ヤスダエンジニアリング株式会社
(画像=ヤスダエンジニアリング株式会社)
安田 京一(やすだ きょういち)――代表取締役社長
1952年11月17日生まれの大阪市出身。1975年、23歳で安田建設を創業し、後にヤスダエンジニアリングへと発展。推進工事分野での技術開発に注力し、特に「ミリングモール工法」の開発では、世界的な賞であるNo-dig Awardを受賞するなど、業界に革新をもたらした。座右の銘は「経営者はバランス感覚が重要である」。趣味はゴルフやスポーツ観戦で、柔道やラグビーの経験もあり。
ヤスダエンジニアリング株式会社は、大阪市浪速区に本社を構える1975年創業の総合建設企業。公共下水道工事を起点に、一般土木や建築など幅広い分野で事業を展開。特に推進工法に強みを持ち、自社開発の「ミリングモール工法」は国際的な評価を受けている。ISO 9001および14001を取得し、品質と環境への配慮を徹底。2025年には創業50周年を迎え、国内外でのインフラ整備に貢献。

目次

  1. これまでの事業変遷
  2. 自社事業の強みやケイパビリティ
  3. 今後の事業展開や投資領域
  4. これまでぶつかってきた課題や変革秘話
  5. メディアユーザーへ一言

これまでの事業変遷

—— 会社の歴史についてお伺いしたいと思います。

ヤスダエンジニアリング株式会社 代表取締役社長・安田 京一氏(以下、社名・氏名略) ヤスダエンジニアリング株式会社は、今年で50周年を迎えます。最初は個人事業主としてスタートしました。法人化したのは平成元年頃で、それまでは約10年間、土木工事を中心に業務を行っていました。特に推進工事という特殊な分野に特化していました。

—— 推進工事というのは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

安田 推進工事とは、地盤を掘削しながら管を埋設する工法です。地盤改良も行っており、これらを二本柱として事業を展開してきました。当初は2次下請けや3次下請けの形態で仕事を受けていましたがそれでは売り上げや利益が上がらないため1次下請けや元請として仕事をするために方針展開いたしました。

—— その後、会社の成長はどのように進んだのでしょうか?

安田 指名業者として工事を受注するようになり、本社を大阪市内に移転しました。指名業者としてのランクを上げるために、実績を重ねてきました。現在では大阪市でAランクを取得しています。

—— そのような実績を重ねる中で、海外進出も果たされたと伺いました。

安田 はい、海外進出のきっかけは国内の工事量が減少してきたことです。平成10年から11年が推進工事のピークで売上も推進工事だけで85億程ありましたが、その後は仕事量が減少しました。そこで、国内だけでなく海外市場も視野に入れることにしました。現在は韓国とベトナムに拠点を持ち、ODAプロジェクトを中心に活動しています。

—— 海外でのプロジェクトはどのようなものですか?

安田 海外では、日本のODAプロジェクトが主な受注先です。ベトナムでは、25キロメートルにも及ぶ推進工事を手がけました。このような大規模なプロジェクトは国内ではなかなかありません。

—— 海外でのプロジェクトが会社の売上に与える影響はどの程度ですか?

安田 大きなプロジェクトがあると、売上に大きく貢献します。法人Bのプロジェクトでは100億円規模の受注を達成しました。これは数年にわたって進行するプロジェクトであり、会社全体の売上の大きな割合を占めています。 ただプロジェクトが無ければ全く売り上げはありませんが。

自社事業の強みやケイパビリティ

—— 貴社の強みについてお伺いします。どんなところが強みでいらっしゃいますか?

安田 弊社は推進工事の専門会社として長年やってきましたので、全国の施工のシェアは常に上位であります。また技術力は日本国内でもトップレベルです。これは世界でもトップレベルと言えるでしょう。

また、弊社は自社で機械の開発と製造も行っています。これを行っている会社は他にはあまりありません。現場の状況に応じて機械を作り、150台ほどの機械を保有しています。これが弊社の強みです。

—— 自社で機械を作るというのは、なかなか思いつかないことだと思いますが、どうしてそのような決断をされたのですか?

安田 コストが大きな問題でした。全国的に機械のレンタル業者もありますが、特定の機械は台数が少なく、価格が高くなります。そこで、利益が出たらすぐに設備投資を行うという方針で、事業に投資することにしました。数現場で使用すれば償却できますし、利益に繋がります。

—— それは社員の方々にとってもやりがいに繋がりますね。

安田 そうですね。ただ、トンネルを掘るのは機械だけではなく、人間の技術力も必要です。施工現場での人材育成も非常に重要です。

—— ホームページで拝見したミリングモール工法についてお伺いしたいのですが、これはどのようなきっかけで開発されたのでしょうか?

安田 ミリングモール工法は、地中の障害物をくり抜いてトンネルを掘り続けることができる技術です。これは弊社のオンリーワン技術で、特許も取得しています。地中を掘る箇所が少なくなり、障害物を避けるのが難しくなったため、開発に至りました。この技術は、弊社は稼ぎ頭になっています。

—— 開発のきっかけについてもう少し詳しく教えていただけますか?

安田 障害物に当たって工事が止まることが全国的に問題になっていました。そこで、障害物をくり抜く技術を開発できるのではないかと考えました。実際に弊社でもそういったトラブルがありましたので、これを解決するために開発を進めました。

—— それは非常に興味深いですね。公共事業では納工期も重要ですから、こうした技術は非常に有用ですね。

安田 納工期が延びるとコストがかかりますし、上から掘れない場所もあります。以前、土地を買って工事を進めたこともありました。大手ゼネコンでもできないことを弊社は実現しています。

今後の事業展開や投資領域

——ヤスダエンジニアリング株式会社は50周年を迎えられましたが、今後の事業展開についてお伺いしたいと思います。

安田 現場の稼働量は全盛期よりも減少していますが、特に都市部では東京で多くの案件があります。

—— 都市部での需要が高まっているとのことですが、具体的にはどのような対応を考えていらっしゃいますか。

安田 都市部では老朽化したインフラの修繕が急務です。国交省が上下水道を管轄するようになったこともあり、今後は地方自治体と連携しつつ、国の方針に基づいて整備を進めていく必要があります。ミリングモールやミリングシールドといった技術開発を進めることで、市場の拡大を見込んでいます。

—— 技術開発が進む中で、海外展開の可能性についても考えていらっしゃいますか。

安田 海外展開については慎重に考えています。弊社のような技術を持った会社が少なく、進出するライバル企業がいないため、計画されている案件に関して条件が整えば対応していこうと考えております。

海外の市場は、日本とは常識が異なる部分も多いです。特に発展途上国では、建設業の技術に対する評価が低く、施工会社が低く見られることが多いですが日本の技術力を評価してもらうために日々活動をしております。

—— 発展途上国での技術評価についても課題があるのですね。ベトナムでの人材育成についてもお聞きしたいのですが、どのように進めていらっしゃいますか。

安田 ベトナムでは日本の技術を持った施工部隊を現地で育成しています。これにより日本国内の現場で活躍をしています。また彼らが世界に羽ばたいていく可能性もあると考えています。

これまでぶつかってきた課題や変革秘話

—— これまでぶつかってきた課題や変革秘話についてお伺いしたいのですが、特に経営上で苦労された点はありますか?

安田 海外で一番苦労したのは、お金の回収ですね。特にベトナムでのプロジェクトでは、資金の流れが複雑で、ベトナムの財務省からホーチミン市に資金が渡るまでに多くの困難がありました。

—— 支払いの遅延も大きな問題ですね。

安田 はい、過去には工事中に出来高に応じた請求書を出しても、何ヶ月も支払いが滞ることがありました。

——事業の規模が大きいと、支払いの遅延は致命的ですね。

安田 そうです。100億円規模のODAプロジェクトでは、出来高がすぐに10億、20億と膨らみますから、支払いが滞ると会社が潰れてしまいます。

メディアユーザーへ一言

——では最後に、貴社のメディアユーザーに向けて一言お願いします。

安田 私たちの会社は、この10年弱でかなりの設備投資を行いました。他社が持っていないミリングモールの機械を導入し、推進工事においても15種類ほどの機械を揃えています。これにより、様々な工事に対応できるようになりました。

ーーそれは素晴らしいですね。設備投資によって成長を続けているということですね。

安田 はい、その通りです。現在、新しい工場も建設中で、これも将来を見据えた設備投資の一環です。

氏名
安田 京一(やすだ きょういち)
社名
ヤスダエンジニアリング株式会社
役職
代表取締役社長

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