日本ECサービス株式会社
(画像=日本ECサービス株式会社)
清水 将平(しみず しょうへい)――代表取締役
関西大学卒業後、プロバイダDTIのテクニカルサポートを統括し、サポート満足度No.1を獲得。2003年に楽天に入社。MVPなど多数受賞。フリービットにて、DTIの買収に携わり、2010年に独立、日本ECサービスを設立。2014年に「ECマスターズクラブ」を開始し、2600ショップ以上を支援。一般社団法人ECスキル認定協会 JECSAの代表理事も務める。
月額1.5万円から利用できる会員制サポートサービス「ECマスターズクラブ」を運営。楽天市場出店ショップ5,700のうち2,600社16,000人以上が所属。2023年11月に株式会社ECXグループを設立し、グリニッジ株式会社とあわせて楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー受賞ショップの3社に1社、5,000社以上のネットショップを支援している。

目次

  1. これまでの経歴や事業変遷
  2. ブレイクスルーとなった出来事、成長ドライバーについて
  3. PDCAを回す上で重要視していること
  4. 今後の経営・事業戦略や展望
  5. ZUU onlineのユーザーに一言

これまでの経歴や事業変遷

—— ご自身のご経歴と事業の変遷についてお聞かせください。

日本ECサービス株式会社 代表取締役社長・清水 将平氏(以下、社名・氏名略) 私の生まれは大阪で、実家は京都です。関西大学を卒業後、最初に三菱電機情報ネットワークに入社しました。そこからベンチャーのプロバイダー、ドリーム・トレイン・インターネット株式会社に出向し、サポートの責任者を務めました。2年間の出向後、カナダでワーキングホリデーを経験し、住友商事の子会社で営業を1年間務めた後、楽天に入社しました。当時、楽天は300人規模の企業で、私は大阪支社のECコンサルタントを務め、5000人規模に成長するまで在籍しました。

楽天では営業としてMVPを受賞し、複数の部署を兼務しましたが、フリービットの石田氏からの誘いを受け、退職を決意しました。フリービットがDTIを買収後、マーケティングマネージャーを3年間務めまして、その後、起業に至りました。最初は個人事業主として活動を始め、GMOグループのプロジェクトにも関わりました。1年後に会社を設立し、楽天に出店する企業のコンサルティングを行いました。

—— 事業の変遷についてもお聞かせください。

清水 2014年に事業をコンサルティングから月額サブスクリプション型のオンラインサロンに切り替え、1年半で500社の会員を獲得しました。その後、ホールディングスを設立し、2社で事業を展開しています。1社は会員制のサポート事業、もう1社はネットショップ向けのSaaSを提供しています。現在、5000社以上の顧客にサービスを提供しており、上場を目指しています。

—— 経営統合という選択を取られた理由や経緯についても教えていただけますか。

清水 2014年に事業をサブスク型に切り替えた際、ナンバーツーである楽天の後輩に株を半分譲渡して事業を立ち上げましたが、6年前に彼が急死し、株を半分失うことになりました。その後、知り合いの会社と統合することになり、株式移転を行いながら株式比率を調整しました。

ブレイクスルーとなった出来事、成長ドライバーについて

—— ブレイクスルーとなった出来事や、現在成長のドライバーになっていることについてお聞かせください。

清水 基本的に、私たちの会社は2014年に大きな転機を迎えました。日本中の困っている人々をサポートし、悩みを解決したいという思いから、ECマスターズクラブという会員制サポートサービスの募集を開始しました。当時、多くの人々が悪徳な事業者に困っていたので、それを解決するために全国でセミナーを開催し、 月額10,000円という価格で会員を募集しました。これが私たちのブレイクスルーのポイントだったと思います。

マーケティングとセールスが好きだったので、セミナー集客からセミナー営業、クロージングまで自分でKPIを管理し、1年半で500社まで拡大しました。ほぼ自己資金で事業を再構築しました。

—— ファイナンスについては特に困らず、自己資金の範囲でできているということですね。

清水 正直なところ、お金の借り方・使い方を知らなかったんです。新規事業を立ち上げる際に黒字倒産しかけたこともありましたが、ビジネスモデルを調整し、キャッシュフローを改善しました。現在はネットでの融資やVCからの資金もありますが、創業当時はお金がない中で工夫してきたのだと思います。

—— 急成長している中で、人材の手当についてはどのように対応されていますか?

清水 2019年頃に従業員が増え、評価制度や組織が曖昧なままでした。そこで組織図を作り、評価制度を整え、大量に採用しましたが、うまく機能しませんでした。それまでは離職率がかなり低かったのですが、そのタイミングで離職者が一気に出るなど、自分の経営者としての至らなさを思い知らされました。

その後、EO(起業家機構)に入会し、優秀な経営者から学びました。クレドやミッション、ビジョン、バリューを再定義し、パワーギャップをゼロにするためにニックネーム制を導入しました。これにより、離職は減少し、社員のリファラル採用が主流になりました。

—— 大量離職を経験された時期について、どのような対策を講じられましたか?

清水 大量離職の際、退職代行が多発し、毎月数百万円の赤字が出ましたが、キャッシュがあったためすぐには問題になりませんでした。この経験から、社員を固定費として抱えるのではなく、変動費にしようと考え、業務委託を大量に採用しました。現在、社員とは別に20人ほどの業務委託契約があります。

—— 現在の事業の成長ドライバーについて教えてください。

清水 私たちのグループはサブスク型のサービスを提供しており、キャッシュフローは安定しています。もともと、セミナーに参加いただいた方の40%は契約につながるような形で動いておりました。現在はサービスの内容を増やし、単価を上げる方向にシフトしています。

また、コロナの影響でいろいろなセミナーがオンラインで無料で受けられるようになり、オフラインでの新規顧客向けセミナーの集客が難しくなりました。現在は、既存顧客向けセミナーに新規顧客が参加できる型式に変更し、シナジーを最大化する取り組みを進めています。

PDCAを回す上で重要視していること

—— PDCAを回す上で、特に重視していることを伺いたいのですが。

清水 そうですね。楽天という会社は非常に営業に力を入れていて、私も相当働かされました。その後のフリービットでもいろいろ経験しましたが、やはり数字が好きですね。数字は嘘をつかないので、基本的に数字を基に物事を考えます。逆算して計画を立てることも重要です。

我々のビジネスでは、例えば、いつまでに会員数を増やすかを決め、そのために毎月何回セミナーを開催し、何人を集客し、何パーセントが入会すれば目標を達成できるかを考えています。

基本的には、セールスはお客様の断る理由をなくし、不便を取り除くことだと思っています。お客様が何に困っているのか、なぜ入会しないのかを常に意識しながら、KPIの達成を目指しています。また、楽天の手法を参考にして、継続率を重視しています。

—— 状況が変わった時には、どのような施策を打っていくのでしょうか。PDCAのAの部分、アジャストについてどのように意識されていますか。

清水 マーケットの環境や規制、コンプライアンス意識の変化に対応するために、アジャストする部分が増えてきていると感じます。これらをしっかりと見直し、対応していかなければなりません。

例えば、サービス開始時の500社の会員を募集する際、資金も社員も少なかったので、インターン生と共に数字を作り上げました。当時の彼らは短時間で稼ぎたいという意欲がありましたが、現在の社員は、その当時のことを知りませんので、当時と比べてパフォーマンスが落ちていると感じることもあります。

また、サービス自体が成熟期に入っているため、説明が多くなり、一人当たりの契約に時間がかかりすぎています。これも改善が必要だと思っています。

今後の経営・事業戦略や展望

—— 今後の経営戦略や新規事業について、どのような展望をお持ちでしょうか。

清水 上場を目的に会社を設立したわけではありませんが、現在、弊社には2600社、グループ全体では5000社以上のお客様がいらっしゃいます。会社としては、よりパブリックな状態になる、上場を目指さなければならないと考えています。しかし、私たちの主なお客様は楽天市場に出店しているような企業で、マーケットが約5万社程度と非常に小さいため、必ずしも上場しないといけないわけではありません。

ただ、私たちのECマスターズクラブは事業者だけでなく、支援事業者やスキルのある個人の方々にも利用されており、ネットショップを運営する人だけでなく、支援する人たちにもサービスを提供し始めています。

時間とスキルを持つ方々が日本中、世界中にいらっしゃるので、そうした方々にサービスを提供し、日本のEC市場の成長に貢献できればと考えています。そういった目的もあり、一般社団法人でECスキル認定協会も設立しております。

また、新規事業の準備も進めており、簡単に言うと、ECモールに出店しない日本中の実店舗をDX化しようと考えています。

これまでのビジネスでは成長が限られると考え、もう一度ゼロから新規事業を立ち上げようと思いました。幸い、VCさんも賛同してくれたので、挑戦してみたいと思っています。

—— 上場によってどのような成果を期待されていますか。

清水 上場すること自体が目的ではなく、人生一度きりなので挑戦してみたいという気持ちが強いです。山に登ってみないと頂上の景色は見えませんからね。また、お金を稼ぐことが目的ではなくなった時に、自分が何に夢中になれるかを見たいというのもあります。

—— 上場後のビジョンについて、何か具体的な夢や目標はありますか。

清水 新規事業で売上百億円を目指していますので、世の中に大きなインパクトを与えられると考えています。上場するタイミングではその売上はまだ計上されない予定ですので、上場後に実現できればと思っています。

ZUU onlineのユーザーに一言

—— ZUU onlineのユーザーに向けて、一言いただけますか?

清水 現在、IPOの準備にあたって、他の会社を閉じたり、個人事業を廃業したりしているところです。やはり知らないことが多く、この14、5年で学ぶべきことがたくさんあると感じています。お金の借り方も含めて、選択肢として「こういう方法もあるんだ」と常にアンテナを張っておくことが大事だと思います。必要な時にそれが役に立つこともあります。

特にEOなど、成功したり苦労している人たちと人脈を作るだけでも、自分がどれほど小さなことで悩んでいるかが分かります。そんな風に、色々と情報収集しながらネットワークを作ることが重要だと思います。

氏名
清水 将平(しみず しょうへい)
社名
日本ECサービス株式会社
役職
代表取締役

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