本記事は、大澤 亮氏の著書『「プロ」に外注』(クロスメディア・パブリッシング(インプレス))の中から一部を抜粋・編集しています。
「人材不足」は課題ではない
人口減少や転職市場の活性化などで、企業にとっての中途採用はどんどん厳しくなっています。逆に被雇用者側からすると、多くの選択肢から仕事を選べる売り手市場です。一度会社に入ったとしても、スキルがある人材ほど、その会社に満足できなければ、すぐにほかへ行ってしまいます。
こうした「人材不足」を、多くの企業が課題として感じています。しかし、人材不足は決して本質的な課題ではありません。
企業にとっての目標は、ビジョンを達成することや、そのための売上を伸ばすことです。それが実現するなら、必ずしも人を採用する必要はありません。採用は、目標にたどり着くための、1つの手段に過ぎないのです。
会社は、自社が実現したいことを実現するために経営を行っています。例えば当社の目標は、「2028年までに、累計1万社の課題をプロ人材で解決する」です。
しかし、会社を存続させていくためには、売上をつくり、利益を出さなければなりません。利益を出し続けるには、絶えず成長する必要があります。そのためには、取引先はもちろん、株主、従業員など、会社を取り巻く人たち全員に満足してもらうことができなければいけません。
それでは、具体的に何をすればいいのでしょうか。それが本来、企業が考えるべき「課題」です。そして、各課題を解決するために打つべき手を「施策」と呼びます。
多くの場合、課題解決のためには、複数の施策の組み合わせが有効です。
例えば、「社名や商品・サービスの周知が足りない」ことが課題であれば、「広告を打つ」という施策が考えられます。同様に、「ブランドイメージが良くない」ことが課題なら、「広報活動」といった施策を検討します。
その広報活動も、SNS対応を強化する、既存媒体(テレビ等)のリレーション・露出を強化する、動画を制作してYouTubeなどで運営していく、オウンドメディアなどで自社の記事を蓄積していく、といったように複数の施策が考えられます。限られたリソースで運営していくためには、それらの組み合わせが重要になってきます。
施策をどう考えるかについては、後述します。まずは、企業の認識について、3パターンに分類して考えます。
①課題と施策が明確
②課題と施策がわからず、「わからない」ことに対する自覚はある
③課題と施策がわからず、「わからない」ことに対する自覚もない
①の場合、課題を解決するための施策が見えています。であれば、必要な予算、人材、施策などを揃えて、後は実行するだけです。しかし多くの会社が該当するのは、②もしくは③だと思います。その場合は以下の順で課題と施策を決定していきます。
①目標の確認
②戦略の策定
③課題の抽出
④施策の策定
課題を見つける前に、企業や部署、チームに明確な「目標」がない場合、まずはそこから考える必要があります。
例として、当社の目標は、先述したように「2028年までに、累計1万社の課題をプロ人材で解決する」です。こうした世界観に関する目標があれば、「3年後に、売上を2倍にする」といった数値的な目標もあるでしょう。ここで考える目標はいずれのものでも問題ありませんが、予算も人材も度外視して決めるようにしましょう。現状の予算や人材だけで計画すると、どうしても小さな目標になりがちです。
その目標を達成するために必要なものが、「戦略」です。戦略とは、自社の顧客や競合、強みなどを総合的に考えた上での、大まかな進むべきシナリオ、そこへの経営資源(お金や人)の配分です。キャリーミーの場合は、法人側に「プロ人材で多くの課題が解決できること」を想起してもらい、かつ、個人側に「優秀な人が独立する際の選択肢として認知されること」です。
そうして戦略を策定し、戦略を実行に移す段階で不足しているもの、「このままだと目標を達成できない」という部分が「課題」です。現実と目標とのギャップを分析し、「この差を埋めるには、いつまでに、どうすればいいのか」を考えます。この現実と目標の差こそが課題になります。
そして「施策」は先述の通り、課題の解決を図る実施策です。「戦略を実行するための施策」とも言い換えることができます。施策は通常複数あり、その組み合わせが重要になります。キャリーミーを例とすると、法人向けの広告やPR施策、地方展開などがあります。また、多くのプロ人材は、プロ人材同士のネットワークを持っています。プロ人材に新たなプロ人材を紹介してもらう、という施策案も考えられます。
このように、まずは目標を立て、目標を達成すべき戦略を策定し、そこへの課題が見えてきたら、それを解消するための施策を選んでいきます。当然のことながら、目標が変われば、戦略も課題も施策も変わってきます。また、戦略の方向性によっても、選ぶ施策が異なります。
川の流れのように、上流から順番に考えていくようにしましょう。