本記事は、バルバラ・ベルクハン氏の著書『無神経なアイツに余裕で言い返す! 大人の会話術』(CCCメディアハウス)の中から一部を抜粋・編集しています。

攻撃したくなったら

攻撃したくなったら
(画像=kieferpix/stock.adobe.com)

争いを解決するためにはどうすればいいでしょうか?

きちんと意思を疎通することです。

それはまさに、ひとつの芸と言えます。残念ながら、私たちの攻撃心は非常に立ち上がりが早いのです。あなたが傷ついたり、不当に扱われたと感じたりしたとたん、頭をもたげてきて、そのままどんどんエスカレートしていきます。

問題は、あなたが対抗する姿勢でいるかぎり、解決を導くような対話ができないということです。相手はすぐに、あなたに和解の意思がないことに気づきます。いくらきれいごとを並べても、攻撃的な雰囲気は隠せません。こうして争いは「果てしない物語」になるのです。

あなたの望みは?

まずはじめに自分の気持ちを整理すること。これがもっとも重要な一歩です。というのは、それによって行動が変わるからです。自分が攻撃的な気持ちを抱いていることを認めましょう。それから、自分が本当に望んでいるのは何だろうかと、考えてみます。

そんなのわかりきっている、とあなたは言うかも知れません。〈相手は誤りを認め、後悔し、謝るべきだ。そして苦しまなければ。なんと言ったって、悪いのはあっちなんだから……〉

けれども、ここで立ち止まって考えてください。それは本当に、あなたのたったひとつの望みでしょうか?もしそうなら、あなたはいまだに攻撃したいという気持ちにとらわれていることになります。けれども、自分の気持ちを整理すれば、そこから抜け出すことができます。まあ、そうは言っても、それにはいくらか時間がかかります。しばらくたってからもう一度、自分が何を望んでいるのか、落ち着いて考えてください。

あなたは問題を解決したいと思っているでしょう。ひょっとすると、もう二度とこんなことをくり返さないようにしたいのかもしれません。けれども、そのために相手を傷つけたり屈服させたりする必要はないのです。それどころか、相手に責任を負わせる必要すら。

相手と話しあう

攻撃したり抵抗したりせず、冷静に事態について話すことです。この件でいかに腹を立てたか、あるいは失望したかについて自分の気持ちを率直に伝えましょう。あなたのことを理解させようとか、あなたのほうが正しいと相手に認めさせようとかはしないように。

攻撃したり抵抗したりする衝動をいくらかでも抑えられれば、それで十分なのですから。

そのための重要なポイントを次にまとめておきました。

諍いの原因を明らかにする

→まず自分の気持ちを知る
相手と話しあう前に、自分が何を望んでいるのか、はっきりさせておきます。

・私の望みと要求は何だろう?
・相手に何を望んでいるのだろう?
・何を恐れているのだろうか?
・絶対に譲れないことは何だろうか?

これらの問いに落ち着いて答えてください。そのとき、相手はあなたの望みをかなえるためにいるのではない、ということを忘れないように。でも、それにもかかわらず、自分が何を望んでいるのか知っておくことは重要なのです。そして、それをきちんと言葉にすることも。

→気持ちをしずめてから話をする
怒りで煮えくり返っていたら、感情的な言葉しか出てきません。これでは対話にはなりません。ただのケンカです。そうなったら何も解決できません。傷つけあうだけです。頭を冷やしてから話しあいましょう。

→期待しない
カッカしている人にきちんと話すよう期待してもだめです。相手が興奮していても受け入れましょう。ただ混乱しているだけなのですから。たとえ激高していても、それが あなたに向けられていると思わないことです。

→自分の気持ちを話し、相手の気持ちをあれこれ解釈しない
あなたにとって何が問題なのか、あなたはどういう状況にあるのかを説明しましょう。

・あなたのしたことは何か、そしてなぜそれをしたのか。
・不安に思っていることは何か。
・ガッカリしたり、イライラしたり傷ついたりしたのはなぜか。

このとき、いつも「私は……」で話し始めます。たとえば「私はこうしたい」「私は避けたい」「私が思うに」「私は知らなかったけれど」というふうに。こうして、つねに自分の行動や考え、感情をはっきりさせておけば、相手に理解してもらえるだけでなく、相手も自分について話す気になります。

非難したりとがめたりしないように。非難するとき、会話はたいてい「あなたは」「君は」で始まります。「君はまるで無関心だ」「あなたって信頼できない」「あなたがズボラだから」という言い方は反発心をあおってしまいます。

→みんなが最後まで話せるように
だれだって自分の意見を最後まで言いたいし、聞いてもらいたいものです。相手の話に耳を傾けましょう。たとえ、あなたから見て相手が間違ったことを言っていても、遮ってはいけません。思っていることを言う権利は私たちみなにあるのですから。あなたも最後まで言わせてほしいと堂々と頼んでいいのです。

→いま問題になっていることについてだけ話す
いま問題になっているテーマに話を絞ります。昔の諍いを蒸し返さないことです。未解決の諍いや問題は、また別の機会に話しましょう。

→攻撃されてもやり返さない
だれが何を間違えたかということが問題になると、相手は態度を硬化させ、攻撃してくるかもしれません。そのときにエスカレートしないように。大声を上げるのはやめます。相手をけなす言葉も控えます。

とはいえ、もちろんあなたができる範囲においてです。ひどく侮辱されたり、場合によっては暴力に訴える気配があったりしたら、その場ですぐに話を打ち切ります。対話というのは、最低限の善意と、ほんの少しでも歩みよろうという姿勢があってはじめて可能なのです。それがなかったら、もう話はできません。そういうときには時間をおくといいでしょう。

→解決法を探る
相手が悪いと言いたい気持ちはやまやまでしょうが、そこをぐっと抑えます。そうしたら相手だって黙ってはいないからです。双方に役立つ共通の法則を見つけましょう。それぞれが納得できる解決法です。大事なのはこれからであって、過ぎたことではないのです。

→忍耐強く、楽天的に
ローマは1日にしてならずというように、深刻な対立も一度やそこらの話しあいで解決できるものではありません。いったん中断して時間の経つのにまかせます。それからもう一度話しあいましょう。ケンカ腰ではなく、冷静に。諍いを解決するためには、うまくいくと信じるのが肝心。こういう楽天的な考え方が成功の秘訣です。

あらゆる手段を

相手とよく話しあうこと。私がいつもするアドバイスはこれです。そうは言っても、話をするたびに新たな争いになってしまうような深刻な対立があることも事実です。

こういう場合は第三者に入ってもらうと良いでしょう。その人は、双方がきちんと発言できるよう取り計らいます。争っている人々は、相手に何も言わせず、相手の提案を罠だと受けとることがしばしばあります。

中立的な第三者がいれば事は楽になります。離婚のときは弁護士や調停委員がそのような働きをしますし、会社によってはプロのアドバイザーや調停者が人事課にいることもあります。

もしすべての試みが失敗したら、法廷に持ちこむしか方法はないでしょう。さもなければ引っ越す、あるいは全面的に手を引く場合も。

事態がどういうふうに進もうと、必ず役に立つのは、争いの動機と過程をしっかりと見届けることです。

一度しっかりと理解しておけば、論争をくり返さないですみます。

無神経なアイツに余裕で言い返す! 大人の会話術
バルバラ・ベルクハン
1957年生まれ。ハンブルク大学で教育学と心理学を専攻。20年以上にわたりコミュニケーションのトレーナーとして活躍している。
自信をもって、人とうまく気持ちを通わせることのできるコミュニケーション術を提唱。多くの人にトレーニングを行い、たくさんの要望を受けて、コミュニケーションに関する本を執筆するようになる。
著書は次々とベストセラーとなり、『アタマにくる一言へのとっさの対応術』(草思社、SB文庫)、『ムカつく相手にもはっきり伝えるオトナの交渉術』『ムカつく相手にガツンと言ってやるオトナの批判術』(共にCCCメディアハウス)など邦訳も多数。彼女のコミュニケーション術を修得すれば、相手を傷つけることなく自分の言いたいことを伝えられるようになる。モットーは「戦わずして勝つ」。

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