特集『令和IPO企業トップに聞く〜経済激変時代における「上場ストーリーと事業戦略」』では、令和以降に新規上場された経営者にインタビューを実施。 上場までの思いや今後の事業戦略、思い描いている未来構想について各社の取り組みを紹介する。

株式会社スマートドライブ
(画像=株式会社スマートドライブ)
北川 烈(きたがわ れつ)――代表取締役
慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。その中で今後自動車のデータ活用、EV、自動運転技術が今後の移動を大きく変えていくことに感銘を受け、在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。
スマートドライブは、2013年の創業以来、「移動の進化を後押しする」をコーポレートビジョンに掲げ、移動にまつわるモビリティサービスを提供しています。SmartDrive Fleetは、1,300社以上への導入実績があり、車両に関わる業務の改善や安全運転の推進などに役立てられています。


目次

  1. 創業時からの事業変遷
  2. 上場を目指された背景や思い
  3. 今後の事業戦略や展望
  4. 今後のファイナンス計画や重要テーマ
  5. ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

創業時からの事業変遷

ーー2013年の学生時代に起業をされてからの事業の変遷を教えてください。

株式会社スマートドライブ 代表取締役CEO・北川 烈氏(以下、社名・氏名略)
事業の変遷は大きく2つに別れます。
1つ目は、創業してから、データプラットフォームを作っていた3年ほどの期間です。2つ目は、現在の主力事業であるアセットオーナー事業(AO事業)やフリートオペレーター事業(FO事業)への注力開始から現在に至るまでの期間になります。

株式会社スマートドライブ
(画像=株式会社スマートドライブ)

1つ目の期間について、まず私は大学院生だった2013年末に起業しました。当時お金がなかったため、研究室から小さく始め、自動運転のデータを解析できるデータプラットフォーム作成に取り組みました。学生時代に留学をした際の友人などを通じて、グーグルの自動運転車やテスラに直接触れて、まずは今すでに走っている車のデータを解析できるプラットフォームが必要だと思ったのがきっかけです。

2015年に取締役を務める元垣内に出会い、彼とともにデータの基盤プラットフォームの開発に注力していました。特に、フランスの保険会社であるアクサから出資を受け、保険のリスク分析を行っていました。この事業を通して、分析のノウハウや今後に生きるアルゴリズムに関する知見を得ました。しかし、エンドユーザーのデータがなく本当に顧客のためになるサービス化が難しいという課題がありました。

その解決手段となるのが、2つ目のターニングポイントとなるFO事業です。課題だったエンドユーザーのデータ集積の手段としてFO事業を開始しました。そのFO事業の伸びがAO事業を後押しし、現在に至っています。

ーー特に大変だったエピソードはどのようなことでしたか?

北川:特に大変だったのは、デバイスがない中での資金調達 です。当時は、データを収集するハードウェアがなく、それを作るのにトータルで3億円ほどかかりました。試作品程度であれば研究室でも作ることはできましたが、データ取得に必要な万単位でのハードウェアを作るには多額の資金が必要であり、特にこの資金調達が大変でした。

ーーその中でも資金調達が成功した要因はどこにあると考えていますか?

北川:資金調達の際に意識した点は3つだと考えています。

1つ目は国策との合致です。資金調達を行っていた当時、IoTなどデータプラットフォームの推進が国策となっており、2015年にはセールスフォースと共に総務省から8000万円の助成金を受けることに成功しました。さらに、官民ファンドである当時の産業革新機構からも出資を受けることができ、国策との合致による後押しを感じています。

2つ目は、シナジーを感じてくれた企業の存在です。アクサやソニー住友商事などがビジネスが小さかった当時も事業自体にシナジーを感じてくださり、アクサとの保険開発や住友商事子会社のリース会社との協業に繋がっていきました。

3つ目は時間軸です。将来、私たちの取り組む事業は自動運転や電気自動車、シェアリングなどの推進に合わせて必ず必要になります。そこに対して、短期的ではなく中長期的にやり続ける、そして他の企業よりも早く開始できた時間軸の差も要因だったと考えています。

上場を目指された背景や思い

ーーここからは上場を目指された背景を伺っていきたいと思います。独立資本で経営できるように上場したとのことですが、こちらについて詳しく教えてください。

北川:私たちが目指す将来像は、データプラットフォームとして当たり前に使われる状態です。現在は企業との連携の中で進めておりますが、大手企業の傘下に入ってしまうと対応できるハードウェアに縛りが出てしまい、拡大が限定的になってしまいます。しかし、スマートフォンのOSのように、どの媒体でも使える形を目指しています。そのため、どこかの傘下に入るわけではなく、上場による幅広く資金調達できる状態にする方法を選択しました。

今後の事業戦略や展望

ーー今後の事業戦略と展望についてはどのように考えておりますか?

北川: 今後の展望は、4つの分類で考えています。

1つ目はFO事業です。FO事業に関しては利用者を広げることと、単価を増やすことが必要です。法人をターゲットとしていますが、社用車だけでも日本には2000万台ほどあると言われており、現在私たちが開拓できているのは1%未満です。まだまだターゲットの中で拡大余地があるため、この中でより顧客を獲得していきたいと考えています。また、そこで集めたデータを元に単価上昇を狙うこともできます。現在は車両の管理を中心に行なっておりますが、このデータを使って今後配送業のルート最適化や高速料金の経費精算、レンタカーの予約など車を使う人が必要な機能の拡大を目指します。大まかにFO事業ではこの2つに注力したいと考えています。

2つ目はAO事業です。現在の取引先である保険会社やリース会社に加えて、さらに取引先を拡大していきたいと考えています。AO事業の定義は自動車を使う人や企業に対してサービスを展開する企業なので自動車メーカーやレンタカー会社、整備工場などに拡大していきたく、そういった自動車産業の新規事業開発や業務プロセスの効率化などのDXには可能性を感じています。事故の際の過失割合の計測や整備のタイミングを整備会社と連携するシステムなど広がりは無限にあるので、AO事業の拡大を狙っていきたいです。

株式会社スマートドライブ
(画像=株式会社スマートドライブ)

3つ目は、上記FO事業とAO事業のシナジーです。この2つを掛け合わせることで、例えば将来の事故リスクを算出し、その企業や個人に最適な保険を我々からレコメンドしたり、使い方の分析により最適な車種の選定などのお手伝いもできると考えております。そのようにFO事業で集めたデータを元にAOの顧客とFOの顧客を繋いでいくような事業にも可能性を感じております。

最後に4つ目は、海外進出です。3年前からマレーシアに子会社を作り、東南アジアに進出しています。助成金などの影響もあり、EV分野は日本よりも東南アジアの方が進んでいる部分もあります。、EVに限らず、東南アジアならではの事業や、逆に日本よりも先駆けてサービス展開をしていくなど、チャレンジングではありますが引き続き東南アジアに進出していきます。

今後のファイナンス計画や重要テーマ

ーー今後事業全体で拡大していくためのファイナンス戦略や重要テーマについて教えてください。

北川: 拡大において、先ほどの4つの方向性を実現するため、M&Aも積極的に検討していきます。特に競合サービスをグループに入れることや、近い領域である配送ルートの自動化、遠い領域になる勤怠の自動化など、事業拡大の中で、自社で作るのか、他社を買うのか、それとも連携をするのかはしっかりと見極めて行なっていきたいです。

ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

ーーZUU onlineのユーザーに向けて一言お願いします。

北川中長期目線で注目してほしいと思っています。事業としては、わかりにくい部分があったり、表舞台に出ることが多くない黒子のような役割のサービスですが、思っている以上に当社の事業領域は広いです。この広がりの大きさに着目していただき、長い目で応援していただけると幸いです。

株式会社スマートドライブ
(画像=株式会社スマートドライブ)
氏名
北川 烈(きたがわ れつ)
社名
株式会社スマートドライブ
役職
代表取締役

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