本記事は、星友啓氏の著書『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
読む前に勝負あり! 絶対にやるべきインプット習慣
やはり何事も準備が大切です。特に「読むインプット」では、全体の文章を読む前に勝負が決まってしまうと言っても過言ではありません。
「読むインプット」を始めるにあたって、まずすべきことは、自分が何のためにインプットしようとしているのかを明確に意識すること、つまり、【目的設定】です。
少し意外かもしれませんが、同じ情報をインプットする場合でも、その目的によって、効果的なインプットの方法が変わってきます。
例えば、政府の増税案についてのニュース記事があったとします。その日のメインニュースで、内容盛りだくさんです。
その記事を読むときに、「増税案の大筋をざっくり理解する」のが目的なのか、「増税案を批判するために材料を集めている」のかでは、その記事の読み方が変わってくるでしょう。
「大筋ざっくり」ならば、政府案のまとめを書いてある部分を重点的に読み、後の記事はサッと目を通すだけでいいのに対し、「批判」が目的ならば、政府案の詳細やその背景にある理由などを細かく読み込む必要があります。
インプットの目的によって、重点的に読むべき部分やかけるべき時間が大幅に変わってくるわけです。
そのため、「読むインプット」をする前に、インプットをする目的について改めて意識しましょう。
その上で、どのようなインプットをするべきかをイメージすることが大切です。次のような点について考えてみましょう。
- 読みとるべき内容は何か
- どれほどの精度で読み込むべきか
- インプットした情報を何に使いたいのか
読み始める前にこうした点を意識するだけでも、目的にフォーカスすることができ、効果的なインプットにつながります。
【目的設定】は、ニュース記事のようなちょっとした「読むインプット」でも重要ですが、分厚い本やいくつもの資料を読み込まなくてはいけないときには、必要不可欠な習慣です。
こなすべき分量が少なければ、サクッと目的を意識して、どのような点を押さえるかくらいをイメージし、分量が多い場合は、事前にしっかりとインプットの戦略を立てるように習慣づけましょう。
最初に読むもの次第でインプットの質が激変する
よし、【目的設定】ができた。さっそく読み始めよう!
そういきたいところですが、読み始めにも大事なインプット戦略があります。シンプルに1行目から順番に読んでいくなんてもってのほかです。
まずは、タイトルやサブタイトル、セクションごとの見出しを読んで、全体の内容を【プレビュー】しましょう。
タイトルや見出しは、記事や本の内容を端的にまとめて表現しているので、それを読んでいけば、文章全体の内容や、どこに何が書かれているかを把握することができます。
そうすることで、【目的設定】に合わせた読み方の作戦を、より鮮明にイメージすることができるのです。
先ほどの例に戻ってみましょう。
ニュースを読んで、政府の増税案の大筋をざっくり理解したい場合。
「政府の増税案の大筋をざっくり理解したい」という【目的設定】をしたら、タイトルや見出しを読みながら、記事全体を見ていきます。
セクションごとの見出しをチェックしながら、「増税案の骨子」なんていう見出しがあれば、そこを重点的に読んで、残りの部分は「ざっくり飛ばし読みするくらいで済むかな」などと作戦を立てることができるでしょう。
記事なら見出しチェック、本なら目次を読んで、全体を【プレビュー】するのも、【目的設定】と並んで読む準備の大事な習慣の1つです。
メタ認知でインプットのクオリティーが大幅アップ
なるほど、【目的設定】や【プレビュー】が大切だというのはなんとなくわかった。
でも、本当に効果的なインプットにつながるのだろうか? 科学的エビデンスはあるのか?
こうした視点は非常に重要です。なぜなら、昔から慣れ親しまれているような勉強法やインプット習慣でも、科学的に吟味してみると意外と効果がなかったり、逆に悪影響であったりすることがしばしばあるからです。
しかし、ご安心ください。【目的設定】も【プレビュー】もしっかりとした科学的根拠に基づいています。
キーワードは、「メタ認知」。近年、教育をはじめとするさまざまな分野で注目されているコンセプトです。少し詳しく解説していきます。
「認知」というのは、物事を見たり聞いたり、知っていたりすること。「メタ認知」というのは、物事に関する認知の1段上(「メタ」)のレベルの認知、つまり「認知の認知」です。
例えば、私は今スタンフォードにいますが、東京の天気がどうなっているのかを知りません。これは、私の東京の天気に関する認知です。さらに私は、自分が「東京の天気を知らない」ということも知っています。
これは、「知らない」という「認知」に関する「知っている」という認知なので、まさに「認知に関する認知」、メタ認知の一種と言えます。
この他にも、自分の得意・不得意の認識や、自己評価とそれに基づく目標設定なども、自分の知識や能力に関する認識に含まれるので、メタ認知に分類されます。
そんなメタ認知ですが、なぜ近年話題になっているのか。
それはズバリ、メタ認知能力を上げることで、理解力や応用力がアップするなど、インプットを効果的にできることが明らかになってきたからです。
インプットの効果はさまざまな要因に左右されますが、才能や知性の関与の割合が10%なのに対し、メタ認知能力が関与する割合は17%という報告もされています。
つまり、才能や能力を高めるよりも、メタ認知をアップしたほがおよそ2倍、インプットがお得だということになります。
1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士課程修了。同大学哲学部講師として論理学で教鞭をとりながら、スタンフォード・オンラインハイスクールスタートアッププロジェクトに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。著書に『スタンフォード式 生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法』(光文社)、『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』『脳を活かすスマホ術』(いずれも朝日新聞出版)、『スタンフォード・オンラインハイスクール校長が教える子どもの「考える力を伸ばす」教科書』(大和書房)、『スタンフォードが中高生に教えていること』『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(いずれもSBクリエイティブ)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。