ジャパンディスプレイ②


●なぜ前倒し上場なのか?


当初、ジャンディスプレイの上場予定は2015年であり、今回の上場申請はそれをかなり前倒しにしたものでした。この加速の要因となったのは「市場変化」と「ライバルの失速」だと言えそうです。

まず、中小型液晶市場の勢力図が変化しつつあることです。かつて市場はアップルとサムスンの2強の牙城となっていました。これを切り崩しにかかったのがジャパンディスプレイの大塚社長です。現在、スマートフォンメーカーは旗艦モデルの差別化を進めるべく、特に製品の顔であるディスプレイをどう特徴付けるかにこだわりをみせていました。ジャパンディスプレイはこのニーズをうまく捉えました。すなわち3社の合弁という体制の利点である、画面コントラストに強い日立、高精細パネルに強い東芝、タッチパネルに強みをもつソニー、という各社の強みを生かし、メーカー側の多彩なニーズに対応して受注を拡大したのです。現在、中国の華為技術やZTEなどのメーカーも2強ではなく、まずジャパンディスプレイに発注するようになっており、市場は2強の支配が崩れつつあると言えそうです。14年3月期にはジャパンディスプレイは売上高の約15%が中国向けになると予想しており、利益成長が期待できそうです。

また、国内ライバルであるシャープの液晶生産が思うように進んでいないことも追い風になったと言えます。高い技術力を持つシャープですが、それゆえに価格が他社よりも2倍近い値段であることや安定生産が難しいことが災いして、なかなかスマートフォン向けの受注を取れずにいるようです。こうした間に急ピッチで生産体制を整備したジャパンディスプレイが大きくその業績を伸ばす結果になったようです。高い技術力へのこだわりを見せるシャープに対し、需要に応じて柔軟に価格と性能を変えられるジャパンディスプレイがうまく市場の波に乗ったと言えます。




●ジャパンディスプレイ上場後の株式成長性


では、こうした成長を見せるジャパンディスプレイですが、上場後の株価に対するポジティブ要因、ネガティブ要因にはどのようなものが考えられるでしょうか?


ポジティブ要因としては、「意思決定体制の簡略化」が挙げられそうです。

このような3社合弁による新会社の設立は過去にも例があります。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、NEC、日立、三菱電機の3社の事業統合により設立されたエルピーダメモリです。しかしエルピーダメモリは赤字を繰り返し、結果として2012年2月に経営破綻しました。この原因は統合後の母体企業との関係にあります。支配権をめぐっていわゆる「たすき掛け」人事が続き、拠点削減等の意思決定において時間がかかっていました。この反省点を踏まえ、ジャパンディスプレイでは出資元の3社と一切しがらみのない大塚氏を社長に据えた他、社内取締役も2人に限るなど、簡素な意思決定の仕組みを整えています。現にこの仕組みにより同社はパナソニックから買収した茂原工場を半年間前倒しで稼働させるなどの迅速な経営を可能にしており、今後も急速に変化していく市場の中で的確に舵を切っていくことが期待されます。


一方でネガティブ要因としては、「スマホ市場の成長鈍化」と「中国勢・韓国勢の巻き返し」が懸念されそうです。

まず、現在のスマートフォンはその普及率とも相まって半ば成熟の様を見せており、今後の生産台数が減少していくことでジャパンディスプレイの受注件数にも影響が生じる可能性があります。実際にグーグルやアマゾンがタブレット端末用液晶の発注を切り下げており、主力の液晶生産拠点である茂原工場(千葉県茂原市)の製造が10月以降低迷しています。主力工場の稼働が計画より落ち込めば今期業績に直結し、資金調達額にも影響することになるため、早期の株式上場に踏み切った間接的要因でもあると言えそうです。なお、年度末にかけて他メーカーからの追加受注を目指し、稼働率の引き上げを図っているそうです。会社予想では14年3月期の業績を売上高7000~8000億円、営業利益率5%前後を目指していますが、今後の業界動向次第でどこまでその数字に近づくことが出来るのかが今後注目すべきポイントだと言えます。

また、アップルとサムスンの2強が減速しているのは前述の通りですが、その一方で中国など新興勢力が勢力を増してきています。ジャパンディスプレイは現時点でこそシェアは世界第2位であり競争相手も多くはありませんが、今後は中国や韓国、台湾などのメーカーも設備の導入を図っていくことが予想される以上、競争は必然的に激化していくと予想されます。有機ELパネルの分野ではまだまだ韓国が強みを発揮しており、日本メーカーも積極的に研究していく必要がありそうです。いずれにせよ、技術力の面でどのようにアドバンテージを保っていくかが今後の生き残りのカギとなりそうです。今後はスマホの次に普及が見込まれる、次世代ウエアラブル端末向けの液晶も既にサンプル出荷が始まっており、新たな市場として可能性がありそうです。今日までスマホで培ってきた技術力を次のステージでも生かせるかどうかが、ジャパンディスプレイにとっての腕の見せどころとなりそうです。

いかがでしたでしょうか?官民ファンドである産業革新機構の出資による初の上場会社であり、「日の丸液晶会社」とも称されるジャパンディスプレイ。投資を考える方はぜひ一度チェックしてみるべき会社だと言えそうです。


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【参考】
初値はいかに?ジャパンディスプレイのIPOに投資するなら株価は長い目で見るべき?
上場間近のジャパンディスプレイの成長性と初値を分析する~本当に市場において戦略面で勝てるのか?~?

BY ZUU online 編集部 H.O