この記事は2023年3月15日に三菱総合研究所で公開された「介護のデジタル化が介護難民を救う」を一部編集し、転載したものです。

介護のデジタル化
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

目次

  1. 69万人の介護人材需給ギャップの解消に向けて
  2. 「介護難民」の問題が現実のものに
  3. 介護のデジタル化が課題解決の一手に
  4. デジタル化を契機に経営力の強化を

69万人の介護人材需給ギャップの解消に向けて

株式会社三菱総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:籔田健二)は、深刻化する「介護難民」の問題解決に、介護のデジタル化がどの程度寄与するか試算しました。さらに、介護のデジタル化に向けたボトルネックの解消方策を提言します。

「介護難民」の問題が現実のものに

介護分野での人材不足が叫ばれて久しい。厚生労働省は「2040年には69万人の介護人材が不足する」という試算結果を発表した。このままでは、多くの高齢者が必要な介護サービスを受けられない「介護難民」となる恐れがある。

この問題を解決するためには、「介護需要の伸びの抑制」と「供給力の強化」を同時に進めることが重要だ。需要抑制策としては予防医療のデジタル化によって疾病への罹患や重症化を防ぐことが有効である※。また、供給力強化のためには、介護のデジタル化が不可欠である。

介護のデジタル化が課題解決の一手に

介護のデジタル化には見守りや記録の自動化などが挙げられる。デジタル化による効果は主に二つある。一つは生産性の向上である。業務(タスク)の一部を機械代替したり、プロセスを改善し手間を省いたりすることによってコストを下げることが可能だ。もう一つは生産性向上による処遇改善によって他業種からの人材流入が見込める点だ。

当社の試算結果では、予防医療と介護のデジタル化によって、2040年に生じる需給ギャップ69万人の解消が期待できる。ただし、これは予防医療の普及と介護のデジタル化が速やかに進行したケースであり、普及率が伸びなかった場合にはこれほど大きな効果は期待できない。

予防医療および介護のデジタル化による需給ギャップの解消(推計結果)
出所:三菱総合研究所

デジタル化を契機に経営力の強化を

デジタル普及のボトルネックとして、主に「デジタル化への投資余力の少なさ」や「業務効率化へのインセンティブ不足」等が挙げられる。どれも介護業界の構造的問題に根差しており一朝一夕に解決できるものではない。この先も日本の社会保障を持続可能なものとしていくためには、介護サービスの供給基盤を強固なものとしていく必要がある。そのために介護サービス事業者は生産性向上に対する不断の経営努力を行い、今回の新型コロナ感染拡大のような危機に対してもしなやかに対応できる強さを持つことが、何よりも重要であり、デジタル化はその手段の一つである。介護サービス事業者の経営基盤を強化するためにも、国はデジタル導入のための資金調達や経営力強化や業務プロセス改善に向けた人材育成等、事業者の努力を側面から支援していくことが求められる。

「予防医療×デジタル」が与えるインパクトと医療・介護制度改革の方向性(エコノミックインサイト 2022.3.23)

全文を読む:「介護のデジタル化が介護難民を救う~69万人の介護人材需給ギャップの解消に向けて~」[2.3MB]

株式会社三菱総合研究所
政策・経済センター