この記事は2024年6月21日にSBI証券で公開された「エヌビディアが「世界トップ」!株価好調の生成AI関連株」を一部編集し、転載したものです。
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エヌビディアが「世界トップ」!株価好調の生成AI関連株
6月第3週の東京株式市場は波乱含みの展開になりました。6/17(月)には日経平均株価が前週末比で864円も下げ、38,000円台を割り込む場面もみられました。これに対し、ハイテク株の多い米ナスダック指数は6/10~18に7営業日連続高となり、過去最高値を更新しました。フィラデルフィア半導体指数も過去最高値を更新しました。
ハイテク株をけん引役とする米株高の主役は、エヌビディア株といえそうです。6/18(火)に同社の時価総額は約3兆3350億ドル(約526兆円)となり、マイクロソフトを抜いて世界首位になりました。技術の競争軸がAI(人工知能)に移り、エヌビディアがその中心だと市場はみなしているようです。
AIの普及により、大量のデータ処理や高度な計算が必要となるため、データセンターの需要が増大すると予想されます。AIが学習や推論を行うためのインフラがデータセンターです。巨大データセンターの設備投資をみるには、大手クラウド事業者であるアマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタ等の動向を調べることが重要です。上記4社の設備投資額は24.1-3期に443億ドル(約7兆円)に拡大(前年同期比30%増)。4社はAI関連事業に対応すべく投資計画を今後引き上げる方針です。大手クラウド事業者による堅調な投資は国内電線各社にポジティブな影響を与え得ます。さらに、データセンターが増えることで、電力消費が大幅に拡大するとみられます。生成AIへの需要拡大は、他関連事業にも業績成長期待をもたらし得るといえるでしょう。
日本での生成AI市場の需要額は、2023年から2030年にかけて年平均約47.2%の増加が見込まれています。2030年には1兆7,774億円と、2023年比の15倍弱まで拡大する見通しです。また、AIインフラの需要も、2030年には9,586億円と、2023年比で約3倍となる見通しが示されています(デジタルインフラ(DC等)整備に 関する有識者会合 (第7回事務局説明資料)、経産省作成資料より)。
今回の「日本株投資戦略」では、AI関連銘柄の中核であるエヌビディア株が上昇する中、日本のエヌビディア関連株や、生成AI関連銘柄、データセンター関連銘柄について、株価上昇が期待できる銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングをおこなってみました。
①東証プライム市場上場
②SBI証券銘柄検索ウィンドウに「エヌビディア」または「生成AI」、「データセンター」と入力し、出力される銘柄であること
③6/19(水)まで20営業日の1営業日当たり平均出来高10万株以上
④直近終値(6/19)の昨年末終値に対する株価上昇率が15%超100%未満
⑤今期会社予想営業利益(ない場合は市場予想営業利益)が増益予想
⑥取引所または日証金による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は上記条件をすべて満たしています。掲載の順番は④の株価上昇順です。年初来の日経平均上昇率(6/19時点)が15%であり、市場で注目されるテーマ株である以上、最低でも市場平均並みのパフォーマンスが望ましいと考えました。また、株価上昇率2倍以上は、過熱感があると考え、除外した格好です。
一部掲載銘柄を解説!
古河電気工業(5801) ~電線大手の一角。株価上昇もPBRに割安感
■電線大手の一角
日本3大電線メーカーの一角。古河市兵衛氏が140年前に創業、日本初の海底電線の製造や、世界初の光ファイバーケーブルのフィールド試験に成功した歴史を有する企業です。
製品セグメントは大きく以下の4事業に分かれています。
▸情報通信ソリューション事業 (24.3期の売上高構成比:16%)
光ファイバ・ケーブルやルータ・ネットワーク機器など、情報通信インフラに関連する製品の製造・販売をしています。また、情報通信ネットワークの設計・施工・サービス等も展開。
▸エネルギーインフラ事業 (同:10%)
超高圧、高圧、中低圧のケーブルや機器等の製造・販売および敷設を行っています。海底送電線・工事も同事業です。
▸自動車部品・電池事業 (同:32%)
ワイヤーハーネス等同社の自動車部品事業および、上表でも掲載した子会社の古河電池(6937)が電池事業を行っています。
▸電装エレクトロニクス材料事業 (同:26%)
銅線・アルミ線や高機能材などの製造・販売を行っています。
また、上記のほか、生成AI関連の需要増が期待される機能製品事業やサービス・開発等を展開しています。
■電線株として年初来高値更新したが、PBRは割安水準
24.3期は在庫の長期化や大型プロジェクト案件の延期等により減収減益。しかし、北米向け光ケーブルの売上が増加したことなどで、事前の会社予想を売上高・各利益項目で上振れました。また、機能製品事業では、生成AI関連の需要急拡大を受け、高付加価値製品が好調に推移したもようです。
今期(25.3期)は、半導体や光ケーブルの市況回復を背景に、増収増益となる見通しです。AI・データセンタ市場への拡販活動も行ってゆくとしています。
年初来の株高は、個別材料よりも電線株として買われた面が強そうです。しかし、PBRは0.85倍と未だ割安水準であるともいえるでしょう。【参考:住友電気工業0.88倍、フジクラ2.47倍】光ファイバー関連が業績に与える影響が大きく、ITバブル時の象徴的な存在でもありました。現在は、北米のデータセンター需要の低迷に伴い、17-19年度と比較し利益も低水準に沈んでいました。そのため、データセンターへの投資拡大によって得られる恩恵にも期待感が募ります。
▽日足チャート(1年)
データは2024/6/21 (日足)12:40時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
有沢製作所(5208) ~「織る」「塗る」「形づくる」がコア技術。生成AI普及が追い風に
■電子材料がメイン~「織る」「塗る」「形づくる」で多彩な専業に貢献
FPC(フレキシブルプリント基板)等の「電子材料」(24.3期売上構成比60%)、産業用構造材料(同25%)、電気絶縁材料(同6%)、ディスプレイ材料(同8%)等に展開しています。
「織る」「塗る」「形づくる」技術を各種要素技術と結びつけることにより、多彩な産業分野に広がる製品を生み出してきました。炭素繊維複合材料の中間材料から成形されたFPC材料は軽量で扱いやすく、耐蝕性・対候性に優れ、機械的強度が高いという特徴があります。
5/9に発表された24.3期本決算では、売上高421億円(前期比1.4%減)、営業利益14.8億円(同33.4%減)となりました。主力の「電子材料」が、パソコン・スマートフォン等の需要減退に伴うFPC材料の減少で減収減益になりました。
同時に発表された25.3期会社計画では、売上高489億円(前期比16%増)、営業利益32億円(同115%増)が見込まれています。パソコンやスマートフォンに使用される半導体の需要が回復に転じ、「電子材料」の収益が回復しそうです。「産業用構造材料」も増益の予想です。
25.3期の会社計画1株配当は84円(うち上期42円)で、前期から24円増配の予想です。25.3期より「株主資本配当率(DOE)6%以上か、総還元性向80%以上のいずれか高い方を株主還元とする方針」に変更しました。上記1株配当84円を6/20終値1,564円で割った予想配当利回りは5.37%あり、好配当利回りが期待できる銘柄としての側面もありそうです。
■スマホの生成AI対応やデータセンタ―増大はビジネスチャンス
当社主力の「電子材料」は中国減速、半導体市場の調整により、22.3期から25.3期(予想)の年平均成長率は0.3%増にとどまる見込みです。しかし、半導体市場の回復により25.3期から27.3期までは年8~12%の成長が予想(会社側中期計画)されています。
2023年は「生成AI元年」といわれ、2025年以降はスマートフォンが生成AIに対応(会社側)してくるとみられます。それにより、消費者の機種交換が進むと予想されます。また、半導体デバイスにおいてもIC、メモリ、パワーデバイス、センサーで大きな成長が期待できそうです。
当社は、高速通信用FPC材料、微細配線用FPC材料、半導体基板用絶縁フィルム、フォルダブル(折り曲げ可能)対応FPC材料の開発・導入を進める方針です。
さらに、生成AI普及、データセンターの増大等もあり、サーバー需要の増大、ストレージ需要の伸長、HDD高容量化が見込まれ、半導体パッケージ材料やHDD用回路基板材料にビジネス拡大のチャンスがありそうです。
▽日足チャート(1年)
データは2024/6/21 (日足)12:40時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。