期限前償還される劣後債
さらに、劣後債といわれる債券も最近になって大量に期限前償還されている。劣後債とは、発行体が倒産した場合の残余資産の分配において、優先債務の全てが弁済されるまで、その債券に対する分配が行われない社債のことだ。その見返りとして、通常の債券よりも高い利回りが設定されている。
劣後債の発行体の多くは金融機関だ。劣後債により調達した資金は負債に分類されるが、国際的なルールであるBIS規制において、自己資本への算入が一定限度まで認められるという特徴がある。つまり、自己資本を増強したい金融機関にとっては有効な自己資本増強手段というわけだ。会計上、債券の残存期間が5年を切ると、自己資本に算入可能な額が年率20%で減価していく。10年満期の劣後債であっても5年で繰上償還する方が、金融機関にとっては会計上有利となる。そこで、金融機関が発行する劣後債の多くは期限前償還条項が付されている。
こうした期限前償還条項が付された劣後債が最近になって次々と繰上償還されている。こうした劣後債を保有していた投資家は、改めて運用に頭を痛めることになる。相応しい投資先がなかなか見つからないのだ。
溢れたマネーはどこへ向かうのか
このように、マーケットには適切な運用先がなく、大量のマネーが溢れている。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は株式や外債の運用比率を高めている。これにならい、これまで保守的な運用を行ってきた大口の投資家が、よりリスクの高い金融商品に食指を伸ばす可能性は否定できない。
かつてデリバティブ取引で多くの学校法人が多額の損失を出した。多額の資金を仕組み債に投資し、損失が発生した挙げ句、証券会社に対し訴訟を起こした自治体もあった。歴史が繰り返されるならば、バブルとともに運用者のモラルハザードが起こっても何ら不思議ではない。そして、溢れたマネーによりもたらされたバブルが崩壊することも。
「異次元の金融緩和」により溢れ出したマネーはマーケットに歪みをもたらしている。巨額の資金が新たな投資対象を求め、さまよっている。そのマネーを逃すまいと様々な金融商品が日々開発されている。運用者に高度な金融知識とモラルが無ければ、日本経済はいつか来た道を再び歩むこととなりかねない。
(ZUU online)
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