本記事は、ひろゆき氏の著書『1%の努力』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。
仕事の正しい選び方
この世にあるものは、必要なものと必要じゃないものに分かれる。
あなたは仕事や会社を選ぶとき、必要なものを選ぶべきだと思うのではないだろうか。
「電気・ガス・水道などのインフラはなくならない」
「銀行や保険業界は安全だ」
「食品業界は廃れることがない」
これらはすべて、「社会」にとって必要なものだ。
就職活動のとき、誰もが考えることだろう。
あるいは、「自分」にとって必要なものを選んだ人もいるかもしれない。
「音楽がないと生きていけない」
「ゲームばかりしてきたから、ゲーム業界に行きたい」
必要かどうかを考えるときに、後者のように、「自分」が軸になっているほうがいいと僕は思う。
ただ、好きを仕事にするのは、おすすめしない。業界を選ぶ基準にするのではなく、「体験」として、もう一段階、掘り下げてみよう。
「音楽がやりたい」→「大勢が一体になるライブ感を作りたい」
「ゲームを作りたい」→「何も考えずに没頭できる仕組みを生み出したい」
そうやって、「体験」にまで掘り下げると、会社や業界を渡り歩くことができる。
ここで僕の話をしよう。
2006年頃から、ドメインの差し押さえや書き込みに関わる裁判などで、2ちゃんねるがニュースとして報じられることが増えた。
「法的な問題で潰れるのでは?」と騒がれたが、アメリカのサーバーを使っていたので、アメリカのサービスということになり、日本の法律は通用しなかった。
とはいえ、無法地帯のように見えて、ちゃんと手のひらの上でコントロールされていたとも見ることができた。書き込みに関する警察からの捜査には協力していたからだ。
それに、2ちゃんねるを潰したとしても、2ちゃんねる的な場所は存在し続ける。
需要がある限り、サービスは形を変えて残り続ける。イタチごっこになるだけだ。
家の近くの行きつけの店が潰れたとしても、あなたはきっと別の店に通うようになるはずだ。コンビニが潰れても買い物はやめず、遠くのスーパーに行くだろう。
2ちゃんねるが成功した理由は、「匿名で自由に書き込みたい」という欲望があったからだ。ネーミングや機能が優れていたからではない。
「なくなったら困る体験は何か?」
これが、仕事をする上で考えるべきことだった。
根幹にある体験が何なのか、自分を止められない瞬間は何なのか。
それをつかみ切ることが大事で、好きかどうかはあまり関係ない。
2ちゃんねるのシステム自体は、誰でも作れる。同じスクリプトは誰でも書けるし、似たようなウェブサイトは存在していた。
ただ、なぜそれが面白いかの感覚はちゃんとわかっていた。だから、長く続けられた。成功の要因はそれだけだ。
2ちゃんねるの根幹にあるものは、たとえサービスがなくなっても、ずっと生き残る。2ちゃんねる的なニーズを、別のウェブサイトが満たす。
それがいま、ツイッターやヤフーのコメント掲示板、ユーチューブのコメント欄に流れているだけだ。
いくら技術が進歩しても、「使いたい」と思う人がいないとサービスは成立しない。
発明王のような人が、「自動卵割り機」みたいな発明をテレビで紹介することがある。しかし、これらは「ないと困る人」がいない。
「エッグスタンド」の話も同じだ。僕がエッグスタンドの必要性にピンとこなかったのは、そういう理由がある。
「2ちゃんねる的な場所」は、ないと困る人がいる。
「匿名で何かを吐き出す場所」は、絶対に未来永劫、なくなることはない。
「この体験が、なくなったら困るな」と、あなたがそう強く感じられるものを安定収入にするのがいい。あるいは人生を捧げてもいいかもしれない。
そこには第三者の意見が入る余地はない。
誰がどう思っているかは、どうでもいい。
ほかの誰でもない、「この自分」が困るのだから、自分でやる。
「喜んでいる人の笑顔が見たい」
「社会の役に立ちたい」
「市場性がある」
こんなものは、すべて後付けだ。あるいは、就活サイトが作り出したキレイゴトだ。
「それがないと自分が困る」
核にあるものは、これしかない。
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年から、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人になる。2021年、自身のYouTubeの切り抜き動画の再生回数は、月間3億回を突破。主な著書に、45万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます