企業を取り巻く経済環境

近年、企業を取り巻く経済環境は厳しさを増している。ここでは、2020~2023年3月ごろまでの経済環境を振り返っていく。

・2020年
年初から新型コロナウイルス感染症が発生・急拡大し、世界中で「行動制限」という前代未聞の事態となった。生産・営業停止を余儀なくされて売上が激減した企業は多い。

・2021年
燃料費の高騰を主要因とした原料価格や物流費、包材費などが急激に上昇。また円安の影響で原材料を輸入に依存する企業が仕入れ原価の上昇に見舞われた。消費者価格への転嫁を余儀なくされた企業も多く少しずつ消費者の購買力が低下傾向に。

・2022~2023年3月ごろ
2022年2月末からのロシアによるウクライナ侵攻により、エネルギーや原料価格の高騰に拍車がかかった。また海外諸国との金融政策の違いの影響による円安傾向の継続で、人々の消費マインドも低下傾向にある。原材料費だけでなく電気代などの高騰により収益率が大きく低下した企業も少なくない。

消費者の意識や物価の見通し、消費行動などについては、内閣府が「消費動向調査」として毎月調査・公表している。直近の2023年2月の同調査によると消費者が感じる「暮らし向き」が前月から0.8ポイント低下、「耐久消費財の買い時判断」も0.5ポイント低下となった。

「耐久消費財の買い時判断」にいたっては、新型コロナウイルス感染症急拡大の影響で急激低下した2020年初期よりも現在のほうが低いのが実情だ。

企業自体が売上拡大を妨げていないか

多くの企業が厳しい環境に置かれているのは、間違いない。しかし厳しい環境にあるからこそ、あらゆる分析をするとともに売上拡大に向けた取り組みが必要といえる。まずは、自社に売上拡大を妨げている要因がないかどうか確認することから始めてみてはいかがだろうか。ここでは、中小企業にありがちな企業自身が売上拡大を阻害する可能性がある要素を5つ紹介する。

1. 経営者の高齢化

中小企業庁が公表している2021年度版「中小企業白書」によると「経営者が若い企業ほど、試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土があると回答する割合が高い」ことがわかる。このことから経営者が高齢になるほど現状維持志向が働く傾向にあることが示唆される。自身の年齢と重ね合わせ、現状維持志向にないか見つめなおしてみることが大切だ。

2. 所有と経営の一致

多くの中小企業のなかには「オーナー社長」として所有と経営が一致している企業も少なくない。もしくは、影響力を維持する先代社長が経営に介入し、当代社長は遠慮して身動きができないケースもある。前述したように経営者が現状維持志向であったり、変革・挑戦への意欲が低かったりすると、厳しい環境のなかでの売上拡大にはつながりにくい。

3. 取引先への依存度が高い

取引先との関係維持に配慮するあまり、売上拡大につなげるための新たな取り組みができないケースもある。なぜなら新たな取り組みによって赤字が発生するのを嫌う取引先もいるからだ。中小企業のなかには、少数の得意先で売上の大部分をまかなっているところも少なくないが、新たなチャレンジができなければ売上拡大は難しい。

4. リソース(資金・人材)不足

中小企業は、大企業に比較してどうしても資金や人材などの生産性向上のためのリソースが不足しがちだ。事業内容によっても異なるが、売上を拡大するにはノウハウや能力、実行力のある中核人材が必要になる。企業の資金力は、有望人材の採用や社員教育に影響するため、資金力不足も売上阻害要因となるだろう。

5. 経営者保証(リスクをとりにくい事業環境)

中小企業では、金融機関からの融資が資金調達の主要手段となっているが、経営者による個人保証(経営者保証)を要求されるケースが多い。経営者保証をつけることで融資を受けやすくなるというメリットはあるが、それにより「前向きな投資や事業展開が抑制されてしまう」といったデメリットもある。

繰り返し述べているように、厳しい経済環境下において新たな取り組みができなければ売上拡大は難しい。そのためまずは、「自社がリスクをとりにくい事業環境に置かれていないか」確認するところから始めてみよう。