政府もスタートアップ育成を支援

新たな事業に挑戦したいと思っても、短期で急激な成長を目指すとなると、スタートアップでの起業に二の足を踏む人もいるかもしれない。そもそも日本では、米国と違ってスタートアップが生まれやすいエコシステムが脆弱だ。起業家の数そのものが少なく、優秀な人は大企業に集中してしまいスタートアップに移動しない。

スタートアップに投資するベンチャーキャピタルはあってもファンドの規模が米国の場合に比べて小さいなど数々の問題点が指摘されている。しかし米国のGoogle、Meta(旧Facebook)、Airbnbなどを見てもわかるように、スタートアップは経済成長のドライバーとなる企業であり、日本政府も経済が成長軌道を取り戻すためには勢いのあるスタートアップの出現が不可欠との考えだ。

そこで2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、2022年11月には「スタートアップ育成5か年計画」を策定。この5年間でスタートアップへの投資額を10倍にして人材・資金・ビジネス環境などのさまざまな支援策を展開していく方針だ。各支援策の詳細は、本記事では割愛するが、主な支援策を羅列しておくので気になる人は経済産業省のサイトで確認して欲しい。

  • 未踏IT人材発掘・育成/未踏アドバンスト/未踏ターゲット事業
  • 海外派遣による起業家等育成
  • 中小機構のインキュベーション事業
  • 出向起業補助金
  • 信用保証協会における新たな信用保証制度
  • スタートアップへの再投資に係る非課税措置の創設
  • ストックオプション税制の拡充
  • オープンイノベーション促進によるM&A促進

この他にも良質なさまざまな支援策が準備されている。

スタートアップ成功例

ここでは、日本でのスタートアップ成功例を3つ紹介していく。

メルカリ

メルカリは、今や誰もが知るフリマアプリの「メルカリ」の企画・開発・運用をする会社である。2013年2月の設立から順調に出品数を増やし、サービス開始後約9年半で累計出品数約30億品(2022年11月27日)を達成した。「家庭に眠る不用品を売買する場を提供する」というビジネス自体は、目新しいものではない。

しかしメルカリは「スマホで出品物を撮影」「AIが商品名やカテゴリー、価格などを自動入力」「約3分で出品可能」とユーザー視点に立った画期的なアイディアおよびイノベーションで独自のビジネスモデルを確立した。資源を循環させる豊かな社会の創造にも成功している。創業5年後には、東証マザーズ(現:グロース)市場に上場。

創業時のメルカリの株価は1株500円だったがIPO価格(公募価格)は3,000円、初値は5,000円だった。まさにスタートアップの成功例といえるだろう。

シナモン

株式会社シナモンは、人間のように文書を読み取るAI OCRの「Flax Scanner(フラックス・スキャナー)」を中心に、企業の生産性を改善する人工知能プロダクトの開発・提供を行う企業だ。「AIで世界の進化を加速させる」をミッションに、日本・アメリカ・ベトナム・台湾などに200人以上のグローバルチームを持ち、多数の大手企業への提供実績を有する。

同社の法人設立は2016年10月。約3年後となる2019年11月25日発表のForbes JAPAN「起業家ランキング2020」では、同社代表の平野氏がBEST10に選出された。さらに同氏は、世界経済フォーラムが選出する世界に変化をもたらす40歳以下のヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)の2022年度クラスにも選出されている。

スマートニュース

スマートニュースは、多岐にわたる媒体で発信されている良質なコンテンツをリアルタイムでさまざまなチャンネルに分類して表示するスマホアプリを開発・運営する企業だ。単にニュースを流すだけでなく、約3,000のメディア(2021年12月時点)から自分の好みに合わせてニュースの特集や媒体を追加し、自分だけのニュースフィードをカスタマイズできる。

これによりユーザーは、「いくつもの媒体にアクセスせず情報通になれる」というサービスだ。2012年6月の設立後、約7年で日米合わせたダウンロード数は5,000万以上と急成長を遂げている。