本記事は、星友啓氏の著書『スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長が教える 脳が一生忘れないインプット術』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

メカニズム
(画像=78art / stock.adobe.com)

絶対に知っておくべき! モチベーションのメカニズム

まず、そもそも私たちのやる気はどのように湧き出てくるのでしょうか?

それを理解するのに「自己決定理論」という心理学理論が役に立ちます。

メインとなる内容は、次のようにまとめることができます。

人間のモチベーションのベースは、人とのつながり(関係性)、自分が何かできるという感覚(有能感)、それから、自分が決断したことを自分の意思に沿ってやっているという感覚(自律性)である。

これら「心の三大欲求」が満たされると、私たちの心が満たされる。

また、そのように心が満たされるような事柄に対して、私たちは動機づけられる。

もう少し噛み砕いて解説していきます。

まずは、「報酬系」について振り返りましょう。

報酬系は、私たちが「幸せだなあ」「気持ちいいなあ」などと感じるときに活性化される、まさに心に「報酬」を与える脳のメカニズムです。

報酬系が活性化されたときには、脳の中でドーパミンが分泌されます。このドーパミンという物質によって私たちは幸福感や満足感を得ます。

そして、私たちが心の三大欲求、つまり、「つながり」「できる感」「自分から感」を感じるとき、まさにこの報酬系が活性化していることがわかっています。

誰かと一緒に何かをしたり、誰かのために行動したり、他の人とコラボレーションができそうだなと期待したり。そんな誰かとの「つながり」を感じるときはドーパミンがジュワッと。

何かができたり、学べたり、達成できたとき。また、何かができそうだと予感したとき。

そんなときは「できる感」でドーパミンがドバッと。

そして、誰かに言われたり、何かにコントロールされていたり、やらされていたりするのではなく、自分の心から湧き出る意思で何かをやっているときは、「自分から感」でドーパミン・ラッシュ!

そのような感じで、私たちの心の三大欲求は満たされているのです。

私たちの心は「つながり」「できる感」「自分から感」を欲している。これが、私たちのモチベーションの源泉になっています。

つまり、私たちのモチベーションを最も効率的に引き出し、維持するには、「つながり」「できる感」「自分から感」の3つが得られるような環境をつくればいいということになるわけです。

インプットの後のアウトプットが心に優しい理由

では、そのような環境をインプットではどうつくったらいいのでしょうか。

ご安心ください。ここまでこの本で紹介してきたインプット方法の多くは、心の三大欲求をサポートしてくれるようにデザインされています。

例えば、「アクティブ・リーディング」のスキルには、次のようなものが含まれていました。

→読む前

◯ 【目的設定】インプットの目的を明確に設定する

→読んだ後

◯ 【キーワードテスト】キーワードの定義や説明を思い出してみる

◯ 【まとめ】読んだ内容から自分の目的への収穫を箇条書きでメモする

◯ 【Q&A】周りの人に説明したり、質問したりする

例えば、【Q&A】は、周りの人たちとコミュニケーションすることで、「つながり」を満たしてくれます。

一般的に、何か目標を達成しようとするときに他の人と一緒に行うとやる気が続きやすいのは、心の三大欲求である「つながり」が動機づけとして機能しているからだと言えます。

また、【キーワードテスト】や【まとめ】は、インプットしたことをアウトプットすることで、「理解できた」「記憶できた」という「できる感」につながります。

インプットした後に何らかの形でアウトプットするのがおすすめなのは、「うーん、なんだっけ?」の【リトリーバル】の効果が期待できるだけでなく、心の三大欲求である「できる感」を感じることができるからです。

さらに、【目的設定】で、自分が何のためにインプットをしたいのかを確認することで、「自分から感」も得ることができるのです。

たとえ、学校の宿題や仕事のプロジェクトなど、きっかけは先生や上司から与えられるような場合でも、それが自分にとってどのような意味があるかを意識することで、「自分から感」につなげることができます。

このような方法を実践すると、

「つながり」「できる感」「自分から感」を自分のインプット習慣にどんどん取り込むことができ、モチベーションを長期的に持続させることができます。

脳が一生忘れないインプット術
星友啓
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長/哲学博士/EdTechコンサルタント

1977年東京生まれ。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。その後渡米し、Texas A&M大学哲学修士、スタンフォード大学哲学博士課程修了。同大学哲学部講師として論理学で教鞭をとりながら、スタンフォード・オンラインハイスクールスタートアッププロジェクトに参加。2016年より校長に就任。現職の傍ら、哲学、論理学、リーダーシップの講義活動や、米国、アジアにむけて、教育及び教育関連テクノロジー(EdTech)のコンサルティングにも取り組む。著書に『スタンフォード式 生き抜く力』(ダイヤモンド社)、『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法』(光文社)、『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』『脳を活かすスマホ術』(いずれも朝日新聞出版)、『スタンフォード・オンラインハイスクール校長が教える子どもの「考える力を伸ばす」教科書』(大和書房)、『スタンフォードが中高生に教えていること』『「ダメ子育て」を科学が変える! 全米トップ校が親に教える57のこと』(いずれもSBクリエイティブ)がある。

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