事をするからだ。
だから、利害が一致してなかったり、なんとなく信用の置けない無名な会社だと契約をしない。
その代わり、契約した会社とは、未来永劫、一心同体のような関係になる。
大企業や有名企業であることが、大きなステータスとなるのだ。
ビル・ゲイツが、ウィンドウズで世界を席巻できたのは、日本とは真逆のアプローチだった。
当時、IBMが作っていたパソコンにMS-DOSというマイクロソフトが作ったソフトウェアを載せることになった。
マイクロソフトという、聞いたこともないシアトルの会社で、しかも学生がやっている弱小企業と、大企業のIBMがなぜ契約したのか。
それは、実際にプレゼンがうまくいったからだ。
実物のソフトを見せて、「ちゃんと動きますね。じゃあ、ぜひやりましょう」という判断が下されたのだ。
日本の大企業ならば、目の前でちゃんと動いたとしても、「信用できない」「実績がない」と、空気的な理由をつけて契約しないだろう。
日本はそのような社会なので、僕は「小さな企業で苦労するより、まずは大企業に入ったほうがいい」と言っている。
みんな権威に弱いのなら、権威を身に
同じ理由で、偏差値の高い大学に行くほうがいいだろう。
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年から、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人になる。2021年、自身のYouTubeの切り抜き動画の再生回数は、月間3億回を突破。主な著書に、45万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます