本記事は、ひろゆき氏の著書『1%の努力』(ダイヤモンド社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ひろゆき
(画像=撮影:榊智朗)

トップが下を殺しうる

以前、孫正義さんが、「死ぬ気でやればやれないことはない」ということをツイッターに書いていて、それに僕が噛み付いたことがある。

孫さんのように人の上に立つ人が、下に向かって「努力しろ」と言うのは、社会にとって逆効果だと思ったからだ。

ついこないだ、日本軍はアメリカと戦争をした。あの当時、どう考えても日本軍がアメリカ軍と戦争して勝てるはずがなかった。

石油や弾の数、食料などの資源や物資の量が違うし、兵士の数も違う。

なのに、個人の努力でなんとかしようとして、結果、たくさんの人が命を落とした。上の人たちの判断で、多くの一般の人たちが犠牲になったわけだ。

下がいくら頑張ったところで、やはり勝てないものは勝てない。

正しい戦略で正しい作戦かどうか。そういった上の判断が先にある。

いま、東芝などの大企業が経営的に傾いている。

東芝の社員、1人1人の努力が足りないかというと、そうではない。

おそらく、他の企業と比べても、現場の人の努力の質や能力の差は、そこまでないだろう。

悪いのは、経営層だ。

東芝の場合、原発事業に投資して赤字を垂れ流した結果、経営がガタガタになってしまった。

東芝の社員の努力が足りないわけじゃない。

大きな組織のトップになると、現場の状況がわからなくなって、「みんなの努力が足りない」などと言い出し、スタッフたちの責任にしたがる。

しかし、本来はトップの判断の間違いで結果が決まってしまう。

ということは、逆も言える。

「上の判断がよければ、下がテキトーでもうまくいく」

テキトーは言いすぎかもしれないが、優秀な経営層がきちんとした戦略を立てていれば、末端はマニュアルの指示通りにさえ動いていればいい。

たとえば、マックスむらいさんがトップの会社が上場した。

そこのCFOという財務の一番偉い人が3,000万円ぐらいを横領していた。

警察沙汰になったのだが、要するにCFOがクソ野郎だったわけだ。

しかし、マックスむらいさんがユーチューブに懸けて、ユーチューブで仕事をして、動画を上げて、スタッフを増やして、商品を売って、上場して以降、いまでもきちんと経営は成り立っている。

スタッフにクソ野郎がいても、上の人の判断が正しければ、どうにでもなる。

しかし、物事の失敗は、判断する上の人たちの判断間違いのほうが原因としては大きい。

トップがどんな考えを持って、どんなビジョンを描いているのか。

それは一度、気にしておいたほうがいい。監視しておいたり、直接聞けるならそうするのも手だ。

だって、自分ひとりが頑張っていても、上の判断ですべてがムダになることがあるのだから。

あるいは、まわりを見回してみよう。

トップが優秀だからといってラクしている人たちが多いなら、それはそれで少し焦っておいたほうがいい。

環境がいいおかげで、自分の実力以上の成果が出ることはよくある。

それを自分の実力と勘違いしてしまうと、タチが悪い。

心の中で、「これは環境のおかげだ」と思うだけでいい。

それだけで、周囲の人たちから頭一つ抜きん出ることができる。

イチローさんが「努力を努力だと思ってる時点で、好きでやってるやつには勝てないよ」と言っていたが、僕もそれは正しいと思う。

たとえば、僕はゲームもやるし、映画も観るし、マンガも読む。たくさんの時間をエンターテインメントに費やすことが多い。

「毎日2時間、必ず映画を観てください」と言われても全然できる。

しかし、毎日2時間、必ず編み物をしてくださいと言われたら、たぶん1週間もしないうちに気が狂いはじめる。

好きではないものを強要されると、人はそれを努力と感じてしまう。

僕が映画を好きで観ているのは、努力だと思ってないし、好きでやっているから、それを圧倒的な努力で映画を観ていることになったら、それは逆に、映画が嫌いなことになってしまう。そうなると、映画が好きな人には勝てない。

たとえば会社組織で、社員が努力しないと回らない会社と、ダラダラしていても回る会社があったとしたら、きっとダラダラやって回る会社のほうが安定する。

徹夜してどうにかクリアしたとしても、それを毎週やってくれと言われたら、体を壊す。

仕事というのは基本的に、毎月働いてお金をもらって、次の月も同じように働くということを、何十年とやっていくものだ。

20代から60代後半ぐらいまで働くわけだから、無理しないで長く続けるほうが大事だ。

圧倒的な努力で徹夜を何度もやっていたら、いつか倒れてしまう。

若い人でも、うつ病になったりする。

本人が好きでやっているのはいい。テレビ局や広告代理店の人の中には、仕事が好きで好きでたまらないから、寝ないで十何時間働いているような人がゴロゴロいる。

それは好きで勝手にやっているから全然いい。

でも、「自分がやっているからお前もやれ」と言ってやらせるのは、ちょっと違う。

「頑張りは人に押し付けない」

「成功した人はすべからく努力をしている」みたいな神話があるけれど、努力していると思われるかどうかの問題だ。

僕はたぶん同じくらいの年齢の人たちよりは、わりと幸せに暮らせているから、成功している側だと思うけれど、そんなに努力した覚えはない。努力したと思われるだけでいい。

学生時代は、特許を取って一発当てるしかないと本気で考えていた。寝ている間にお金が入るものって、特許ぐらいしか思いつかなかったのだ。

特許の成功例だけを聞くと、ほとんどはおかしな発想をする人がたまたま思いついたものばかりだ。

いろいろなところに手を広げ、勘所を探り、うまくいきそうなものだけに集中する。

そして、うまくいったら、それが「努力だったのだ」と後付けされる。

それが真理だ。

「たまたま」を待とう。努力を押し付けるのはやめよう。それだけで、世の中はもっと幸せになるだろう。

=1%の努力
ひろゆき
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年から、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人になる。2021年、自身のYouTubeの切り抜き動画の再生回数は、月間3億回を突破。主な著書に、45万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。

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