現在までの事業変遷について
ーーこれまでの事業変遷について教えてください。
株式会社yutori 取締役副社長 瀬之口 和磨氏(以下、社名・氏名略):当社は2018年に大学の同級生3人で創業しました。最初はインスタグラムで古着に特化した「古着女子」というInstagramメディアからスタートしました。想定よりもフォロワーが増えたので、オンラインで古着の販売を始めました。しかし、古着は一点物であるため、オンライン販売との相性が悪く、2019年からオリジナル商品の販売も始めることにしました。同時に、バーチャルインスタグラムの事業も展開しました。
2020年にはZOZOグループに参画しました。その際に事業の選択と集中を図り、バーチャルインスタグラムの事業は終了させ、ブランド事業に注力しました。その後、2022年に2社のM&Aを通してブランド数を増やし、2023年に東証グロース市場に上場することができました。
ーーターニングポイントはいつでしたか?
瀬之口: 大きく2つあります。1つ目はオリジナル商品が売れたときです。古着だけでなく、自社企画の商品も売れるということが分かり、自信がつきました。2つ目はZOZOグループに参画したときです。ZOZOという信用があったことで融資を使ってM&Aを実現させることができました。M&Aした会社が自社の業績にも大きく貢献し、上場にも繋がったと考えています。
御社における瀬之口様の役割について
ーー瀬之口さんはどのような役割を担っているのでしょうか。
瀬之口:まずは当社に参画した経緯についてお話しします。元々、大学卒業後すぐ2017年から個人事業としてフリーランスで活動していました。2018年に法人化を検討していたタイミングで、大学時代の共通の友人を通して現在の代表と出会いました。お互いに会社を作るタイミングで、せっかくなら一緒にやろうという話になり、yutoriに参画しました
当社での役割としては、代表がソフト面を作り、私がハード面を作っているイメージです。具体的に言うと、代表がブランドの立ち上げやブランディング、グロース戦略を担当しています。逆に私は、ブランド自体についてではなく、ブランドや組織が持続的に成長していくための組織構造や事業戦略を考える役割を担っています。もちろん相談や議論はしますが基本的にはお互いの領域に干渉せず、意思決定は任せ合うことを大事にしています。
ーー上場前後で求められることが変わったと思いますが、その中で大切にされていることは何ですか?
瀬之口:意思決定における不可逆性を大事にしています。選択がどれだけ後戻りできるのかを考慮して、可逆性が高いものに関してはスピード重視で進めています。逆に、M&Aのような不可逆性が高いものに関しては、意思決定を非常に慎重に行っており、半年から1年かけて情報を集めて決定することもあります。特に上場後は規模の大きい意思決定を行うことも増えたので、意思決定によりグラデーションを持たせることでこれまでのスピード感を保てるようにしています。
yutoriの伸長ポイント
ーー今後、ビジネスを伸ばすために重要だと考えているポイントは何ですか?
瀬之口:領域の拡張です。現在はストリート領域がメインですが、アパレルにおいてはレディースの市場も非常に大きいため、そこに拡張できるかが重要だと考えています。また、アパレルだけでなく、化粧品などの他の領域にも拡張するつもりです。商材の拡張性やアパレルの中での別のターゲットに対する拡張性をどうやって実現できるかが、今後1、2年で重要なポイントだと思っています。
ーー若者をターゲットにリーチを広げる活動や、若者以外の年代を狙っていく拡張の方向性について、どのような戦略をお持ちですか?
瀬之口:M&Aと協業をメインに進めていくつもりです。まず、アパレル内での領域拡張においては、M&Aが一番効果的だと思っています。現状の自社のケイパビリティでは難しいブランドを作るためには、組織ごと外部から取り入れる必要があります。また、商材拡張においては、知見のない領域への参入となるため、最初はリスクを抑えて自社のSNSマーケティングを活かしつつ、商材に強みを持っている会社と協業するつもりです。
ーーM&Aを推進されていく上で、どういった基準でブランドを選んでいますか?
瀬之口:成長曲線にあり、利益を出せているかどうか、買収した後にも僕らが介入しなくても自然と伸びていくようなブランドに着目しています。赤字で経営転換が必要な会社はあまりターゲットにしていません。今後ブランド数を増やしていくためにも自立自治の組織形態にしていることから、あくまで私たちが手を入れて全てを変えるのではなく、後方支援で成長を加速させる役割を果たせるかどうかが重要だと考えています。
瀬之口様の思い描いている御社の未来構想について
ーー 今後の未来構想について教えてください。
瀬之口: まず、事業的にはブランドの連合軍を作っていくことを目指しています。現在、ストリートの連合軍を持っているので、レディース等他ジャンルにも拡張し、総合的なブランドの連合軍を作っていきます。
また、組織的には若者帝国というキーワードを使っています。社員の平均年齢が25歳で役員も30歳前半という若い組織であるため、若くて優秀な子たちにしっかりと権限を与えて自律分散的に盛り上がっていく組織を目指しています。
ーー 今の御社の主なターゲット層であるZ世代を攻めていく上で、同じ世代の経営層がいることは強みだと思いますが、今後その世代を拡張していく上でどのようにターゲット理解を進めていくのでしょうか。
瀬之口: 基本的には私たちも年を取っていくので、私たちが年を取った分だけその年齢層に対してブランドを展開するつもりです。つまり、歳を取るごとにターゲットの幅を徐々に増やすことができると考えています。
ーー現在の御社が抱える課題は何ですか?
瀬之口: 一番はブランドを作る才能がある若くて優秀な人材の採用です。最近は採用の目的でYoutubeでのオーディションも行っています。若い子たちにyutoriが面白いことをやっているというイメージを持ってもらい、ブランドを立ち上げたいという熱意を持った優秀で意欲のある人材をどれだけ引き寄せられるかが重要だと考えています。
ーー 上場をされて今後はIR観点も意識されていると思いますが、大切にしていることはありますか。
瀬之口: 一番大切にしているのは、期待値ギャップを作らないことです。そのためにコミュニケーションを丁寧に行い、正しくありのままの姿を伝えることを意識しています。Youtubeで社内の様子を伝えているのも、実際にどのような人たちが働いていて、どのように意思決定し、どのようにやっているのかを伝えるために行っています。また、決算の前には事前に質問を受け付けて回答する仕組みも作っています。このようにして期待値ギャップを生まないコミュニケーションを大切にしています。
ZUU onlineユーザーならびにその他投資家へ一言
ーーZUU onlineユーザーへ一言お願いします。
瀬之口:上場したとはいえ、まだ創業から6年という短い会社です。1年後や2年後にはまた違った景色を見せられると思います。変化の多いフェーズで、ポジティブなサプライズを提供できるように尽力するので、これからの発展を温かく見守っていただけると嬉しいです。
- 氏名
- 瀬之口 和磨(せのくち かずま)
- 社名
- 株式会社yutori
- 役職
- 取締役副社長