
これまでの事業変遷
—— これまでの事業編成についてお聞かせください。
株式会社ダイキチ 代表取締役社長・小田 吉彦氏(以下、社名・氏名略) 株式会社ダイキチは、玄関先のレンタルマットで創業した会社です。この会社がアメリカのカバーオール社という、ビルメンテナンス業界で全米トップの会社の日本総代理店となりまして、約25、6年前にビルメンテナンス事業をスタートしました。現在、このビルメンテナンス事業が基幹事業となっています。福岡エリアのフランチャイズ拠点を含め、13拠点でビルメンテナンス事業を展開しています。また、レンタルマットや害虫駆除、ボトルウォーターを行うヘルスケア事業、不動産事業の3つの事業を展開しています。
—— 現在の主力事業の売上割合はどれになりますか?
小田 カバーオール事業、つまりビルメンテナンス事業が主力で、売上の8割を占めています。総額127億円のうち、約102億円がカバーオール事業によるものです。 毎年、前年対比で110%から112%の成長を続けています。
—— 毎年二桁成長というのは、とんでもないことだと思いますが、その秘訣をお聞きしてもよろしいですか?
小田 これは、働く人たちが事業の目的意義を理解することが大切です。また、生き生きと価値を感じながら働いていただくことが重要ですね。
—— 特に目的意識の浸透に苦労される企業が多いと感じています。御社では、どのように取り組んでいるのか、特徴的な方法があれば教えていただけますか?
小田 実は私、盛和塾というところに入塾しておりまして、そこでは「経営の原点12箇条」というものがあります。その中で最も重要なのが「事業の目的意義を明確にする」ということです。最近では、社長との対話の機会を設けて、社員と目的意識を共有しています。
—— それは素晴らしい取り組みですね。社員の皆さんにとっても、非常に近い立場からお話を聞ける機会は貴重ですし、意義深いものになっているのではないでしょうか。
小田 そうですね、一度きりではなく、毎年行っています。
—— 従業員の数を考えると、それを実施するのは相当な労力がかかるのではないでしょうか?
小田 確かに、毎日連続で行うわけにはいかないので、去年の6月からスタートして、終わったのが1月の末でした。仕事の合間を縫っての開催です。
—— 非常に納得のいくお話です。それだけの取り組みがあれば、強い組織が出来上がることは間違いないですね。
自社事業の強みやケイパビリティ
——貴社の事業の強みやケイパビリティについてお聞かせいただけますでしょうか?
小田 まず、当社の主力事業は、エンドユーザー向けのBtoB事業です。お客様先の企業様へ清掃サービスを提供しています。この分野における圧倒的な強みは、小規模なビルや賃貸マンションでのサービス提供にあります。例えば、三階建てや五階建て、六階建てのビルの共有部分の清掃など、わずか二、三時間で終わるような物件をターゲットにしています。こうしたビルは、交通が不便な場所に立地していることが多いため、他の会社が手を出しにくいニッチな市場です。
小田 私たちは、こうした物件に特化したサービスを提供しており、加盟オーナー様が車で巡回しながら清掃を行うというビジネスモデルを採用しています。加盟オーナー様は、研修を終えるとすぐに清掃を開始し、収入が発生する仕組みです。これにより、営業部門を持たずとも、安定したビジネスが実現できます。実際、過去26年間で1413名のオーナー様が加盟してくださり、安定して事業を運営してくださっております。
——それはすごい成果ですね。
小田 さらに、72%の加盟オーナー様が50代以上の方で、平均年齢は52歳です。この層の方々にとって、転職先は限られており、また年金問題もあります。現状、年金の平均受給額は約14万6千円で、今後さらに減少していくと予想されています。消費者物価が上昇する中で、年金以外に必要な預貯金額は3000万円とも言われています。そんな中で、私たちのビジネスは、安定して収入を得られる機会を提供しています。
例えば、最高齢のオーナー様は81歳で、元気にビジネスを続けておられます。こうしたオーナー様にとっても、心身ともに無理なく続けられる仕事を提供できていることが、当社の強みの一つです。
私たちの経営理念は「ALL for イキイキ~すべてはイキイキのために~」で、すべての方にイキイキとした生活を送っていただくことを目指しています。この理念が、安定した売上を支え、事業の成長を促進していると考えています。
——確かに、その理念がしっかりとした基盤を作り上げているんですね。
小田 ちなみに、現在でも毎月約10名ほどのオーナー様にご加盟いただいており、年間で約100名の新規加盟者を目指しています。加盟オーナー様が増え続けている中で、私たちはさらに多くの人々にイキイキとした人生を提供したいと考えています。
——それだけの数のオーナー様が加盟されるということは、安定したビジネスが確立されている証ですね。
小田 そうですね。加盟オーナー様はすべてストック型の収益を得ており、例えばハウスクリーニングのような一回きりのサービスではなく、毎月必ず収入が発生するビジネスモデルです。これが、事業の安定性を支えている要因の一つです。
——安定した収益が保証されているというのは、非常に大きなポイントですね。
小田 さらに、私たちは不動産事業にも取り組んでおり、ビルメンテナンス業務を基盤にして新たな事業展開を進めています。具体的には、賃貸マンションの管理や清掃サービスを提供しつつ、さらに多角的なサービス展開を模索しています。今後はフランチャイズオーナー様のために、空き家を活用して倉庫付き事務所を提供する計画も進行中です。
——それは非常にユニークなアプローチですね。
小田 はい、その通りです。このように、既存のビジネスモデルを活かしながら、オーナー様のニーズに応える形で新しい事業を展開しています。例えば、害虫駆除事業も、フランチャイズオーナー様に提供しています。
——加盟オーナー様にとっても、こうした新たな事業の展開はモチベーションを高める要素になりますね。
小田 まさにその通りです。オーナー様が自ら手を挙げて新たな事業に挑戦することで、彼らのモチベーションも向上し、結果として提供するサービスの質も高まります。このような仕組みが、事業の成長を加速させています。
——素晴らしいシステムですね。
小田 ありがとうございます。特に50代、60代の方々にとって、昔のフランチャイズモデルには失敗事例も多く、ネガティブなイメージを持たれていることが多いです。しかし、私たちはそのイメージを一新し、安定した収益を提供できる新しいビジネスモデルを築いています。
フランチャイズに対する誤解を解き、加盟オーナー様にとって本当に価値のある事業を提供し続けることが、私たちの使命だと考えています。
これまでぶつかってきた課題や変革秘話
—— 社長就任以来、直面した大きな課題や、それをどうやって変えてきたのか、ぜひお聞かせください。
小田 経営者の方々がよく例え話をされますが、いわゆる「1、3、5の壁」というものがあります。売上がそのような節目に達する際に、必ず何かの壁にぶつかるものです。例えば、売上が30億円ぐらいの時は、前年対比で110%以上の成長を続けていました。新規開拓も毎月行っていました。
小田 ただし、評価基準が曖昧で、コミッション制度に頼っていたため、評価のあり方に疑問を持たれ、多くの社員が辞めていきました。また、新しい事業がうまくいかないことも多く、売上のボトルネックは常に存在しました。特に今の規模で感じるのは、方向性の難しさですね。
—— ちなみに、現在の従業員数はどの程度ですか。
小田 約280名です。加えて、約1400名のオーナー様がご加盟いただいています。
—— その1400名のオーナー様に対して、社内で誰か担当がいるのですか?窓口のチームなどがあると思いますが、その人員は何名くらいで対応しているのでしょうか?
小田 品質管理チームというチームがあり、俗に言うスーパーバイジングを行っています。業務や事業のこと、時には家庭問題にまで寄り添いながら対話を深めています。単にお掃除のやり方を伝えるだけでなく、人間関係構築を一番のテーマにしています。全地区で約20名のスーパーバイザーがおり、1400名のオーナ―様を支えています。
ただし、オーナー様も3年を過ぎると、技術や品質面での疑問点が少なくなります。その後は将来のビジョンを聞くなど、地区本部長、いわゆる支店長が役割を分担します。事業を多角化しているメンバーに対しては、未来塾という経営塾を作り、私が毎月勉強会を行っています。
そして、フランチャイズオーナー様に対しても中期経営計画の作成や発表会を行っています。フランチャイズ本部で一番よく指摘されるのが、フランチャイジーとフランチャイザー間の利害関係です。理念共有が難しいと言われていますが、これを超越するのが人間関係構築という対話です。
今後の事業展開や投資領域
—— 今後の事業展開や投資領域についてお聞かせいただけますか。
小田 現在、1,400名以上のオーナー様を対象として新たな事業を考えています。オーナー様の中には、さらに事業を拡大したいと考える方々がいます。そういった方々には、害虫駆除事業を提案しています。清掃事業との親和性も高い事業ですので、こういった事業を行っていただければと思っています。
事務所が必要な方には、事務所を提供しようと考えています。また、現在は模索段階ですが、不動産ファンド化も検討しています。具体的には、土地を仕入れ、建物を建てる。そして、オーナー様に出資してもらい、我々がサブリースで受けるという形です。これにより資金を回収し、年間で安定した収益を生み出すことが可能になります。
—— なるほど。
小田 さらに大きな視野として、日本には現在250万人の在留外国人がいます。昨年1年間で22万5,000人増加しています。特にベトナム人が多く、約60万人が在留しています。彼らは何を夢見て日本に来たのでしょうか。多くの外国人が何らかの労働に従事していると思いますが、日本での成功を夢見て来た人もいるはずです。今後、我々は現地にビルメンテナンススクールや日本語学校を設立し、数ヶ月から数年、日本で働いていただく計画を立てています。これにより、安定したビルメンテナンス事業を展開し、他の企業が成し遂げていないジャパンドリームを実現させたいと考えています。この計画を次の中期経営計画に盛り込む予定です。
—— 素晴らしい取り組みですね。他にはない施策で、実現すれば非常に意義深いものになると思います。
メディアユーザーへ一言
—— 最後に、メディアユーザーへのメッセージをいただけますか。
小田 我々のフランチャイズは、安心・安全なビジネスモデルを提供しており、これまでのフランチャイズとは一線を画す安定性を誇っています。事業として展開することも可能ですし、定年間近で退職を考えている従業員の方々にとっても、新しい挑戦の場としてご紹介いただければ幸いです。
- 氏名
- 小田 吉彦(おだ よしひこ)
- 社名
- 株式会社ダイキチ
- 役職
- 代表取締役社長